蓮 理史の異常性

全てを諦めたような顔をして、

父さんは無理やり笑った。

連行される父さんへの障害物のように、

何人もの警官が差し押さえてくる。

体から一気に体温を奪われた気がした。

だって父さんは

誰よりも立派でかっこいい、

そう言って涙を流す警官は、

父さんがよく面倒を見ていた 部下だった。

呆然とする俺を置いて、

ひとりの警官──────桧葉さんは 警察車両に乗り込んでいった。

騒然としていたのが嘘のように、

俺だけが残され、

今までの事が 急に現実味を帯びてくる。

吐瀉物が喉奥から混み上がってくる 感覚。

全部吐き出してしまいたい。

全部、全部

なかったことにしたい。

真犯人？なんだそれ

父さんは人殺しで捕まったのに

別のやつに罪をなすり付けられたって ことか？

父さんが？

隣に住む、幼馴染の 蓮(はちす) 理史。

こんなタイミングで現れる理史に、

俺は少し異常性を感じてしまった。

傍から見れば、"心配で家に駆け込んで きた優しい幼馴染"なのに。

理史は考える素振りをして、

これが最初に、俺が理史へ 感じた"違和感"だった。