華子
華子
彼の手元を指差すと、 何か観念したように肩をすくめ、 男は小瓶をカラカラと振った。
草薙 伯玖
しかし参ったな…
草薙 伯玖
怪我してるし
草薙 伯玖
戻るしかないか。
その時、車内にブザーが鳴り響いて 電車の扉が一斉に開く。
草薙 伯玖
華子
力強く腕を引かれ、 私は右足を庇いながら立ち上がった。
そのまま彼の肩を借りる形で 慎重に電車を降りる。
ガラス戸に囲まれたホームは 人気が無く、やはり昼間の明るさのまま 不思議なほど静寂に包まれていた。
華子
夜だったのに……。
草薙 伯玖
草薙 伯玖
良かったわ。
特に驚く様子も見せず、 早速どこかへ電話をかけ始めた男に 私は思わず声を上げる
華子
華子
草薙 伯玖
草薙 伯玖
少し待ってな。
草薙 伯玖
ちょっと緊急事態で…
草薙 伯玖
話じゃ…
草薙 伯玖
草薙 伯玖
出ちまって。
草薙 伯玖
効かないんですよね。
草薙 伯玖
……えぇ、女性です。
ええ、
草薙 伯玖
ちょいとお待ちを…
草薙 伯玖
華子
草薙 伯玖
必要なんだ。
草薙 伯玖
華子
くれるのかな。)
華子
彼は返事の代わりに 指で丸を作ってにこりと微笑む。
草薙 伯玖
…はいはい、……はい
分かりました。
草薙 伯玖
ご協力ありがとね。
草薙 伯玖
言います。
電話が終わり、彼はこちらへ 向き直ると 私に改めて握手を求めた。
華子
草薙 伯玖
今から一緒に来てもらわなくちゃならないんだ。
華子
でしょうか〜…
草薙 伯玖
行けねぇのよ。
華子
噛み合わないやりとりに自分でも 顔が引きつってるのが分かる。
そんな私の反応に 男は首裏を掻きながら ばつが悪そうに続ける。
草薙 伯玖
そりゃ驚くのも
当たり前だ。
草薙 伯玖
心苦しいんだが……
草薙 伯玖
全て分かる。
華子
草薙 伯玖
だ。
華子
日本の私立校の頂点とも名高い その学園は 私でさえ知っている 謎多き名門校だ。
東京・お台場の人工島に校舎を構え、 関係者以外の立ち入りは一切禁止。
入試方法、合格者数は全て非公開。 その倍率は数万倍とも噂されている。
日本のみならず、世界で活躍する エリートを数多く輩出していることでも 有名な、
私立ダークウィックアカデミー……
華子
すごい学園にどうして
私が…?
草薙 伯玖
意味わからんよな。
草薙 伯玖
彼は胸ポケットから黒いカードを 取り出し、手のひらに置いた。
すると、カードの表面がちりちりと 燃えだし、金色の文字が焼き付けられる ように現れ、最後に彼の顔が 浮かび上がる。
華子
3年……?
草薙 伯玖
草薙 伯玖
学生なのよ。
華子
さっきの銃持った物騒な
人も……?
草薙 伯玖
…まぁ、そういう事だ。
草薙 伯玖
酷くなる前に
さっさと行きますかね。
背中に添えられた大きな手が、 心做しか私を急かしているように感じた