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威榴真side
春緑すち
今更な質問に今度こそ理由を 聞くべきだろうかと迷う。
だが、夏都に聞いた話が 口を重くしていた。
赤暇なつ
俺も夏都も今日まで本人から それらしい話を聞いたことがなかった。
澄絺はここぞと言う時に 自分の野望を語ってみせる。
それは周囲の人間を鼓舞する 力になるのだがあくまで 協力が必要なケースにだけ 発揮されるものだった。
個人プレイが通用するなら 結果が出るまで隠し通すだけの 頑固な意志も持っている。
紫龍いるま
無理矢理自分を納得させ 俺は葛藤などなかったように 笑ってみせた。
紫龍いるま
春緑すち
紫龍いるま
そこで会話は途切れ澄絺が 椅子を引く音が嫌に響いた。
紫龍いるま
蘭の名前はもちろん なんとなく美琴のことも 口にするのは躊躇われた。
かと言って2人は 幼馴染とその親友だ。
全然関係のない話題を選んだつもりで ひょんなことから2人の話に 繋がってしまうこともある。
実際に昨日も小テストの話題から うっかり蘭の名前が飛び出しそうになって 焦ったばかりだった。
暫く無言で悶々としていると 不意に澄絺が口を開いた。
春緑すち
紫龍いるま
2年の冬に見せてもらった短編映画は 澄絺の完全自主制作だった。
セリフを極限まで削り 音楽と絵で見せる美しい フィルムだったのを覚えている。
紫龍いるま
紫龍いるま
出ているから急に話題にしたのだ。
質問はあっという間に確信へと変わり 続く言葉を奪っていった。
紫龍いるま
澄絺は「うん、」と微かに頷き 俺から言葉を引き継ぐ。
春緑すち
紫龍いるま
震える声で問いかけると 澄絺は肩を竦めて苦笑いを浮かべた。
春緑すち
春緑すち
紫龍いるま
紫龍いるま
半分以上予想はついていたが 確かめずにはいられない。
堪らず席を立ち 澄絺へと詰め寄った。
動揺も露わな俺とは対照的に 当の本人は笑い声交じりに言う。
春緑すち
春緑すち
紫龍いるま
春緑すち
春緑すち
心臓が嫌な音を立てるのを聞きながら 俺は掠れた声で尋ねる。
紫龍いるま
春緑すち
春緑すち
紫龍いるま
告白しておいて無責任なんじゃないのか?
堪らず叫びそうになったが どこか寂しそうな澄絺の 表情にぐっと息が詰まった。
紫龍いるま
何事にも正面からぶつかってく澄絺が 躊躇しているように見えたのは何故か
それこそ理由は無責任なことは できないと思ったからではないのか。
紫龍いるま
空から答えが降ってきたかのように 突如、答えに触れた気がした。
澄絺が好きなのは 恐らく美琴で間違いない。
だがコンクールに出した以上 無責任に告白できないと 思ったのだろう。
紫龍いるま
いや、できなかったのだ。
まさか俺たちが言いふらすとは 思わなかっただろうが 何故告白しないのかと ツッコミを喰らう可能性は 考えたに違いない。
春緑すち
あれは正真正銘 俺を焚き付けていたのだ。
自分にはできないけれど お前なら ... と。
春緑すち
春緑すち
無責任なことを言っている、とは思わなかった。
幼馴染として、同じ男として 背中を押してくれているだけだ。
だから俺も真っ直ぐに 澄絺の目を見て告げた。
紫龍いるま
澄絺は僅かに目を見張り やがて小さく笑った。