あれからまた、何ヶ月かがたった。
美彩
おはよ〜
優
おはよう
もう随分なれた。
それでも私はお母さんを迎えに行かないといけない。
言わないと
美彩
ねえ、優
優
なにー?
美彩
お願いがあるんだけど、いい?
優
どうした?
美彩
あのね、私にはお母さんがいるの
美彩
それでね、私の家庭は結構厳しくて、お母さんは家を出たの。
美彩
別に私のことが嫌いだった訳じゃない。
美彩
私、お母さんを迎えに行きたい。
優
そっか、そんなに厳しかったんだ。
優
いいよ。
優
その代わり、俺も行く。
美彩
えっ…?
優
俺決めたの。
優
美彩を守る。
優
年齢差なんて関係ない。
美彩
…ありがと。
優
いいえ。それで、いつ行くの?
美彩
出来れば早めがいい。
美彩
いいかな?
優
いいよ。
優
じゃあ明日、朝すぐに行こう。
美彩
うん。
優
美彩、行くよ?
美彩
うん。
優
そういえば、居場所はわかるの?
美彩
完全には分からないけど、なんとなくなら。
優
そっか。どこ?
美彩
お母さんの出身地、福岡。
優
福岡か…
優
ここ熊本だし、そこまで時間はかからないね。
美彩
うん。
美彩
近所のおばちゃんたちがいるはず。
優
分かった。
福岡
美彩
ついた…
優
お母さんの実家とか、分かる?
美彩
わかるけど、もうない。おばあちゃんもおじいちゃんも、もういないから…
優
あ、ごめんね?大丈夫?
美彩
ううん、いい。大丈夫だから。
優
ならいいけど…
美彩
家はもうないけど、おばちゃんたちの家ならわかる。
美彩
今もあればだけど…
優
よし、とりあえず、行ってみよう。
美彩
うん。
美彩
あった。
優
ここ?
美彩
うん。
ピーンポーン
おばちゃん
はーい!!
おばちゃん
あら美彩ちゃん!!
美彩
こんにちは。お久しぶりです。
おばちゃん
お久しぶり!!
おばちゃん
あら?その方は?
美彩
あ、色々あって、今一緒に暮らしてる優です。
美彩
名前の通り、すごく優しいんです。
優
こんにちは。初めまして。
おばちゃん
初めまして〜
美彩
あの。私のお母さん来ませんでしたか…?
おばちゃん
…お母さんね、先週、亡くなったの…
美彩
えっ…
優
…
おばちゃん
ごめんね。ちょっと前まではすごく元気だったのよ。
おばちゃん
それでね、お母さん、亡くなる前に『美彩は私の自慢の娘』って言ってたよ。
美彩
…謝らないでください…
美彩
ありがとうございます。
美彩
あの、その…
美彩
お母さんのお墓とか、知ってますか?
おばちゃん
ええ、知ってるわよ。
おばちゃん
連れて行ってあげようか?
美彩
いいえ、場所だけ教えて貰えれば嬉しいです。
おばちゃん
そう?
おばちゃん
じゃあこれ。メモしてあるからね。
おばちゃん
気をつけていってらっしゃい。
美彩
はい、ありがとうございます。
優
ありがとうございます。
おばちゃん
じゃあね〜
おばちゃん
優くん。
優
はい?
おばちゃん
美彩ちゃんを、よろしくね。
優
もちろんです。
おばちゃん
ありがとう。
優
こちらこそです。それでは。
おばちゃん
うん…。
美彩
お母さん…
優
大丈夫…?
美彩
うん…。
美彩
ついた。
美彩
お母さんのお墓…。
美彩
お母さん、間に合わなくてごめんね。
美彩
自慢の娘って言ってくれてありがとう。
美彩
私もお母さんは私の自慢のお母さんだよ。
美彩
お母さんがいなくなっても、見えなくなっても、お母さんはずっと私の自慢のお母さんだからね…。
優
美彩…
優
お母さん、こんにちは。
優
初めまして。
優
美彩さんと同居してる者です。
優
美彩さんは優しくて、何事にもくじけない、俺の憧れのような人です。
優
美彩さんのことは心配しなくても大丈夫ですよ。
優
なにかあったら俺が守ります。
優
俺が美彩さんを傷つけたりしたら、俺を恨んでください。
優
安らかにお眠りください。
熊本
美彩
優。今日はありがとね。
優
いいよ。別に。