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室町弥生
あ・す・か・くーん
飛鳥
あ、室町さんお疲れ様です
飛鳥
どうかしましたか？
飛鳥
あ、さっき提出した書類に不備がありましたかね…？
室町弥生
やだぁ室町さんだなんて他人行儀～ｗ
室町弥生
弥生って呼んでって言ってるじゃないｗ
飛鳥
はぁ…
室町弥生
飛鳥くんの提出書類は今日も完璧だったよぉ
室町弥生
さっすが仕事がデキる男は違うわよね～
室町弥生
他の社員たちに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいよｗ
飛鳥
はぁ、ありがとうございます
室町弥生
そんな頑張り屋さんの飛鳥くんには特別にご褒美をあげちゃいま～す
飛鳥
ご褒美…？
室町弥生
ズバリ、私とのデート権を進呈しちゃいまーすｗ
室町弥生
私の仕事も終わったし、今から飛鳥くんの部署まで迎えに行くわねｗ
飛鳥
え、えぇ、それは…ちょっと困ります
室町弥生
えぇ～何で？
飛鳥
俺、まだ仕事終わってないですし…
室町弥生
えぇ～そんなの他の人に押し付けちゃえばいいじゃない
飛鳥
そんな無責任なこと出来ませんよ
室町弥生
んもう飛鳥くんてば真面目ねー
室町弥生
ま、そこも飛鳥くんのいいところなんだけどｗ
飛鳥
それにデートとか困ります
飛鳥
俺、室町さんをそういう目で見れないので
室町弥生
えーひっどーいｗ
室町弥生
まぁ飛鳥くんの気持ちも分からなくはないけどね？
室町弥生
ただでさえ社長の娘なんて立場なんだもの、
室町弥生
一般社員の飛鳥くんからしたら手を出しづらいわよねぇ
飛鳥
いえ、そうじゃなくて…
室町弥生
でも自分に自信がないからって
室町弥生
女の子の誘いを断って恥をかかせるのはどうかと思うよ～？
飛鳥
俺の話を聞いてくださいよ
室町弥生
まぁいいわ
室町弥生
飛鳥くんも忙しそうだし、今日のところは諦めてあげるｗ
室町弥生
そ・の・か・わ・り、次の日曜はしっかり空けといてよ～？
飛鳥
えっ、何でですか
室町弥生
んも～ニブチンねぇ
室町弥生
今日の埋め合わせに日曜日にデートしてあげるって言ってるのよｗ
室町弥生
名誉挽回させてあげるｗ
飛鳥
あの、日曜日は予定があるので…
室町弥生
はぁ？
室町弥生
せっかくこの私が誘ってあげてるのに断るっていうの？
飛鳥
はい
飛鳥
さっきも言いましたけど、
飛鳥
俺は室町さんのことそんな目で見れません
飛鳥
好きでもない人とデートなんて…そんな不誠実なことしたくないんです
室町弥生
飛鳥くんてばおカタいんだからー
室町弥生
でも照れ隠しもそこまでいくとちょっとイタいわよ～？
飛鳥
いや、照れ隠しとかじゃなくて本当に…
室町弥生
しょうがないわね、私が飛鳥くんを一皮むかせてあげるｗ
室町弥生
日曜のデートで手取り足取り女の扱い方をレクチャーしてあげるわ
室町弥生
でも覚悟してよね？
室町弥生
私を知ったら、もう他の女じゃ満足できないくらい病みつきになっちゃうんだからｗ
飛鳥
だから結構ですってば
飛鳥
室町さんとはデートできません！
室町弥生
だーめ、これは社長の娘命令よ
飛鳥
社長の娘命令って…初めて聞きましたよ
飛鳥
それにそれってパワハラじゃないですか…？
室町弥生
パワハラだなんて大げさよ～
飛鳥
はぁ…とにかく無理なものは無理です
飛鳥
それに俺、恋人がいるんで
飛鳥
その人を裏切るようなマネはしたくありません
