そこは山小屋だった。
キャンプ場にあるバンガローもかなり古びているけど、それに輪をかけて古かった。
山小屋の前には、木製のテーブルとイスが置いてあるけど、これもキャンプギア系の機能性のあるデザインではなく、木の板を釘でくっつけて取りあえず使えるようにしただけのシンプルな物だった。
パースク
ユウゴ
闊歩
振り返ると、いつの間にかアルクのおばあさんが、ぼくの背後に立っていた。
ユウゴ
闊歩
闊歩
パースク
パースク
闊歩
相手にすすめられたイスを断るのも、それはそれで失礼な気もするけど。
闊歩
ユウゴ
また顔に出ていたみたいだ。
このおばあさんは特に鋭いから、気をつけないとな。
アルクのおばあさんはテーブルの前に立つと、右手を軽く下に向けた。
足元の土が盛り上がってイスの形になる。
さらに綿のような植物が次々と芽吹いて表面を埋め尽くし、あっという間にひとりがけのソファがあらわれた。
パースク
闊歩
パースク
闊歩
ぼくの頭を飛びこえて、男の人とおばあさんで会話が始まってしまった。
何か魔法がらみの高度な話をしているのだろうとは思うけど。
パースク
パースク
男の人が先にイスに座り、ぼくにも座るようにうながした。
おばあさんも自分で作った土のソファにもう座っている。
ユウゴ
ユウゴ
で、いいのかな。
男の人とおばあさんの顔を交互に見ながら、ゆっくりとイスに腰かけた。
おばあさんが言っていたように、足の長さが違って少しグラグラしている。
パースク
闊歩
おばあさんが手を地面に向けると、イスのグラつきが無くなった。
短い足の下の土をわずかに盛り上げて、座面が平らになるように調整してくれたんだ。
ユウゴ
闊歩
ユウゴ
一言話すだけでも怖い。
さっきはインターホン越しで声だけだったから、まだ平気だったけど。
パースク
ぼく達3人が席についたのを確認し、男の人が話を切り出した。
闊歩
パースク
おばあさんにピシャリと言われて、男の人はぼくに向き直った。
パースク
パースク
男の人が深々と頭を下げる。
ユウゴ
パースク
パースク
顔を上げて話を続ける。
パースク
ユウゴ
むしろ、この話を聞くためにここまで来たんだ。
断る理由は一切ない。
パースク
本名ではなく魔法使いとしての名前だと付け加える。
さっきパークスさんが、おばあさんをマダム・イレと呼んだのも、同じく魔法使いとしての名前だ。
パースク
ユウゴ
ユウゴ
パースク
魔法研究会か。
シシロウ達と1度だけ見学に行ったことがあったな。
パースク
ユウゴ
パースク
パースク
パースク
パースク
ユウゴ
闊歩
おばあさんが厳しい口調で割り込んできた。
闊歩
闊歩
パースク
パースク
闊歩
ユウゴ
闊歩
無意識に右手で左肩の傷を撫でていた。
魔力痕は傷をつけた魔物が近くにいると、共鳴痛という独特の痛みを感じる。
今も痛みを感じるけどかなり弱い。
パークスさんがつれている黒い犬がさっき体を大きくした時、この傷の痛みが大きくなった。
パースク
パースク
ユウゴ
パースク
ユウゴ
パースク
パースク
ユウゴ
パースク
パースク
パースク
その例えは、わかるようなわからないような。
パースク
パースク
闊歩
パースク
闊歩
さっきからパークスさんとおばあさんはバチバチで、どちらもゆずらずに相容れない。
パークスさんの服は、ロングコートもデニムパンツも帽子もボロボロ。
それはただ古いからではなく、引っかき傷や咬み傷が無数にあるからだ。
黒い犬(魔物)がつけたものなのだろう。
でも、ここまで話を聞いて大体の中身は理解できた。
パークスさんはこの山小屋で魔物である黒い犬と生活を共にして、使い魔にできるか研究をしていた。
研究を始めたばかりの頃の黒い犬は、まだパークスさんになついてはおらず、人にもなれていなかった。
魔法使いのパークスさんだけなら、黒い犬に襲われても自力で対処することが出来たから、服がぼろぼろになるだけですんでいた。
それが5年前、道に迷ったぼくが山小屋の近くまでやって来た。
いくら襲っても平気でいるパークスさんを相手にするのに不満をいだいていた黒い犬は、近くに他の人間の気配を感じて襲いかかった。
すぐに気づいたパークスさんが黒い犬を止めたことで、ぼくは一命をとりとめた。
つまり、ぼくが魔法使いになったのは、パークスさんのおかげであり、パークスさんのせいでもある。
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