@医局-緋山side.-
医局に戻ると藤川がまったく緋山は困ったやつだなぁーと、 もったいぶって近づいてくる。
緋山先生
めんどくさそうに緋山が返事する。
藤川先生
藤川が、そう言ってネームプレートを手渡した。
緋山先生
手のひらに乗せたネームプレートを見て、ゾワリと鳥肌がたった。 さっき、ネームプレートを していなかったのに、何であの男は私の名前を知っていたの? 脳外科との接点なんて なかったのに。 無口な藍沢が私のことなんて 話すはずない。 そうよ、脳みそにしか興味が 無いんだから。 人事異動の掲示だって 名前だけだから、名前と顔が 一致するわけないし。 だったら何で? こわっ!ストーカ? 緋山が寒気に腕をさする。
白石先生
『寒いの?空調上げようか?』と、白石が気遣わしげに言う。
緋山先生
曖昧に笑って、緋山は頭からその事を追い出した。 あー気分悪い。 気分転換に藤川に くだらない話でもしよう。 さっき仕入れた不思議ワードでも聞いてみようか。
緋山先生
藤川先生
緋山先生
『お姫様も手に入れられないくせに、何が王子よ。』と、 ゲラゲラと緋山が笑う。 『だよなー、 王子って年齢でもないダロー』と、一緒に藤川も笑っていたが、入り口を見て、ヤバイと顔を強ばらせた。
藍沢先生
地を這うような低い声に、 緋山の背筋がゾクリと震えた。 藍沢だ。ヤバイ。聞かれた。 さて、どうしよう。 どこに逃げたら安全か。 よし、ICUに行こう。 瞬時に決めると、藍沢の声など 聞こえなかったかのように 聴診器を首にかけ、 『ICU行ってくるから』と、 藤川に言い部屋を出ようとした。 スルリと藍沢とドアの隙間をぬって脱出することは簡単。 藍沢の冷たい視線は全部藤川が 受け止めればいい。 が、藍沢をかわしたところで、その後ろに立つデカイ男にぶつかった。
緋山先生
別に痛くはなかったけれど、 思わず口から出た。
新海先生
よろけたのを抱き止められる。
藍沢先生
藍沢の冷淡な声が右上から 聞こえて、緋山が睨み付けると、 フンとバカにした笑いが 降ってきた。
新海先生
男は落ちた聴診器を拾い、 緋山に手渡し申し訳なさそうな 顔をした。
藍沢先生
お前は許容範囲が広いんだな。と、藍沢が呆れたような顔をして、 新海が困ったようなあいまいな 笑みを浮かべた。
新海先生
そう穏やかに言う男の顔を見て、 緋山は後ずさった。 さっきの食堂男っ! 医局まで来たっ!こわっ! 緋山は素早く離れると 藍沢を盾にし、 新海と呼ばれた男を、あんた誰よ! と、警戒心に満ちた目で見た。 新海はそんな緋山の行動に不思議 そうに首を傾げる。 藍沢も背後に隠れた緋山に めんどくさそうに視線を送った。 まるでネコだな。 『シャー』と、威嚇の声が 聞こえてきそうだ。 手を差し出したら舌をならしたら、恐る恐る近付いてくるだろうか? そう想像して新海はクスリと笑った
藍沢先生
不機嫌な藍沢の声に緋山が 目を瞬かせた。 はっとして見ると、自分の手が 藍沢のスクラブを握りしめていて、しわくちゃになっていた。
緋山先生
慌てて手を離すと、『はぁ』と、 藍沢が溜め息をつく。 藍沢が座れと、ソファーを 顎で指した。 なによ、あんた脳外の人間でしょ。勝手に知ってるみたいな顔して!と、思いはしたが、先程の失態を 考えると何も言えず、 緋山はポスンとソファーに 腰を下ろした。
新海先生
そう言って緋山の隣に座ると 人の良さそうな笑みを浮かべた。 脳外の新海か。 さっきの話題の白王子。 爽やかに笑ってるけど、 ずいぶんと距離が近い。 そっと緋山は横にずれた。 『あらら』と、警戒されてるなと 新海は苦笑いする。
藍沢先生
その中、藍沢が淡々と 状況を説明する。
新海先生
新海がそのあとを継いで 話を続けた。 なるほど。それで名前を 知っていたのか。 良かった変質者じゃなくて。 と、緋山は安堵する。 なら協力してやるわよ。
緋山先生
新海がカルテを開くと 細かく説明を始め、緋山は黙って カルテを見つめた。
緋山先生
新海先生
緋山先生
緋山が立ち上がる。
緋山先生
『あんた主治医なんだから 案内しなさいよ。』と、言いながらさっさと歩き始める。 話の早さが気持ちいい。 さっぱりしてる。 こんな女もいるんだな。 と、新海は新鮮な気持ちになった。
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