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放課後の空は、さっきまでの激しい雨が嘘のように晴れ渡っていた。
湿った空気と、窓から差し込む少し強い夕日。
僕は吸い寄せられるように、旧校舎ではなく、あの "始まりの場所" である音楽室へと足を運んでいた。
ドアを開けると、ピアノの前に座るユンギ先輩の背中があった。
でも、今日は音を奏でていない。ただ、静かに鍵盤を見つめている。
Hobi
Suga
振り返った先輩の瞳は、昨日の嵐のような独占欲が嘘みたいに、穏やかで、少しだけ寂しそうだった。
Suga
僕はゆっくりと歩み寄り、先輩の隣に座った。
狭い椅子の上。昨日の "壁ドン" を思い出して、僕は無意識に体を強張らせる。
Hobi
Suga
先輩がふっと自嘲気味に笑って、僕の方へ体を向けた。
先輩の顔が近づいてくる。 逃げなきゃいけないのに、体が動かない。
気づけば、僕たちの距離はあと10センチというところまで縮まっていた。
吐息が触れそうな距離。
先輩の冷たい香水の匂いと、雨上がりの土の匂いが混ざり合って、僕の頭を麻痺させる。
Suga
先輩の低い声が、直接脳を揺らす。 "境界線" を越えて、もっと近づきたいのか。
それとも、このまま "先輩と後輩" として留まるのか。
先輩の真っ直ぐな瞳は、僕の答えを待っていた。
Hobi
答えようとして動いた僕の唇が、先輩の呼気に触れる。
あと数センチ、僕が勇気を出せば、この境界線は跡形もなく消えてしまうだろう。
10センチの距離に残された熱が、僕たちの沈黙を甘く、そして残酷に支配していた。