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少し昔の話をしてあげるね
あれは僕が5歳くらいの時かな
両親とキャンプに行っていてね 夕飯を食べた後だった
僕はテントの近くにあった 大きな森に興味をもったんだよ
でも両親は 「危ないから近づくな」 って
何度も何度も注意されていてね
最初は遠くから見たり おもちゃで遊んだりしてた
でもやっぱり気になるんだよ
それで両親が眠った後 こっそりテントを抜け出してね
森の入り口に行ったんだよ
始めは森に入るつもりはなかったんだ
でもなんだかワクワクしてきてね
少しだけならって入っちゃったんだよ
森の中は本当に楽しくてね
見たことのない虫や 綺麗な星が沢山あって
もう夢中だったよ
でも、やっぱり寂しくてね 両親を呼ぼうと振り返ったんだ
そしたら結構歩いてたんだろうね もうどこだか分からなくて
それで急に泣きたくなったんだ
そしたらどこからか 綺麗な音が聞こえてね
それで引き寄せられるように 音のする方へ行くとね
大きな木の上に 黒い影がいたんだよ
黒い影は僕に気づいたみたいでね
木から降りて話しかけてきたんだ
そう言うと黒い影は 静かに歌い出したんだよ
まるで森全体が一緒に歌っているようだった
その歌を聴いていると なんだか眠くなってきてね
気づいたら
朝になっていたんだよ
しかもテントの前で寝ててね
両親もテントから顔を出したら 息子が眠ってたから ビックリしててさ
結構怒られたっけ
帰るときにあの森をみたらさ 黒い影が手を振っててね
「きっとあの影が助けてくれたんだ」
そう思ったよ
その後どうなったかって?
僕は就職した後 またあの森に行ったよ
でももう森は無くなっててね
残っていたのは あの影がいた大きな木だけだった
僕が影とあった後 ここら辺で住宅地の建設があってね
そのときに 壊されたんだよ
でも結局は中止になってね
影もきっと悲しんでるだろうね
その時僕はなにもしてあげられなくて 申し訳ないと思ったんだ
だからってわけじゃないけど ぼくは毎日あの歌を歌ってるんだ
黒い影みたいに上手くはないけど
森の、影の美しさを伝えるために