カチャリ
探偵社の扉を開ける。
そこには国木田と江戸川、谷崎兄妹がいた。
国木田独歩
おはよう、鏡花
泉鏡花
おはようございます
谷崎潤一郎
今日は鏡花ちゃん、早いねえ
谷崎ナオミ
とっても偉いですわ
泉鏡花
今日はいつもより早く目が覚めただけ
そう言って鏡花は席に座る。
そしてPCを開いてみるが、他の任務をやる気が起きない。
検索欄に 中島敦 居場所 と入れてやりたい気分だ。
だがそんなんで敦の居場所がわかるはずがない。
……早く会いたい。
太宰治
おはよう
ふと、扉が開いた。
その隙間から太宰の声が聞こえて、鏡花は腰を浮かせる。
国木田独歩
今日は、早い出勤だな
驚いたように国木田は言う。
太宰治
ちょっと乱歩さんに用があって。
江戸川乱歩
僕?
駄菓子の袋に埋もれていた江戸川が、ひょっこりと顔を出す。
太宰治
ええ、あなたに。
江戸川乱歩
僕に何の用?
太宰治
彼の居場所はどこですか
太宰の目つきが鋭くなる。
江戸川の瞳がゆらりと揺れた。
江戸川乱歩
彼というのは、どっちのこと
太宰治
もちろん、敦くんのことです
周りが一気に静かになる。
みなが江戸川の返事を期待している。
心臓が、どくどくうるさい。
江戸川乱歩
……
太宰治
……
江戸川乱歩
……わからないんだ。
太宰治
やっぱり
ガタンと椅子が倒れた音がした。
振り返ってみると、それは国木田が勢いよく立ったからだった。
国木田独歩
ど、どういうことですか!
国木田独歩
前はエカテリーナ宮殿だと、そう、おっしゃって……!
江戸川乱歩
そう。
江戸川乱歩
僕はエカテリーナ宮殿だとばかり思っていた。
江戸川乱歩
それは太宰が魔人に電話をかけて、わかったからだった。
江戸川乱歩
だけど、僕はエカテリーナ宮殿には“行けない”と思った。
江戸川乱歩
それはなぜか。
江戸川乱歩
……エカテリーナ宮殿だと云える根拠はまるでなかったからだ
周りがざわついた。
谷崎潤一郎
ど、どういう……
谷崎ナオミ
理由もなしに、
谷崎ナオミ
エカテリーナ宮殿だと思い込んでいたって、ことですの?
江戸川乱歩
まあ、簡単に云うとね。
江戸川は眉をひそめる。
江戸川乱歩
そしてなりより、太宰は……
太宰治
そもそも私は魔人の電話番号など知らない。
また周りがざわつく。
泉鏡花
じゃあ、あの電話は……?
鏡花は太宰の腕を強く掴んで、揺すぶるように言った。
太宰治
……記憶を塗り替えられた
江戸川乱歩
そう云わざるを得ないね。
谷崎潤一郎
記憶を塗り替えるなんて……
谷崎潤一郎
それも僕たち一人残らず……
谷崎潤一郎
……そんなことが、できるんですか?
江戸川乱歩
魔人なら、やりかねない。
泉鏡花
じゃあ、またふりだしに……?
江戸川乱歩
……認めたくないけど、また最初からやり直しだ
泉鏡花
そんな……
江戸川乱歩
鏡花
そんな鏡花の悲しそうな声を遮るように、江戸川が人差し指を鏡花の目の前に出す。
江戸川乱歩
一つ。
江戸川乱歩
一つだけ、わかったことがある。
鏡花は大きく目を見開いた。
そして縋るように江戸川の手を握りしめた。
泉鏡花
な、何?
泉鏡花
わかったことって、何?
江戸川乱歩
……
江戸川乱歩
魔人は、すぐそばにいるよ。
江戸川乱歩
特定こそは、できないけどね。
泉鏡花
……え?






