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そよ風と君

第1話 - 本編

100

2025年06月11日

#夏風

#🌃📖🕯

#一次創作

#読切

#コンテスト

#ドラマ

宵月シノ@低浮上

キーンコーンカーンコーン……

6限目の終わりを告げるチャイムが鳴る。私は、真っ先に幼なじみの元に向かった。

波山茉里

シーズー！！！

波山茉里

海行こ！！

夏弥シズ

イヤだ。パス。

波山茉里

なんでぇ！？！？

夏弥シズ

なんでって……

夏弥シズ

この暑さの中外に出るとか正気？

夏弥シズ

しんどい……めんどい……。

私の幼なじみ……夏弥シズはいつもそう言ってばかり。夏なんて一瞬で終わっちゃうのに。

……あ、でも、前にそう言った時は『秋の方が一瞬』って返されたんだっけ。

夏弥シズ

てか茉里がおかしいの……。

夏弥シズ

こーんなバカ暑い中毎日のように外駆け回るとか本当に正気じゃない。

波山茉里

む……。

波山茉里

それはシズが外に出てないから！

波山茉里

毎日ずーっと外に出て遊んでいれば慣れるからね、こんなの！

夏弥シズ

正気じゃねぇ……。

そう言いながら、シズはスマホをいじり始める。室内はクーラーが効いてるんだから、ずっと居たら暑さに弱くなるってお母さんは言ってたのに。

波山茉里

そ〜と〜で〜る〜よ〜！

夏弥シズ

駄々こねてる子供か！

夏弥シズ

出ない出ない！出ないから！！

波山茉里

駄々っ子じゃない！

波山茉里

海で遊ぶの楽しいってシズも言ってたでしょ！

夏弥シズ

何それ！！いつの話！？

クラスメイトは段々とざわつき始める。「またか」なんて囁き合っていた。

波山茉里

〜♪

夏弥シズ

はあ”ぁ”……。

夏弥シズ

暑いんだしすぐ帰るからね？

波山茉里

も〜、言わなくても分かってるよ！

何やかんや、シズは私のわがままに付き合ってくれた。結局いっつもこうだ。でも、何だかんだ付き合ってくれるっていうのは悪い気はしない。

電車の中には人は全く居ない。 ……皆、どこに行っちゃったんだろうなぁ。流石にこんなに暑いと外に出たくないか。

夏弥シズ

……茉里、本当に分かってる？

夏弥シズ

今がどんなに大変な状況か知って──

波山茉里

……うん、知ってるよ。

波山茉里

シズだって、シズのお父さんやお母さんだって忙しいことも知ってる。

波山茉里

だから、せめて今ぐらいは楽しもう？

波山茉里

ほら、笑ってよ！

夏弥シズ

はぁ……。

夏弥シズ

……手のかかる妹ができたみたいな気分。

波山茉里

ね〜、それ失礼じゃない？

波山茉里

誕生日なら私の方が早いんだからね？

夏弥シズ

はっ、誕生日って。同い年でしょ。

夏弥シズ

身長と精神面で言えば私の方が上。

波山茉里

はぁぁ〜？

波山茉里

たったの2cmしか変わらないのに何を言ってるんだか！

夏弥シズ

そう？ 2cmって結構大切だけど。

そうやって私達が火花を散らしている内に、電車はもう私達の目的の駅に着く手前まで来ていた。

シズがバッグを持って立ち上がる。それに続いて私も席を立った。

夏弥シズ

……ほら、行くよ。

波山茉里

シズ、意外と楽しみにしてたの？

夏弥シズ

してない。

夏弥シズ

遊ぶんならさっさと遊んでさっさと帰りたいだけ。

波山茉里

そういうことにしとくね〜♪

視界一面に広がる青に、私は目を輝かせた。私達が目指していた海が目の前にある。

優しくて涼しい夏風が、私達の頬を撫でた。

波山茉里

海だよーーーっ！シズーーー！！

夏弥シズ

はいはい、そんなに叫ばなくても聞こえるから。

夏弥シズ

……で？

夏弥シズ

わざわざ海に来てまで何がしたかったの？

波山茉里

ん〜？

波山茉里

あぁ、そのことか……。

波山茉里

実はね〜……

波山茉里

特に何もない！

波山茉里

シズと一緒に海が見たかっただけ！

夏弥シズ

……そんなもんだと思ってた。

夏弥シズ

これが、海を見る最後の機会になるかもしれないのに。

夏弥シズ

茉里は、家族とじゃなくて私とでよかったの？

波山茉里

？

波山茉里

シズと一緒に見ちゃダメなの？

私は横目でシズを見る。シズは、凄く複雑そうな顔をしていた。

夏弥シズ

……私は、最後に茉里と見れてよかった。

波山茉里

最後って……
まだ決まったわけじゃないでしょ！