室町弥生
えっ
室町弥生
ウソでしょ、飛鳥くん恋人がいるの！？
飛鳥
はい
室町弥生
ふ…
室町弥生
ふざっけんじゃないわよ！
飛鳥
む、室町さん…？
室町弥生
私の飛鳥くんを横取りするなんて…どこどいつよ！？
室町弥生
どうせ大した女じゃないんだろうに、許せないわ！
飛鳥
いえ、あの
室町弥生
それに飛鳥くんも飛鳥くんよ！
飛鳥
えぇ！？
室町弥生
あーんな物欲しそうな目で見てたから相手してやってたってのに、恋人持ちなんて！
室町弥生
この遊び人！
飛鳥
そんな目で見たことなんて一度もありませんけど！？
室町弥生
ウソよ、経験豊富な私にはわかるの
室町弥生
表面上はクールに取り繕ってたけど、周りを見る目と私を見る目では明らかに違っていたわ
室町弥生
あの切なげな熱いまなざし…
室町弥生
あれはまさしく恋する男の目だった
飛鳥
何ですかそれ…室町さんの妄想じゃないですか
室町弥生
若くてイケメンだから付き合ってあげてもいいかななんて思ってたのに
室町弥生
まさか恋人がいるなんて…
室町弥生
とんだ大恥かかされた気分よ
飛鳥
えっと…なんかすみません？
室町弥生
まぁいいわ
室町弥生
私は心が広いから許してあげる
室町弥生
その代わり、その恋人とは別れなさい
飛鳥
は、はぁ！？
飛鳥
何でそうなるんですか！？
室町弥生
だって私の方がずっと魅力的に決まってるもの
室町弥生
それにどこの馬の骨とも分からない女に負けるなんて許せない
室町弥生
飛鳥くんのことは責任もって可愛がってあげるから、
室町弥生
その女とは別れて私と付き合いなさい
室町弥生
これは社長の娘命令よ！
飛鳥
待ってくださいよ…
飛鳥
室町さんの言ってること無茶苦茶ですよ
飛鳥
それに恋人より室町さんの方に夢中になるとか…あり得ません
飛鳥
俺、恋人のことを心底愛してるんです
飛鳥
結婚の約束だってしてるんですから
飛鳥
別れるなんて出来るわけないでしょう
室町弥生
な、な、な、結婚…！？
室町弥生
聞いてないわよ！？
飛鳥
あまり吹聴することでもないので…
飛鳥
そういうわけですので申し訳ないですけど室町さんの気持ちに応えることは…
室町弥生
許さない
飛鳥
えっ？
室町弥生
この私にこんな恥をかかせるなんて許さない！
室町弥生
私をフッたことを後悔させてやるんだからね
室町弥生
パパに言いつけて、もうこの会社にいられなくしてやるんだからぁ！
飛鳥
え、えぇ…
~次の日~
桃山
おい！
桃山
お前会社辞めたって本当なのか！？
桃山
部署内で噂になってるぞ！
飛鳥
あぁ、桃山か
飛鳥
うん、本当だよ
飛鳥
昨日退職届を出してきた
桃山
それってやっぱり…あの社長の娘のせいか？
桃山
総務課を通りかかった時に
桃山
「アイツ、恋人がいたクセに私にコナかけてたのよ」
桃山
「だからクビにしてってパパにお願いしたのｗ」
桃山
「私を弄んだ罰よ～ｗ」
桃山
なーんて高笑いしてたとこ見ちゃったんだけど…
飛鳥
はは…まぁ当たらずとも遠からずってところかな
飛鳥
俺、室町さんに言い寄られててさ
飛鳥
あんまりしつこいから、この間恋人がいるから無理ですってハッキリ断ったんだ
飛鳥
そしたら「パパに言いつけてやる！」だよ
桃山
うわぁ…大変だったな
桃山
でもまさかそれでクビになったってワケじゃないんだろ？
桃山
社長だってまさか３５歳にもなる娘のワガママをホイホイ聞き入れるとは思えないし…
飛鳥
あぁ、うん、会社は自分から辞めたんだよ
