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僕はまだ生きている。
死に損なったと言うべきか、
死にかけたと言うべきか、
ビミョーなところだけど、とりあえず
自分の身に何が起こっているのか、ゆっくり考えてみる。
テストの傾向と対策を練るのが得意な僕は、
事の発端を分析するのは割とすきだ。
まぶたが重い。体も重い。
規則正しい機械音と、独特の薬品臭がする。
多分ここは、病院のベットの上だろう。
今のところ、僕へのいじめを苦に自殺未遂した
中学生ということになっているはず。
学校や近所ではそれなりに騒ぎになっているだろうか。
でも、この程度の事件では最近のワイドショーでは
とりあげてもらえないだろう。
ああ、またかと鼻で笑われて、
右から左受け流されて忘れらるのがオチだ。
全国紙は無理でも、地元新聞くらいなら載せてもらえるかな。
そしたら、気の利いた誰かがSNSで
拡散してくれるかもしれない。
僕の小学校の頃の卒業アルバムの
個人写真なんかを貼り付けて。
扉の開く音がした。
誰かが部屋に入ってくる。
ゆっくりとした動作で近づき、僕の右側で止まった。
顔にチクチクしたものが当たって
その人の正体に気付いた。
黒くて、長くて真っ直ぐで人形のような髪の毛。
やっぱり君か。
喉元まで出かかったのに、僕の口は動かない。
きみ
君が呟いた。
【害虫】 人の生活に直接または間接に 害を与える昆虫
その言葉の本当の意味を
君はまだ知らない。