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第1話 - あ

2023年09月13日

#スカッと

タナカトシキ

トシフミ

おい、俺からにげられると思ってんのか！

トシフミ

俺の経歴に傷をつけやがって…

トシフミ

専業主婦のお前が高校生を養っていけるはずないだろ！

ユキナ

もう離婚の手続きは終わったから

ユキナ

他人のアンタと話すことは何もありません

ユキナ

新しい仕事だって見つけた

ユキナ

だから、リリナは私が責任をもってきちんと大学まで通わせるから

トシフミ

人生ナメてんじゃねぇぞ！

トシフミ

俺とお前の生涯年収がどれだけ差があるか理解してんのか？

ユキナ

何なの？

ユキナ

いきなり連絡してきたと思ったら

ユキナ

さっきから何が言いたいの？

ユキナ

私たちに関わろうとしないで

トシフミ

有名企業で働いてる俺と一緒に暮らしてたからな

トシフミ

いきなり生活水準を落としてやっていけるとは思えないな

ユキナ

不倫相手と遊び回って生活費をろくに入れてなかったクソ野郎は誰？

ユキナ

私たちが贅沢な生活してたことなんて一度もないんだけど

ユキナ

毎日毎日、家に帰ってくるなり私やリリナを罵倒したり暴力を振るったりして…

ユキナ

挙句、料理を捨てたりリリナが勉強してた高校受験のための参考書を破ったりしてさ

ユキナ

外では家族サービスをしてるとか

ユキナ

アリしないこと言って評価だけあげてさ

ユキナ

家では私たちをゴミ扱いしてくれてたわよね

トシフミ

だってゴミだろ？

トシフミ

使えない役立たずの女と、その女が産んだゴミ

トシフミ

男だったらまだしも女なんて産みやがって

トシフミ

将来、何の役にも立たないだろうが

トシフミ

捨てないで今まで置いてやったのに、ゴミが自ら逃げるなんてな

トシフミ

こうなるなんて知ってたらお前のようなゴミは拾わなかったのにな

トシフミ

俺の言うことだけ聞いてりゃ良いのに一丁前に反抗しやがってよ

ユキナ

ゴミゴミって…

ユキナ

当たり前でしょ？

ユキナ

不倫して、生活費を入れない夫なんて…

ユキナ

ただただ私たちを苦しめるだけの男なんて必要ないわ

ユキナ

どっちがゴミかわかってる？

トシフミ

あのな？

トシフミ

身の程が分かってないようだから教えてやる

トシフミ

女が有利なのは20代前半までだ

トシフミ

お前みたいな子持ちのババアには価値がねぇんだよ

トシフミ

だから俺は若い女と一緒になるんだ

トシフミ

お前とは全てが違うからな

ユキナ

じゃあ、不倫相手と仲良く暮らしたら良いじゃない

トシフミ

ああ、あいつはサイコーの女だよ

トシフミ

若いし、綺麗だし

トシフミ

何より俺を怒らせないんだよ

トシフミ

まぁ、俺たちはお前に言われなくても幸せになるよ

トシフミ

しかし、俺は俺を捨てたお前というゴミを許さないからな

トシフミ

あと、リリナの養育費が欲しかったら俺の目の前で土下座しろ

トシフミ

そしたら養育費を恵んでやってもいいぞ

ユキナ

要りません

ユキナ

アンタからは一銭も貰わない

ユキナ

だから、私たちに２度と関わらないで

ユキナ

さようなら

〜2ヶ月後〜

ユキナ

仕事終わったよ

ユキナ

今から電車に乗って帰るね

リリナ

ママ、お疲れ様！

リリナ

じゃあ、ご飯の準備して待ってるね！

ユキナ

リリナ、いつもありがとね！

ユキナ

せっかくバイトが休みなのに家事までやらせちゃって

リリナ

ママいきなりどうしたの？

リリナ

私がしたいから料理作るだけだよ？

リリナ

ママはいつも仕事を頑張ってくれてるでしょ？

リリナ

これくらいやらせてよ

ユキナ

でも、リリナは高校生だし…

ユキナ

勉強だって、それにほら…

リリナ

何？

ユキナ

彼氏だっているんじゃないの？

リリナ

え？彼氏？

リリナ

そんなこと気にしてたの？

リリナ

いないから安心してよ！

リリナ

それに、私が彼氏を作るとしたら家庭状況を理解してママと仲良くなってくれる人を選ぶから

リリナ

私はずっとママの味方だよ！

リリナ

それは、今後ずっと変わらないからね

ユキナ

リリナ、ありがとう

ユキナ

よし、今日は帰りにケーキを買ってきてあげる！

リリナ

え？ケーキ？

リリナ

やった！

リリナ

絶対だよ？

リリナ

じゃあ、気をつけて帰ってきてね！

リリナ

どこのケーキ屋さん行くの？

リリナ

あ

リリナ

待って

リリナ

ママ帰ってこないで

リリナ

だめ

ユキナ

どうしたの？

リリナ

どうしよう…

リリナ

ママ、今は絶対に帰ってきちゃダメだよ

リリナ

アイツが家の前にいる