飛鳥
まぁ室町さんとのことが無関係じゃないとは言わないけどな
飛鳥
この間室町さんが社長にあるころないことチクったんだろうな
飛鳥
社長に呼び出されて小一時間説教を食らったんだよ
桃山
うげぇ
飛鳥
社長の話を聞いて目ん玉飛び出しそうになったよ
飛鳥
俺が恋人の存在を隠して室町さんに近づいて、
飛鳥
誘惑したり体の関係を迫ったりしたことになってたんだから
桃山
うわぁ…それはないわ
桃山
誰が好きこのんで年増の厚化粧デブ誘惑したいと思うんだよ
桃山
社長って普段は有能なのに、一人娘のことになると途端に理性が蒸発するよなぁ
飛鳥
俺が反論しても聞く耳持ってくれなくてさ
飛鳥
室町さんとこれ以上顔を突き合わせるのも苦痛だし、
飛鳥
これ以上ここで働くのは無理だなと思って退職届を出したんだよ
桃山
そうだったのか…
飛鳥
あぁ、あんまり気を使わないでくれよ
飛鳥
社長には俺の事情も含めて全部話したし、
飛鳥
最終的には納得してくれたんだから
飛鳥
円満退職だよ
桃山
それならいいんだけど…
桃山
会社は別々になっちまったけどさ、俺たちは友達だからな
桃山
何かあればいつでも話を聞くぜ
飛鳥
ありがとｗ
~数十分後~
室町弥生
飛鳥くん、会社辞めちゃうんだって？
飛鳥
はい、今までお世話になりました。
室町弥生
飛鳥くん優秀だったのにもったいな～い
室町弥生
私に逆らったりしなければこんなことにはならなかったのにねー
室町弥生
飛鳥くんがクビになったなんて知ったら、相手の女もさぞガッカリするでしょうねｗ
室町弥生
結婚の約束もお流れになっちゃうかもね～ｗ
室町弥生
あーあ、かわいそう～ｗ
飛鳥
はぁ…何の話ですか？
室町弥生
私だったら、飛鳥くんが無職でも気にしたりしないんだけどなぁ
室町弥生
社長の娘だからお金には困らっていないもの
飛鳥
はい？
室町弥生
だーかーらー
室町弥生
恋人を捨てて私と付き合いなさい
室町弥生
そうしたら今回のことは許してあげる
室町弥生
飛鳥くんが望むなら会社に復帰させてあげてもいいのよｗ
飛鳥
お断りします
室町弥生
何でよっ
飛鳥
俺の恋人は、俺が会社を辞めたくらいで幻滅するような器の小さい人じゃないですので
飛鳥
それに俺があなたを好きになることは今後一生ありませんよ
飛鳥
だって俺、ゲイなんで
室町弥生
へっ？
室町弥生
げ、げい…？
飛鳥
はい
室町弥生
男の人が好き…ってこと？
飛鳥
はい
室町弥生
ウソよ！
室町弥生
だって…だって、そう、そうよ
室町弥生
恋人と結婚の約束をしてるって言ってたじゃない！
室町弥生
同性同士で結婚なんて出来るわけない！
飛鳥
確かに国内では同性同士の結婚はまだ認められてませんけど
飛鳥
海外では同性婚が認められている国はいくつかありますからね
飛鳥
お互いの仕事が落ち着いたら海外移住して結婚しようねって話をしていたんですよ
室町弥生
そ、そんな…
飛鳥
今回の退職のことを恋人に言ったら、
飛鳥
「じゃあ予定を早めて今年中に海外移住しちゃおうか」
飛鳥
なんて言ってくれましたよ
飛鳥
俺は早く結婚したかったから、すごく嬉しかったなぁ
飛鳥
こういうのを不幸中の幸いっていうのかな？
飛鳥
ある意味、室町さんのお陰ですね
飛鳥
ありがとうございます
室町弥生
そんな…そんな…
室町弥生
いやあああああ！
~数時間後~
室町
弥生！
室町
お前というヤツは何てことをしでかしてくれたんだ！
室町弥生
パパ？
室町
