テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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祭りの夜

第1話 - 祭りの夜

2019年03月21日

#ホラー

#夏祭り

#友情

#お彼岸

#ほっこり

#彼岸花

ゆず

奏

美咲遅くない？

さゆり

10分遅刻ー

奏

ほんっとあの遅刻魔め

さゆり

今日が祭りの日だって忘れてるよね絶対

奏

ほんとだよ

美咲

2人ともごめん！

美咲

遅れたー！

さゆり

10分私たちの時間を奪ったことに関する言い訳を

さゆり

10文字以内でどうぞ

美咲

短すぎ

美咲

ほんとごめんねー

美咲

着物の着付けに時間がかかったの

奏

わ、ほんとだ綺麗な着物

さゆり

この柄の赤い花なに？

美咲

彼岸花っていうの！

美咲

綺麗だよね？

奏

めっちゃ綺麗

さゆり

そっか、今日お彼岸だから

美咲

そそ！

美咲

お母さんが買ってくれたんだ

さゆり

良かったね

美咲

うん！

奏

それじゃ、行こー

奏

もうお祭り始まってるよ

美咲

はーい

さゆり

はい

祭りに向かって歩き出す3人

美咲

あーあ…

奏

なに、開始早々そのため息は

美咲

ほんとだったら今日柚葉もいたのにねー

美咲

私たち4人で仲良かったのに

美咲

転校しちゃったなんて今でも信じられないよ

奏

もう1ヶ月も経ったよね…

さゆり

…柚葉…

奏

さゆり…悲しいよね

美咲

ほんと！

美咲

会いたかったよねー

奏

…え？

さゆり

美咲知らないの？

美咲

え？なにを？

奏

柚葉は…

さゆり

奏！

さゆり

知らないならいんじゃない？

さゆり

知らぬが仏だと思う

美咲

え、なにが？

奏

そうだね

奏

美咲柚葉と仲良かったしね

美咲

え、だからなに？

さゆり

なんでもないない！

さゆり

ほら早く行こ

奏

おいてくよー

美咲

あ、待って！

駆け出す3人

ガヤガヤ

美咲

わ！見て！

美咲

りんご飴大きい！

さゆり

ほんとだ！

奏

やばい！

奏

2人ともあれ見て

美咲

え？

奏

金魚すくい！

さゆり

やりたい！

奏

いこいこ！

美咲

え、待って

美咲

りんご飴！

奏

うちら先金魚すくいやるから

奏

買い終わったらこっちきてー

美咲

えっ、ちょ

さゆり

早く行こいこ！

奏

うん！

美咲

え、ええ…！

美咲

置いてかないでよー！

りんご飴屋のおじさん

お嬢ちゃん？

美咲

わっ！

りんご飴屋のおじさん

りんご飴、できたよ

美咲

あ、ありがとうございます

りんご飴屋のおじさん

500円

美咲

はい

りんご飴屋のおじさん

はい、まいどありー

美咲

はい…。

美咲

(金魚すくいのとこ行くか…)

美咲

(にしても結局置いてくなんてひどい…)

美咲

(でもりんご飴は美味しい…)

美咲

(…あれ)

美咲は立ち止まる

スーパーボールすくいの屋台の横に路地があり

その路地の向こうに明るいオレンジの光が見えた

美咲

(…？)

美咲

(あっちでもお祭りやってんのかな？)

美咲はその路地に入っていく

オレンジの光が強くなる

和太鼓と尺八の音色が聴こえてくる

美咲

(わ…綺麗な音楽…)

美咲

(奏とさゆりには置いて行かれちゃったんだし)

美咲

(ちょっとぐらい遅れてもいいよね…？)

路地は開け大きな通りに出る

美咲

(わあ…！)

そこはさっきまでいたところより大きな祭り会場だった

道はオレンジに光る行灯と提灯で照らされ

和太鼓と尺八の音色が響き

祭りに参加している人達は皆

浴衣を着て彼岸花を手に持っていた

お面をつけている人もいる

美咲

(わ…こっちのが広いし明るい！)

美咲

(それに本格的！素敵！)

美咲

(わあ…綿あめにりんご飴、お面屋…)

美咲

屋台側の人みんなお面つけてるのはなんでかな？)

美咲は夢中で屋台を覗き込んでいく

遠くにりんご飴の看板を見つけ

走り出そうとした時

ガンッ

美咲

きゃっ！

柚葉

わぁっ！

柚葉

すみません！

美咲

いえ…

美咲

前を見ていなかった私が悪いので…

柚葉

…え

柚葉

…美咲？

美咲

…え？

美咲

柚葉！？

柚葉

なんで、ここに…

ぶつかった女の子は

一ヶ月前に転校してしまった柚葉だった

紫色の浴衣を着て彼岸花を髪につけている

美咲

柚葉！！久しぶり！

美咲

そっか、祭りだからこっちに帰ってきたんだね！

美咲

会いたかったよー

美咲

連絡してくれればよかったのに！

柚葉

あ、うん…

柚葉

てか美咲

柚葉

なんでここに居るの？

美咲

え？

柚葉

こっちの祭り会場…

美咲

ああ、

美咲

あそこのスーパーボールのとこの路地！

美咲

なんか明るかったから気になって来ちゃった

柚葉

…なるほど

柚葉

彼岸花の着物だからか

美咲

そう！これ綺麗でしょ？

美咲

せっかくだから一緒にお祭り回ろうよ！

柚葉

あー…

柚葉

いいよ

美咲

やった！

美咲は柚葉と歩き出す

柚葉

学校はどう？

柚葉

奏とさゆりたちと仲良くやってる？

美咲

うん！

美咲

でもさっきはりんご飴買おって言ったのに

美咲

金魚すくいがしたいからって

美咲

置いていかれちゃった

柚葉

あらま

美咲

まあでも普段は楽しいよ！

美咲

それに今日は来てよかった

美咲

柚葉にも会えたんだし！

柚葉

ああ…まあ

女の人

柚葉ちゃん！

美咲

？

柚葉

あっ…

女の人

柚葉ちゃん、みんな探してたわよ

女の人

ちょっとだけ来れる？

柚葉

あー…

チラッ

美咲

大丈夫だよ！

美咲

行ってらっしゃい

柚葉

うん…ごめん美咲

柚葉

すぐ戻るから

美咲

大丈夫！

美咲

(…)

