賭ケグルイ 藍

翔太とこのやりとりをしたのが、 今日、11月2日の昼休み

言われた通り冬真も誘って、 駅から住宅街を地図通りに進んで、 一つの家の前まで辿り着いた

表札には、「天宮」の文字

ピンポーン……

チャイムが鳴って少しして、 家の中から翔太が出てきた

翔太に促されて、 天宮家に足を踏み入れる

家に入って、リビングまで通された

まぁ、たしかに翔太の言う通りだけど

そう言って、キッチンに 駆け込んでいった翔太

普段しないことって、一体何だろう？

少しして、翔太が戻ってくる

……って、あの手に持ってるの、 もしかしてたこ焼き？

おお、これまたすごいものを……

へぇ、中々に面白そうだ

3人で机を囲うように座って、 真ん中にはたこ焼きとトランプを置く

2人とも賛成してくれて、 早速カードを配る

元から揃ってるカードを捨てて、 ジャンケンで勝った冬真から ゲームスタート

本当に素で言ったのか、 騙す為に言ってるのかわからない

でも、騙すメリットもデメリットも、 ババ抜きならあんまりない気がする

そのまま順調に進んでいって、 何回目かの翔太の番になった

今は、俺と冬真が2枚で、翔太が1枚

俺はジョーカーを持ってなくて、 翔太もこの様子だし、 ババを持ってるのは、多分冬真

だから、2分の1の確率で、 翔太が一抜けする

そう言いながら、俺から見て右側の カードを抜き取った

これで、俺と冬真の一騎打ちだ

あの最初の反応は、 ただのオーバーリアクションだった

こうなると、ほぼ運勝負

少し悩んで、俺から見て左を選んだ

中身は……

俺が選んだのはジョーカー

次は冬真が引く番

ババがどちらか読まれないように、 後ろ手でしっかりと手札を混ぜた

そう言って冬真が引いたのは……

冬真の運が、俺の運を上回ってた

負けた人には、罰ゲームの ロシアンたこ焼きが待ってる

翔太にもらった爪楊枝で、 真ん中のたこ焼きを刺す

それから、自分の口まで持っていった

な、なんだ、これ……！？

両手で口を押さえて、 突然来た痛みに悶える

心配してくれてる冬真とは反対に、 何故か楽しそうな翔太

翔太に水をもらって、 何とか落ち着いた

あんなに辛い物は初めて食べたから、 舌が慣れない……

にしても今日は、ことごとく 運が悪いなぁ……

まだ少し舌がヒリヒリするし、 それはありがたいかも

2人でキッチンに行って、 俺はリビングに取り残される

もらった水を飲みながら、 2人のことを待つ

パチッ

突然、周囲が真っ暗になった

もしかして、停電……？

声のした方を向くと、 冬真と翔太のいるところだけ、 ぼんやりと明かりが灯っていた

2人で声を揃えて言われて、 ようやく明かりの正体に気がつく

2人が持ってきたケーキに刺された、 色とりどりの5本の蝋燭

まさか、ここまで祝って もらえるとは思わなかった

翔太に促されて、蝋燭の火に、 ふぅ、と息を吹きかける

全て消えた直後、 2人が拍手をしてくれた

電気を付け直して、部屋が明るくなる

じゃあ、あの送られてきた地図も、 全部これの為に？

早く帰らないといけないって 言ってたのも、このための準備で……

もう一度、2人に感謝の言葉を伝えた