悪役戦隊 四天王

「ほのぼの」に不向きな「悪役」を対象にした「ほのぼの」検証報告

はじめに 「ほのぼのした場面」「ほのぼのした描写」とは

取り立てて大きな出来事ではないがどこか人に「癒し」を与える、いわゆる「日常系描写」である。

「ほのぼの」に人柄が密接に関係していることは誰もが感覚的に理解していることだろう。

そうすると逆説的に、好感度数値が低い「悪役」と呼ばれる者の癒しを与える力は無いということになる。

本当にそうだろうか？

本稿ではそう言った「悪役」と呼ばれる者を対象に「ほのぼの」を演出することが可能か否かを検証し報告していきたい。

報告に入る前に、今回の検証対象となった「悪役」達を以下に記していきたい。 検証対象となった「悪役」は筆者を含めて4人いる。

ラスボス：再婚相手と「大人のアソ ビ」に興じる。息子が1人いるが ほぼ空気のように扱っている。ラスボスのような雰囲気。女性。

お父さん：自身のステータス向上の為、子供の進学先や交友関係を厳しく管理、監視している。

吉田くん：学校内で悪い意味で有名になっている問題児。中学生。

筆者：浮気して恋人と破局。数年後 恋人と再会しヨリを戻す為、恋人の彼氏に酷い言葉をかけた。「元カレ」と呼ばれている。

以上が検証対象となった「悪役」達である。 以下から検証結果の報告を記していく。

1.ガーデニング

俺が景気の良いことを言ってあげたのに2人は揃ってため息を吐いた。

__俺達は非リア弟が管理人を務めるインターネット掲示板で知り合った。月に何回かオフ会をするほどの仲だ。

俺が非リア弟に「悪役でも ほのぼの出来るか検証したい」と個人的に相談すると、今日のガーデニングの場を提供してくれた。

確かに花に囲まれてたら悪役でも ほのぼの出来___

___たりはせず、ガーデニングの場は泥団子合戦に移行した。

非リア弟が丹精込めて育てたパンジーらしき花は踏み倒され、庭は泥とミミズとナメクジ(吉田くんが作った泥団子の中に入ってた)だらけになった__

___けど別に非リア弟だからいいや。

しかし別の問題が発生した。

ガーデニング検証にラスボスの記述が無いのはラスボスは不参加だった為である。

ラスボスは春に猛威を奮う花粉(スギ、ヒノキ、イネなど)に対する耐性が著しく低い。つまり重度の花粉症である。 花粉症でも無い人が鼻セ●ブ使ってるのを見ると殺意を覚えるらしい。

話は逸れたが、このガーデニング検証は4月に行われた。

(泥団子合戦と書いて)ガーデニング(と読む)を終え、疲弊した筆者を待ち受けていたのは、ガスマスクを装着したラスボスの厳しい花粉チェックだった。

「衣服を全て脱いでから家に上がりなさい」 第一声がこれだった。 捕まるわ

2.癒される動画

ガーデニング(泥団子と書いて略)とラスボスチェックを終えて、今はオフ会会場である非リア弟の家でダラダラしていた。

ラスボスがガスマスクを装着したまま答えた。

ちなみにラスボスの命(めい)によりガーデニングのあと下着に至るまで着替えさせられた。 俺は「モンブラン」と大きくプリントされたTシャツを着ている。

「ドS」と大きくプリントされたTシャツに着替えた吉田くんは しばらく腕を組んでいたが、やがて首を横に振った。

「賢者」と大きくプリントされたTシャツに着替えたお父さんが聞き捨てならないことを言ってきたので思わず声を荒げてしまった。

お父さんが得意気に動画を再生する。 とりあえず皆で視聴することにした。

程なくして やたら渋めのダンディーな声が非リア弟家に流れた_____…

さんてんいちよんいちごーきゅーにーろくごーさんごーはちきゅーななきゅー…

吉田くんがテーブルに突っ伏した。 ガスマスクを装着したラスボスが吉田くんのアクションを全く無視して淡々と答える。

テーブルに突っ伏した吉田くんは ピクリとも動かなかった。 あ、これはあれだ。

お父さんは屍となってしまった吉田くんの肩を掴むと その体を揺さぶった。

ラスボスは面倒臭そうにため息を吐くと ガスマスクを装着したまま部屋を見渡し、ぽつり と呟いた。

ガスマスクで顔が見えないにも関わらず感じる悲壮な雰囲気とそれを可能にする高い演技力。 短いながらも想像力を掻き立てる言葉。

いつの間にか俺の頬を熱い何かが流れていた。 お父さんも同じ状態で、俺とお父さんは窓を開けて咆哮していた。

「「吉田くーーーーーん！！」」

話は大いに脱線し「吉田くん殺人事件」にまで発展した。

経緯は不明だがお父さんが探偵になり これまた経緯は不明だが筆者が犯人になった。解せぬ。

探偵やりたかった

3.子犬(トイプードル)

オフ会の主催者でありこの家の家主である非リア弟はため息を吐くと、抱えているケースをテーブルに置いた。

吉田くんの素直な反応を無視して非リア弟は俺に耳を貸せと手招きした。 身長148センチしかない非リア弟に耳を貸すのは かなりしんどいけど貸してあげることにする。

子犬(オトウトと言う名前らしい。性別はメス)に吉田くんが早速芸を覚えさせようとしていた。

オトウトはしばらく きょとんとしていたが、「あーはいはい察し察し」みたいな顔になり

おもむろに片足を上げると満ち足りた顔で放尿し始めた。

吉田くんの手に。

とても健全な少年少女には聞かせられない酷い言葉を並べながら吉田くんは足取り荒く洗面所に向かった。

戻って来ても吉田くんの機嫌は悪かった。

そもそもポケットじゃなくて冷蔵庫から出て来た時点でアウトだ。

4.モンブラン！

非リア弟がモンブランを買いに行くと言って出かけてから1時間半が経過していた。確かに遅い。

吉田くんがオトウトとボール遊びをしながら話に加わった。 仲良くなってんじゃん…

__というわけで俺の奢りなのでモンブランを買って来た。

皆に2つずつモンブランを配る。俺は20個。 血湧き肉踊るホラードラマを観ながらモンブランを食べたんだけど

さすがに20個は多かった……

思いがけない皆の優しさに泣きそうになっていると___

非リア弟が帰って来た。

モンブランを買った非リア弟が帰って来た！！

俺は必死に廊下を這った。

モンブランが1匹モンブランが2匹

右も左も上も下もモンブラン

モンブラン最高ーーーーーーーーーーーーー！！

おわりに

以上4つの検証を行ったが、「ほのぼの」の是非については極めて判断に苦しむ所となった。

本稿に目を通して頂いた方々に判断を委ねる次第となったと言わざるを得ない。

検証を行った意味と言った諸々の問いには口を閉ざすつもりでいるが、1つだけ声を大にして言いたいことがある。

お気づきの方もいるかもしれないが、本稿は非リア弟が帰って来た所で報告を終えている。

すなわちモンブランを買うと言って出かけて行った非リア弟が何を買って来たか についてであり、

本稿はその報告をもって締めたいと思う。

モンブランの香りがする虫除けってなんだよ