波山茉里

明日も明後日も、そのまた明日も海に行こうって約束したら最後じゃなくなるし！

波山茉里

それならきっと寂しくな──

夏弥シズ

……。

波山茉里

シ……ズ…………？

波山茉里

ねぇ、まさか──

夏弥シズ

……。

波山茉里

う、嘘って言ってよ、ねぇ……

夏弥シズ

……。

波山茉里

シズ……。

シズの表情を見て、私は悟ってしまった。シズはいつも似たような表情をしているけど、幼なじみの私には違いが分かった。

夏弥シズ

……もう、海には行けない。

波山茉里

え……？

夏弥シズ

やっぱり、私には“あいつら”への耐性があるみたい。

夏弥シズ

だから、私は行くの。
耐性を持ってる人達と一緒に。

波山茉里

そっか……。

夏弥シズ

どうなるか分からない。

夏弥シズ

成功するかもしれないし、失敗するかもしれない。

夏弥シズ

本当に、何もかもが“未知”なの。

今日はまだこないだろうと思っていた。でも、いつかはくるだろうと分かっていた時。

──私は、シズの言葉を聞いて俯いてしまった。

何となく気まずい空気のまま、私達は学校に向かった。そして屋上に出る。

──外では、生暖かい風が吹いていた。

夏弥シズ

夕方だからちょっとは涼しいか……。

波山茉里

それで、シズは結局……

夏弥シズ

……うん。

夏弥シズ

もう、どうしようもないことだから。

夏弥シズ

私は行くよ。

波山茉里

……。

波山茉里

どっ、どうにかならないの！？

波山茉里

“未確認生命体”なんて──！

夏弥シズ

“未確認”だから何も分からないの。

夏弥シズ

とにかく、私達は戦うしかないんだって。

夏弥シズ

……数年後には、何か対抗策が分かるだろうってお父さんは言ってた。

波山茉里

本当に……そうなのかな……？

夏弥シズ

きっとそう。

夏弥シズ

だから茉里は待ってて。

すると、シズは私の目の前で手を開いた。その手の中には、綺麗な石のようなものがあった。

波山茉里

何これ？

夏弥シズ

……お守り。あげる。

夏弥シズ

大切なものだから、失くさずに持っててよ。

波山茉里

……分かった。

シズは、私に石を握らせると、フェンス越しに街を見下ろした。

夏弥シズ

……強い風が吹いたら注意した方がいいんだって。

夏弥シズ

それは、未確認生命体が現れる合図らしいの。

波山茉里

そう……なんだね。

波山茉里

分かった、気を付ける……。

夏弥シズ

出発は明後日。

夏弥シズ

……私が居なくなったら、あんたのわがままに付き合ってくれる人が減るね。

波山茉里

……。

夏弥シズ

──じゃあね、茉里。

夏弥シズ

……また逢う日まで。

波山茉里

……！

波山茉里

またね、シズ──！

西暦XXXX年、地球に最初の未確認生命体が現れる。

未確認生命体の出現に伴い、地球温暖化が急激に進行。夏は40℃を超える地域が多くなった。

未確認生命体討伐のための部隊が結成されるが、隊員達の安否は未だに不明。

しかし、部隊が結成されたXXXX年から未確認生命体による被害が減少したことから、部隊の隊員達は現在も生きていると見て捜索が続けられている。

数年後

波山茉里

……。

波山茉里

（今日も上手くいかなかったなぁ……。）

波山茉里

（また上司に叱られたし。）

波山茉里 23歳　会社員

波山茉里

（もしかして私、今の仕事向いてない……？）

波山茉里

（あ〜、したいな。転職。）

ふわっ……

波山茉里

（ん、風……？）

ぶわっ──！

波山茉里

うわぁっ！

波山茉里

（強い風……。もしかして──）

強い風が吹いた時は、未確認生命体が出現した合図。昔、誰かからそう教わったのを、私は今でも覚えている。

だから、その時は──

夏弥シズ

……。

波山茉里

え……？

波山茉里

シ、シズ──！？

この作品はいかがでしたか？

100

11件

風コンなのに風要素が取ってつけた感がハンパないんだけども…🙃 世界観とかは即興だった割にはまぁまぁ良い感じでした

いいですね〜！生命体……いいね！

世界観はちゃめちゃ好きです😘😘 病気系かと思ったら未確認生命体…良い意味で裏切られました…！！めっちゃ好きだーーーー！！！

宵月シノ@低浮上

プロフィール

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