さっきＡＡ商事さんから電話があったんだが…
室町弥生
ＡＡ商事？
室町弥生
それってウチの取引先よね？
室町弥生
確か新進気鋭の急成長を遂げているお得意さん…
室町弥生
それがどうしたの？
室町
そこの社長からお叱りの電話をいただいたんだ！
室町弥生
えっ、どうして？
室町
どうやら昨日退職した社員がＡＡ商事の社長の恋人だったらしい
室町
「おたくのお嬢さんがウチの恋人に横恋慕して…」
室町
「それだけならまだしも事実無根の噂を流して困らせていたそうだな」
室町
と、恋人の受けた仕打ちにおかんむりでな
室町
「おたくの娘さんはもういい大人だったと記憶しているが」
室町
「そんな娘の躾もロクに出来ない人間が経営する会社とこれからもお付き合いするのは不安だ」
室町
「一旦契約を解除し、今後の付き合いを考え直させて欲しい」
室町
と、言われてしまったよ…
室町
おかげでウチは大損害だ！
室町弥生
そ、そんな、そんなこと言われても…
室町弥生
そんなの、私のせいじゃないわ…
室町
はぁ…反省の色もなしか、このバカ娘め
室町弥生
だって私、悪いことなんてしてないもの！
室町弥生
私はただ好きな人を振り向かせようとしただけよ！
室町
それにしても、やり方というものがあるだろうが！
室町
相手の悪い噂を流して追い詰めようとするのはどう考えても悪いことだろう
室町
なんでそんなことも分からないんだ…
室町弥生
でも、それは、だって…
室町
だが、やってしまったことは仕方ない
室町弥生
そ、そうよね！
室町弥生
誰にだって失敗はあるわ！
室町
弥生、明日一緒にＡＡ商事さんに謝りに行くぞ
室町弥生
えっ？
室町
土下座をしてでも、今回の非礼を詫びるんだ
室町
契約解除だけは何としてでも回避しなければ…
室町弥生
何で私がそんなことしなきゃいけないの
室町弥生
社長はパパでしょ？
室町弥生
パパが一人で行けばいいじゃない！
室町
いや、ダメだ
室町
お前には社長の娘という自覚があまりに欠けている
室町
自分の行動ひとつで簡単に会社がダメになってしまうんだということを、
室町
これを機に学んでもらわなくてはいかん
室町弥生
そんなぁ…
室町
それと今度の日曜は空けておけ
室町弥生
えっ？ 何で？
室町
俺の知り合いの息子と見合いをさせる
室町
野放しにしていたら、またいつこんな問題を起こすかと不安でいかんからな
室町
見合い結婚でもさせれば少しは落ち着きも出るだろう
室町弥生
で、でも確かパパの知り合いの息子さんって、みんな４０代前後じゃ…
室町
あぁ、だが立派な仕事をしているしっかりとした人たちばかりだ
室町
お前の結婚相手にはこれ以上の人はいないだろう
室町弥生
嫌よ、イヤイヤ
室町弥生
私は若くて背が高いケメンと結婚するんだから～！
室町弥生
好きでもないオッサンとの結婚なんて絶対イヤ～！
~後日談~
飛鳥
その後室町さんは社長によって強制的にお見合い・婚約をさせたられたそうです
飛鳥
相手は涼しげな頭のちょっとぽっちゃりした年上男性だそうで、
飛鳥
桃山曰く、室町さんは「なんで私がこんな男と！」と毎日喚いているとか
飛鳥
俺はというと恋人と一緒に海外に移住、
飛鳥
結婚して今は幸せにくらしています
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
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