テラーノベル
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踊っている時だけは 全てがちゃんと意味を持ってた。 誰かの背中を見上げるばかりだった。 走っても走っても、同じ場所には立てない気がした。 おれにとっては、ダンスは最初から「得意」ではなかった。 バトルに出るタイプでもなかった。 人前で踊るのはちょっと怖かった。 でも不思議と、踊ることが嫌いになったことは無い。 練習生になってはじめて悔しいと思った。 すごい人ばかり。 一緒にレッスンを受ける度、どんどん差が開いてく気がして。 家に帰る途中、泣いたことだってある。 でもそんな日々の中で、 「誰よりも真っ直ぐに努力できる人」って言われたとき、 俺ははじめて少しだけ自信をもてた。 努力って思ってるよりも地味。 誰も見てないとこでステップ踏んで。 何度も何度も自分の姿を見返して。 「かっこ悪い」そう思って落ち込んでまた立ち上がる。 だけど俺は気づいてた。 誰よりも頑張れる。そう自分に言い聞かせていた。 アストレインのメンバーになった時も。 「いぇじゅんのダンスが必要だよ」って言葉がどれだけ救いだったか。 ひなたやそあの踊りは見た瞬間に凄いと思わせる力がある。 でも俺のダンスは違う。 丁寧で繊細で、見れば見るほど心が動く。 そんなダンスをめざした。 初めてのステージ。 照明が落ちてイントロが流れる。 頭が真っ白になる。 気づけば曲が終わり、 目の前には歓声が広がる。 その時初めて、心から思ったことがある。
YEJUN
誰かより目立つ必要は無い。 でも自分にしかできない表現を磨き続けたい。 おれは今日も、ステージ上で踊ってる。 照明の熱と、汗の粒と、拍手の余韻の中で。
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