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ピピピピッ
朝を知らせる憂鬱な音だった。 音の在処を眠い目を擦りながら手に取ると、通知欄は公式アカウントからのメールしかなく、ため息が出る。
黒瀬怜
至っていつも通りの朝だった。 布団をめくり、部屋のドアを開ける。
階段を下ってそのまま目の前の扉を開けると、食卓が並ぶはずのテーブルには1000円札と小さな広告の切れ端が置いてあった
切れ端にはこう書かれていた。
ただ、これだけ。
数年前からずっとそうだ。 親が変わってから家庭の味というものを口にしたことは無かった。
クラスメイトの言う「母親の味」何て物も、遠い記憶のことでしかない。
黒瀬怜
黒瀬怜
制服に着替え、鞄を背負い、最後に1000円札を握りしめ、乱雑にポケットに入れる。
これが俺なりの抵抗の仕方だった。
学校に着けば靴箱の中には泥で汚されたシューズが入っていた。
学年カラーの施されたシューズの汚れていない時の姿を思い出すことは出来なかった
こんな面倒くさいこと誰がしているのかは知らないが、毎回毎回律儀なものだと思っている。
黒瀬怜
近くにあった来客用のスリッパを手際よく手に取り、シューズはそのまま靴箱に置いたままにして昇降口を去る
教室までの道中のスリッパの擦れる音がやけに大きく聞こえた。
2-5と書かれた教室のドアを開けると、一瞬こちらに目線が向けられたが、その内目線はまた違う方向に向き、俺に対して目線を注ぐものは居なくなる。
黒瀬怜
指定されている机には学校に来るなと油性ペンで書かれていた。これはもうずっと面倒くさくて消していないものだ
何事もないように席につき、鞄を横にかける。 机の中を確認すると、特に何も入っておらず安心した。
黒瀬怜
黒瀬怜
周りからはヒソヒソと噂話が飛び交っているのが聞こえた。
黒瀬怜
声の聞こえた方へ目線を向ければ、男子生徒2人は急いで目線を逸らし、話を続ける。
クスクス
黒瀬怜
今日は一段と雰囲気が悪かった。
そんな時、教室のドアが空く音がする
音を鳴らしたのは担任教師だったようだ。
教師はこちらを見て、足元のスリッパに気づいていたようだったが、見て見ぬふりをしてそのまま諸連絡を話し始める。
黒瀬怜
黒瀬怜
黒瀬怜
HRなんて関係なかった。 教師の話の途中で席を立ち、教室から出る。
教師の引き止める声もなければ、心配するような声もなかった。
抜け出さない方が逆に珍しいだろう。出席の為だけに来ている学校、楽しいわけが無い。連絡なんて聞いても聞かなくてもほぼ顔なんて出さないなら意味もなかった。
屋上、普段鍵のかかっているここは俺の特等席だった。誰にも邪魔されない平和な俺の居場所、いわば秘密基地みたいなものだ。
黒瀬怜
詰まっていた息を一気に吐き出す。 やはり来るべきではなかったと後悔してもあとの祭り。どうせ今は俺の悪口で盛りあがっている所だろう。
黒瀬怜
黒瀬怜
黒瀬怜
黒瀬怜
思わず笑う。 言葉にしてみると哀れだ。
来ていたブレザーを脱ぎ、畳んで床に置く。
ここ数日間晴れの日が続いていたからか、床は少し暖かく横になれば暖かそうだ。
ブレザーを枕替わりにして横になる
黒瀬怜
瞳を瞑ろうとした
そんな時、突如屋上の扉の開く音がした。
珍しい来客に目線を急いで扉の方へと向ける
黒瀬怜
黒瀬怜
扉の先に見えたのはクラスメイトの男。 顔の良さについて女子が興奮しながら話していた所を見た記憶がある
名前は、なんだったっけな。
黒瀬怜
成績優秀、運動神経抜群、性格も良ければ顔も良いと聞いたことがあるコイツ。
クラスメイトだろうが関係なく同学年なら俺に話しかける奴なんていないのに。
至って普通に話しかけてくるこいつに調子を狂わされた。
そう言って目の前の男は、俺のテリトリーに足を踏み入れフェンスに指をかけた。
アイツらってのはこいつの友人だろう。
黒瀬怜
悲しそうにそう笑って誤魔化そうとしている所がなんだか引っかかって、もうクラスメイトとは話さないと決めたのに
気づけば口が開いていた
黒瀬怜
神谷春斗
黒瀬怜
神谷春斗
神谷春斗
神谷春斗
黒瀬怜
扉の先から授業の初めを知らせるチャイムが聞こえる
神谷春斗
神谷春斗
神谷春斗
黒瀬怜
黒瀬怜
黒瀬怜
神谷春斗
神谷春斗
黒瀬怜
問題しかないだろうが
目の前の男が当たり前だという顔でそんなことを言うもんだから、目を見開く
虐められることに対して問題があるかどうかなんて、考えるまでもない
神谷春斗
神谷春斗
神谷春斗
神谷はそう言って持っていた鞄から菓子を取りだした
神谷春斗
神谷はお菓子を手に取って微笑んだ
俺はそんな神谷をただ、見ることしか出来なかった。