神様は不公平だ。
必死に努力して生きてきた人を
一瞬にして、
どん底につき落とす。
翼は亡くなった。
桜良
嘘でしょ。翼、昨日まであんな元気だったのに………

桜良
ごめんね。助けてあげられなくて………

もう二度と、あの声を、
翼の声を
聞くことは出来ない。
翼の母
あなたが、桜良ちゃん?

桜良
えっ、はい。

翼の母
翼の母です。

翼の母
翼がお世話になりました。

翼の母
本当にありがとう。

桜良
こちらこそありがとうございました。

翼の母
翼からあなたのことは聞いています。

桜良
はい。

翼の母
ちょっとこっちに来てくれるかしら。

桜良
はい。

翼の母
これ、あなたへ翼が生前遺したもの。

翼のお母さんから
渡されたものは
一通の手紙だった。
桜良
これは………

翼の母
翼がもしも自分が死んだ時のために遺していたの。

翼の母
さっき病院を整理していたら出てきて

翼の母
どうしてもあなたに渡したかったの

桜良
ありがとうございます。

翼
桜良へ
もう聞いているかもしれないけど、これは俺の遺書です。信じたくなかったけど、万が一のため、この世に後悔を残さないため、
この遺書をかきます。これは定期的にかいているので
最近あったこととかがかかれているかな。長くなるけど、読んでね。
桜良、桜良と出会ったのは、桜が綺麗な春でした。
別にダジャレとかじゃないからね。
桜良が自分と同じ病気だと知った時、とても驚いた。
だって桜良はいつも明るくて前向きに生きてるように見えたから。心から尊敬してるよ。
だんだん、仲良くなって1年たって告白したら付き合えることになって。まるで、
何もかもが上手くいく、ドラマのようだった。嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
もし、今桜良がこの手紙を読んでいるとするなら、桜良と出会って1年くらいの時かな。短い間、ありがとう。
本当に心から感謝してる。
言葉にできないくらい、桜良が大好きだよ。
だから俺の分まで幸せになって生きてください。
ありがとう。
成宮翼

桜良
つばさ………

私はいつの間にか泣いていた。
目の前が見えなくなるくらいに
涙が溢れていた。
桜良
桜………

私はその時決めた。
翼の分まで後悔のないよう
生きよう。
私の中で翼はずっと生き続ける。
この先病気が悪化して
もっと辛いことがあるかもしれない。
でも、病気になってから気づくことも
たくさんある。
「前向きに生きよう」
桜良
久しぶり。

今年も桜の季節がやってきた。
あれから、8年がたった。
翼が去った悲しい季節?
いや、違う。
翼と出会った
最高の季節だ。
私はあの後、猛勉強して、
医者の道へと歩んだ。
今は薬の研究をしている。
翼のような人を救うために。
これからも私は歩み続ける。
桜良
翼……

桜良
ありがとう。
