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らっだぁ
静まり返った食卓に出された朝食。
とる必要もない食事を、顔も見たくない家族と食べる。
らっだぁ
見た目も完璧な朝食も、家族構成も、全て味がしなかった。
らっだぁ
食事を済ませ、今日から転入する学校へと向かう。
俺は人間じゃない。バケモノだ。
自由に変形させられる液体の身体で人に化けているだけに過ぎない。
熱いと溶けてしまう劣化品。だから、俺はほかのことでは常に1番でなくちゃならないんだ。
見放されて、廃棄処分になる前に。
飯はいらない。俺は生き物―――特に人間の体液を摂取し、自分の体積を増やすことで完璧になれる。
だけど、俺は人間の体液を摂取することを拒んだ。
体液を摂取するとは、早いところ血液を摂取するということだ。
俺は心までバケモノになりたくない。
例え今までに何人も人を殺していたとしても。 …もう手遅れなのかもな。
そんなこんなで体液を摂取していない俺は、高校を卒業したら消滅してしまうらしい。
体液を摂取すればいいだけの話だが、嫌だ。
でも、解ってる。自分の身体が空っぽなことも。 ―――心も空っぽなことも。
らっだぁ
それにしても暑い。早く学校に行かないと溶けてしまいそうだ。
らっだぁ
溶けてきても隠せるように着てきたが、学校で脱ぐなら変わらない気もしてきた。
らっだぁ
そんなことを考えていたその時。
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急に知らない学生に手を掴まれる。
らっだぁ
思わず は? と言ってしまった。 なんだコイツ?多分同学年だとは思うのだが…
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らっだぁ
後ろをちらっと見て恐らく野良犬に追っかけ回されてることを察した。だが、だからなんだ?見ず知らずの他人なんて無視して逃げればいいのに。
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恐らく中、大型位のサイズの犬で、大きめではあるが、犬相手にビビりまくっている相手を見ていると少し面白い。
らっだぁ
らっだぁ
少し圧を掛けて犬に話しかける。動物は勘が鋭いので、俺が太刀打ちできない相手、バケモノであることにはすぐ気づくはずだ。
野良犬
らっだぁ
野良犬
思ったより盛大に怯えながら逃げて行ってしまった。
らっだぁ
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礼儀正しく、キチッと頭を下げてお礼をしてくる。そこまでのことはしてないし、そろそろキツいから早く学校に行きたい。
らっだぁ
ヤバい。本格的にヤバくなってきた。せめて日陰に…
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らっだぁ
らっだぁ
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らっだぁ
そう言われ手を掴まれた。正確には掴めてはいなかったが、今は―――
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らっだぁ
まずい。バレてしまった。
らっだぁ
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らっだぁ
溶けたらダメなのにっ…… 驚く相手を置いて、俺は溶けてしまった。
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相手は完全に怯えきって驚いている。 そりゃあそうだよな。こんなバケモノを見る羽目になったんだから…
らっだぁ
自分でも気持ち悪い、と思うが、初対面の人にバケモノを見るような目で見下されて興奮してしまった。まぁ実際バケモノだしなぁ。
よく見たら片目は隠れているけど顔もいいし―――
らっだぁ
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らっだぁ
らっだぁ
腕が溶けてしまって荷物が掴めない。このまま身体が冷えるのを待つしかないのか…?
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そう言って俺が持とうとした荷物を持ってくれる。
らっだぁ
そんな事を考えていたうちに相手はリュックからスポーツドリンクの入った2リットルペットボトルを出した。
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中身を道の端に全部捨ててしまった。
らっだぁ
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空っぽになったペットボトルをこちらへ差し出してくる。
らっだぁ
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らっだぁ
ペットボトルに入れられしばらくすると、公園の遊具のパイプのような部分へ入っていった。
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らっだぁ
もう少し回復したら起きる前に着替えよう。
それにしても、綺麗に整った顔だな…スポーツをしてるのかな?体つきが良い。腕の辺りの筋肉が特に発達している。あまり走らない競技…剣道とか、弓道とかかな?でも、手のマメの位置からして剣道だと思うな…
なんで見ず知らずの、しかも人ですらない相手にここまでするんだ?意味がわからない。よっぽどのバカか、お人好しか…或いはその両方? …どちらにしろ理解ができない。
二十分後…
らっだぁ
狭い遊具の中で人型に戻る。全裸になっちゃうから外では元に戻れないからね。パンツを履いて、ズボンを履く。ベルトを締めて、あとはワイシャツを着て―――
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らっだぁ
男同士だしら見られても構わないが、痣は見られたらまずい…っ!