ユキナ

え？

ユキナ

アイツ…？

ユキナ

アイツってゴミ野郎のこと？

リリナ

うん、元父親の形をしたゴミ

リリナ

家の前をすごい形相で睨みながらうろついてる

ユキナ

え！

ユキナ

家の前にいるの？

ユキナ

家の中には入ってきてないわよね？！

リリナ

鍵はしてるから、大丈夫

リリナ

カーテンもしてるから家の中は見れないと思う

リリナ

無理やり入ってこれないと思うけど、ママは家に近づかない方が良いと思う

リリナ

鉢合わせたらどうなるか…

リリナ

いなくなったら教えるから

リリナ

ママはそれまで何処かに隠れといて

ユキナ

無理よ

ユキナ

そんなこと！

ユキナ

リリナ1人でそんな危ない状況…

ユキナ

家にいさせたくないわ

ユキナ

キレたら何するかわからないような奴なのよ？

リリナ

ママと出会った方が余計にヒートアップするに決まってるって

リリナ

それはママもわかってるでしょ？

リリナ

ユキナー！って大声で叫んでるし

リリナ

絶対ママは帰ってきちゃダメだからね

ユキナ

叫んでるの？

ユキナ

ますます危ない状況じゃない

ユキナ

ねぇ、警察に連絡しましょうよ

ユキナ

何かある前に呼びましょ

リリナ

以前、警察に連絡したけど無駄だったじゃない…

リリナ

離婚前、暴れてた時に呼んだ警官に言われたこと覚えてる？

リリナ

痴話喧嘩ですね

リリナ

って言われたんだよ？

リリナ

私、あれのせいで警察大っ嫌いになったんだから

リリナ

まだ許せない！

ユキナ

まぁ、あれは年配の警察官だったからね…

ユキナ

確かにあの時は私も腹が立ったけど、あんな人ばっかりじゃないわよ

ユキナ

呼んで損はないと思うわ

ユキナ

リリナが怖い目に遭う方が私は嫌なの

リリナ

分かった…

リリナ

ってちょっと待って

リリナ

アイツ誰かと話してる

ユキナ

どうしたの？

ユキナ

誰かって？

ユキナ

誰なの？

リリナ

今、近所のおじいちゃんが…

リリナ

あの角の家に住んでるおじいちゃんが…

ユキナ

佐々木さん？

リリナ

その人がアイツに注意してくれてるみたいでさ

ユキナ

え？！

ユキナ

佐々木さん、大丈夫かしら

ユキナ

アイツ、キレてるんでしょ？！

ユキナ

何かあったらいけないから早く警察呼ぼ！

リリナ

でも、様子が変だよ

ユキナ

どう変なの？！

リリナ

大丈夫そう…

ユキナ

え？

ユキナ

なんで！？

リリナ

だって、アイツおじいちゃんに頭下げてるよ

ユキナ

え？

リリナ

たしかにアイツは外面がいいタイプではあったけど…

リリナ

近所の人に頭を下げるような人間じゃなかったよね？

ユキナ

確かにそうね

ユキナ

気にしてたら家の前で大声なんて出せないし…

リリナ

うわ！

リリナ

今度は土下座までしてるよ？！

リリナ

佐々木さんって何者なの？！

リリナ

ちょっと私言ってきて良い？

ユキナ

行かなくて良い！

ユキナ

危ないから！

ユキナ

もう少しで家に着くから

ユキナ

私が話を聞くわ

〜翌日〜

トシフミ

いやぁ、まさかユキナが佐々木会長と知り合いだったとはな

ユキナ

何？

ユキナ

急に家に来たり、連絡してきたり…

トシフミ

いやぁ、つくづく俺たちには縁があるんだなって思ってさ

ユキナ

縁も何もアンタが勝手に家に来ただけでしょ

トシフミ

まぁまぁそう言うなって

トシフミ

俺は友好的にお前たちとやり直そうって話に来ただけだったんだ

ユキナ

はぁ？

ユキナ

近所に響き渡る大声で叫んでたのは誰よ

ユキナ

取り繕えないような嘘はやめて

トシフミ

お互いに昔のことは水に流さないか？

トシフミ

お前たちには苦労をかけたと思ってるんだ

ユキナ

分かったわ

ユキナ

どうせ、佐々木さんがアンタの会社の会長だから、今謝ってるだけでしょ

トシフミ

へ？

トシフミ

別に佐々木会長は関係ないさ

トシフミ

俺は純粋にお前たちとやり直したいと思ってるんだ

ユキナ

天地がひっくり返ってもありえないから

ユキナ

今後一切関わらないでいてくれるだけで幸せです

トシフミ

分かった！

トシフミ

今後一切迷惑はかけない！

トシフミ

だから

トシフミ

佐々木会長には俺を許したと説明してくれないか？

トシフミ

きっとユキナの口から説明されると納得すると思うんだ

トシフミ

俺はコンタクトをとることすら出来なくてな

ユキナ

それは、近所迷惑になるほど叫んでたアンタが悪いんでしょ

ユキナ

佐々木さんはアンタの声を聞いて駆けつけてくれたんだから

ユキナ

何より私はアンタと他人なの

ユキナ

警察の厄介にならなかっただけでも感謝してよね

トシフミ

