拝啓、神様へ
今日も死ねませんでした
私の明日は いつ来なくなるでしょうか
忌々しく、めくるめく毎日に 終止符が打たれるのは何時ですか
静かな夜道 自分の靴の擦れる音を聞きながら
その事だけが頭の中を 彷徨い続ける
終電すらも走らない 静まり返った夜道は
街すらも眠ってしまったみたいだ
帰路に足音を刺して 街灯の暗さが眩しい
光に誘われて集る虫が バカみたいに羽音を鳴らす
その街灯の下に腰掛けて 何もない空間を凝視した
私
私
虐められている訳ではない
親に愛されない訳でもない
何でも言える友人だっているよ
人並みに幸せな人生は送ってる
そう思ってるよ
でもさぁ
私
私
私
私
私
あの時付けられた傷は とっくに消えてしまったのに
心の傷だけは今もジュクジュクと 果実が熟れるように膿んだまま
未だ死にたくなる自分に 嫌気が刺す
自分なんて大嫌いで
どうしようもなくて
私
弱々しく呟いた声が 細い小道に響いていた
やよい
私
急な親友からの電話
慌てているのが 受話器越しに伝わる
やよい
やよい
私
やよい
やよい
私
やよい
私
私
私
私
私
やよい
やよい
やよい
私
私
やよい
私
私
言った 言ってしまった
その勢いで電話も切ってしまった
彼女の優しさが痛くて 居心地が良すぎて
自分が汚すぎて 彼女が綺麗すぎて
こんな会話のあとも 彼女を疑ってしまうのが怖くて
ごめんね、と心の中で何度も謝る
自分の声じゃないと 気持ちは伝わらないのに
そんなこと頭では 分かりきってるのに
私
独りぼっちの夜 狭い小道で泣きじゃくった
泣いて許されることでもない
ねぇ、ごめん
死んでお詫びするから、さぁ…
私
そっか、そうだ
そうだよね
自分の為に いつまでも死ねないのなら
他人の為に 今すぐ死んでやろうじゃないか
大嫌いな自分を 辞められるチャンスだ
そして、他人を傷つけた咎めだ
合法的に気持ち良く死ねる
歪んだ情を持って さっきまでいた橋に向かう
これで死ねるんなら、私は幸せ。
そう思ったのも一瞬
手すりに乗って川を背に
即席で書いた小さな遺書を手に
私は後ろに倒れた
未練など欠片も無かった
何もないからこそ 壊したかった
私のこの 未完成な人生を
拝啓、神様へ
今日、やっと死ねたんです
明日も明後日も来週も来月もない
明日も分からないくせに 数十年後を夢見ていたことが 馬鹿らしいです
あれ、じゃあ私は これから何ができるんですか?
過去を、振り返ることしか できないんですか?
そんなの、それなら あと、少しだけ
私
コメント
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もっと生きたいと願った人がいる世界なんだよ。その人の分まで生きようと思ってよ。 って綺麗事を投げかけることもできるけど、でも彼女が必要としてるのはそういう言葉じゃないんだろうなって思った 最後、友達がどんな言葉をかければよかったのか、私にもわからないけど、そんな人が近くにいたら救ってあげたいな 深いお話でした!
やってから後悔する方がいいとよく言われますが、これはその常識をひっくり返していて面白かったし、考えさせられました!
嫌いでないのに嫌いと言ってしまい、苦しみが重なって、その苦しみも「死」で解放された なのに最後は生きたいなんて、心のどこかの矛盾が、本当の苦しみだったのかもしれませんね…