美咲

(なんか今日の柚葉よそよそしい気がする…)

美咲

(さっきだってなんで居るの？なんて聞かれたし)

美咲

(1ヶ月ぶりに友達と再会したら)

美咲

(普通喜ぶよね…？)

りんご飴屋のおじさん

お嬢ちゃん！

りんご飴屋のおじさん

りんご飴1本どうだい？

りんご飴屋のおじさん

300円だよ！

美咲

(さっきも食べたけど…)

美咲

(安いしいっか)

美咲

はい、いただきます

りんご飴屋のおじさん

はいよ

りんご飴屋のおじさん

毎度あり

美咲

ありがとうございます！

美咲

(わ…美味しそう)

美咲

(いただきま)

柚葉

美咲！

美咲

わっ！柚葉！

美咲

おかえり早かったねー

柚葉

だめ！

柚葉

それ食べちゃダメ！

柚葉は美咲の手からりんご飴を奪い取り

一瞬で口にほおばった

美咲

…なっ

柚葉

(もぐもぐ)

美咲

な…何すんの柚葉！

美咲

人のもの勝手にとって食べるなんて

美咲

おかしいよ！最低！

柚葉

ごめん…美咲

柚葉

お金は払うから

美咲

そういう問題じゃないっ！

柚葉

…

柚葉

私は、美咲の友達だから

美咲

人のもの勝手に食べて何が友達よ！

美咲

思ってなんか…ないくせに！

柚葉

美咲…ごめん

美咲

……

その時

不意に和楽器の演奏が止んだ

お祭りに来ていた客達はゾロゾロと同じ方向に歩き出した

提灯の光も弱まっていく

美咲

…？なに…？

柚葉

まずい…もうすぐ日付が変わる

柚葉

美咲！

美咲

な、なに…？

柚葉

今日のことは、忘れて

柚葉

あなたは直ぐに路地を通って帰らなきゃ行けない

美咲

え…なんで！

柚葉

美咲…さっきの件は本当にごめんね

柚葉

でもしなければいけない理由があったの

柚葉

私、今日は美咲に会えて本当に嬉しかった

美咲

柚葉…

柚葉

もう二度とあなたとは会えないと思ってたから

柚葉

驚いたけど嬉しかったの

美咲

うん…私もだよ

柚葉

さあ…早く帰って

柚葉

日付が変わらないうちに

美咲

…うん

さっき来た路地にもどる美咲と柚葉

柚葉

それじゃ…元気でね、美咲

柚葉

これ…

柚葉は髪につけていた彼岸花を取ると

美咲に手渡した

柚葉

さっきのりんご飴のお詫びと

柚葉

私たちが会うことが出来た印

美咲

柚葉…ありがとう

柚葉

さ、早く行って

柚葉

さようなら、美咲

美咲

うん…バイバイ、柚葉

美咲は元来た道を引き返す

オレンジの光は弱まっていき、

始めいた祭り会場に戻る

路地をぬけ、ふと振り返ると

今まで歩いてきたはずの路地は消えていた

美咲

え…

美咲

どうして

奏

美咲！

さゆり

美咲！！

美咲

奏、さゆり！

奏

モーどこいってたの！探したよ！

さゆり

置いていっちゃってごめん！

さゆり

わたしたちすごく心配したの

美咲

ふたりとも…ごめん

美咲

でもね、いいことあったよ

さゆり

え？

奏

いいこと？

美咲

うん

美咲

向こうの祭り会場で柚葉にあったの

美咲

元気そうだった

さゆり

…

奏

…美咲…

美咲

？どうしたの？

さゆり

言いずらいんだけどさ…

さゆり

嘘だよね…？

美咲

え？なんで！？

奏

だって…

奏

柚葉は転校してすぐ、死んだんだよ

奏

交通事故で

さゆり

美咲は知らなかったみたいだけど…

美咲

…え

美咲

だってさっき…確かに会ったのに…！

奏

…ひょっとしたら

奏

今日が彼岸だからかもしれない

美咲

え？

奏

美咲の話を完全に信じたわけじゃないけど

奏

本当だとしたら

美咲

どういうこと？

奏

この世を此岸、あの世は彼岸と呼ぶことがあるの

奏

そして今日、お彼岸の日は

奏

あの世にいる人達が此岸に帰ってくる日なの

奏

だからひょっとしたら…

美咲

…そっか

美咲

私、柚葉になんでここに居るのって聞かれたんだ

美咲

それで、私の着物を見て

美咲

彼岸花だからかって言ったの

奏

…うん

奏

多分そういう事だね

奏

美咲、向こうのお祭り会場で何も食べなかったんだね

美咲

え？

さゆり

あ、それ知ってる

さゆり

あの世の食べ物を口にすると

さゆり

もう二度とこの世には戻れない

美咲

あ…

美咲

そうだったんだ…

美咲

柚葉…

美咲

私…柚葉に会えてよかったよ

美咲

…うっ、ひくっ…

奏

…美咲

さゆり

美咲…

美咲の涙が

手に持った彼岸花の花弁に落ちて

雫となりはじけた

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ゆず

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