でも俺、このままだと危ないんだよ

ユキナ

危ないって？

トシフミ

会社でさ…

ユキナ

ああ、会長さんを怒らせたもんね

トシフミ

せっかく有名企業に入って部長に昇り詰めたんだ

トシフミ

わかるだろ？

トシフミ

今全てを失うわけにはいかないんだ！

ユキナ

知らないわよ

ユキナ

私に助けを求めないで

ユキナ

全てアンタがしてきたことの見返りでしょ？

ユキナ

会社で思い出したけど

ユキナ

アンタ、私と離婚した理由を社内で私が不倫したからって吹聴してるようね

ユキナ

自分が不倫して私たちを苦しめてたくせに

トシフミ

それは、社内での俺のイメージがあるからさ…

ユキナ

どうせこっちに来たのは不倫相手にも逃げられたからでしょ？

トシフミ

そんなことないさ

トシフミ

純粋にお前たちとやり直したいと心から思ってだな

ユキナ

あ、そ

ユキナ

まぁ、良いわ

ユキナ

アンタのことなんてどうでもいい

ユキナ

アンタみたいな奴と一緒になりたいと思う人なんて絶対に現れない

ユキナ

私たちはアンタにされたことを決して忘れない

ユキナ

だから、私は佐々木さんにアンタを擁護するようなことは絶対に言わない

ユキナ

佐々木さんには昨日話を聞いて、離婚したこと、その理由も話したし

ユキナ

アンタがいくら言い訳をしたところでもう遅いわよ

トシフミ

はぁ？！

トシフミ

俺とお前は長年一緒に過ごした仲だろ？！

トシフミ

元旦那の頼みくらい聞いてくれても良いんじゃないか？！

ユキナ

アンタが私たちにしたことは忘れないって言ってんでしょ

ユキナ

何したか忘れたとは言わさない

ユキナ

絶対に許さない

ユキナ

佐々木さんがアンタの会社の会長だとは知らなかったけど

ユキナ

佐々木さんはすごく優しい人

ユキナ

人間ができてるっていうの？

ユキナ

私たちみたいな恵まれない人に住む場所を格安で提供してくれてるの

ユキナ

佐々木さんはあの一体の地主さんだから

ユキナ

そんな素晴らしい人に私は嘘なんてつけません

トシフミ

なんでだよ…

トシフミ

俺の人生がかかってるんだぞ？！

ユキナ

アンタは私とはもう他人でしょ？

ユキナ

他人の人生なんてどうなろうが知ったことではないわよ

ユキナ

それに私たちの人生だってかかってるの

ユキナ

私にとっては、リリナの人生だけが大切なの

ユキナ

ここでアンタを許したら

ユキナ

絶対にアンタはもう一度私たちに対して嫌がらせをしてくるに決まってる

ユキナ

次は佐々木さんが気づかないように、より陰湿に迫ってくる

ユキナ

そうなると私たちは嫌がらせを受けたくないがためにアンタの顔色を伺うようになる

ユキナ

それは、あの忌々しい十数年間と一緒

トシフミ

忌々しいって…

トシフミ

父として夫として家族を導くのが男の役割だろ？

ユキナ

まだそんなことが言えるの？

ユキナ

それ、佐々木さんの前で同じことが言える？

ユキナ

言えないでしょ？

ユキナ

他の人の前で言えないってことはアンタも悪いことをしてるって思ってるってことなのよ

トシフミ

バカバカしい

トシフミ

こんなことわざわざ他の人に言うわけないだろ

トシフミ

これは家族の問題であって他人が介入する話じゃないだろ

トシフミ

だから、良い加減目を覚まして俺のために動け

ユキナ

私たちはアンタがいなくても生きていけますので

ユキナ

もう私とアンタは他人なの

ユキナ

連絡してこないでください

トシフミ

待てって

トシフミ

俺がいなくなって良いのか？！

トシフミ

よく考えろよ

トシフミ

何もしなくても生活できてたんだぞ？

トシフミ

楽して生きていけたんだぞ？

ユキナ

何？

ユキナ

まさか自分のおかげで私たちが楽して生活してると思ってるの？

ユキナ

私たちはアンタが要らないの

ユキナ

アンタは私たちをゴミ扱いしてたけど

ユキナ

私たちにとって人生最大のゴミはアンタだった

ユキナ

だから捨てたのよ

ユキナ

良い加減に自覚したらどう？

ユキナ

自分がゴミだってことに

〜後日談〜

ユキナ

その後、佐々木さんの働きもあってアイツは遠方にある田舎の下請け会社へ左遷されました

ユキナ

左遷先ではヒラ社員からのスタートになったそうです

ユキナ

佐々木さんの力でクビにもできましたが、遠くへ飛ばした方が安全だろうという配慮です

ユキナ

私たちはアイツの陰を気にすることなく伸び伸びと生活することができるようになりました

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タナカトシキ

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