らっだぁ
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らっだぁ
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咄嗟に後ろを向く。痣が多い側は隠れていたから言いものの、何故今俺はこう、なんて言うか… 日陰なのに顔が熱い。鼓動が速い。びっくりしたのか…?
らっだぁ
このモヤモヤするような不思議な感情を紛らわすために、半分冗談でからかう。 もう半分は……考えるのはやめよう。
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らっだぁ
なかなかいい反応をするな。結構面白い…w
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らっだぁ
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らっだぁ
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らっだぁ
ぺいんと
人を疑うことを知らなさそうな、真っ直ぐな目をこちらに向けながら眩しく笑う。
らっだぁ
ぺいんと
子供みたいな真っ直ぐな目でこちらを見てくる。 ……そんなことされたら脅しづらいじゃないか…。
まぁ、それでも最悪殺さなきゃいけない相手だ。というか、普段なら殺してたし、助けてもらわなきゃこんなことしなかった。
それに…ちょっと気に入ったし。
ぺいんと
肩を掴み押し倒し、片手を鋭いナイフのように変化させて、相手の首元に突きつける。
らっだぁ
ぺいんと
自分の命が危ういというのに、口をポカーンと開けている。警戒心がない所の話じゃないぞ…?
らっだぁ
ぺいんと
らっだぁ
ぺいんと
らっだぁ
どうしてこいつは人を平気でこんな気持ちにさせるんだ?そもそもこの感情の名前はなんだ?わからない…
らっだぁ
思わず顔に熱を感じて、顔を隠した。なんか、今は顔を見て欲しくない…
ぺいんと
らっだぁ
床に押し倒した時に顔が近くなっていたらしく、相手の呼吸音、吐息の温度までが全て伝わる。 そしてまたさっきの感情がぶり返す。
らっだぁ
こいつといるとペースが乱される。
ぺいんと
ぺいんとは先程の喜びを形にしたような笑いとは違って、少し悪戯そうな笑顔を浮かべた。
らっだぁ
知らない道まで連れてかれたので元の道が分からない。
ぺいんと
そして、いつの間にか相手がタメ口になって馴れ馴れしくなっていることにさえも少し嬉しく感じている自分に嫌悪を抱いた。
らっだぁ
ぺいんと
らっだぁ
ぺいんと
感情の正体に気づいた瞬間また自分が嫌になった。しかも今までそんな感情抱いたことないのに…初めてが見ず知らずの男だなんて…
らっだぁ
らっだぁ
ぺいんと
少し不服そうに言う姿が少し可愛い。 ……って俺は何を!?
らっだぁ
自分の心への怒りが少し言葉に乗ってしまった。
ぺいんと
らっだぁ
らっだぁ
ぺいんと
らっだぁ
ぺいんと
なんで俺の正体を知ってるのにこんなに話しかけてくるんだ?気持ち悪くないのか…?本当に不思議だ…
らっだぁ
思わず気になって聞いてしまった。理由が気になる。何故自分の事も――― 人間のように扱ってくれるのか。
ぺいんと
らっだぁ
ぺいんと
は?と言いたくなるくらい清々しい回答だった。こっちの思考が一瞬固まった。
らっだぁ
そうだ、さっきの感情は、恥ずかしいっていうんだ。俺は天乃に裸を見られて 恥ずかしい になって、 照れた んだ、…
考えただけで 恥ずかしく なる。 そして、もう1つ、似ているようで似ていない感情に気づいた。
らっだぁ