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ユウゴ
左肩の魔力痕が、また痛みだした。
共鳴痛が強くなったのだ。
思わず左肩をおさえて、うずくまる。
闊歩
パースク
おばあさんとパークスさんがぼくを呼ぶ声が聞こえる。
左肩の痛みが、肺や心臓にまで届いているようで、苦しくて返事ができない。
闊歩
パースク
闊歩
闊歩
おばあさんが立ち上がり、パークスさんの足元で丸くなっている黒い犬を指差す。
その態度に刺激されたのか、黒い犬も立ち上がり唸り声をあげた。
パースク
パークスさんが指示を出すが、黒い犬は無視して前に歩き出した。
闊歩
闊歩
闊歩
パースク
パースク
闊歩
おばあさんとパークスさんの視線が、ぼくにそそがれる。
痛い。
何も考えられない。
この痛みの原因は黒い犬のせいなのか。
黒い犬がいなくなれば、この痛みから解放されるのか?
ドクン……ドクン……
痛みにシンクロするように、鼓動が大きくなっていく。
黒い犬が雄叫びを上げると同時に、体が2倍にも3倍にも大きくなった。
その姿は、5年前にぼくが襲われた魔物そのものだ。
ユウゴ
恐怖と激痛がピークに達し、左腕が肩から指先までしびれて動かなくなった。
傷を中心に、黒い煙があふれ出る。
ぼくを中心に、魔物だけでなく、テーブルやイスが吹き飛んだ。
パースク
パークスさんやおばあさんも、数メートルほど吹き飛ばされたけど、持ちこたえて立っている。
闊歩
おばあさんが構えると、周囲の土が数個の球体となって浮き上がった。
パースク
闊歩
パースク
パークスさんが両手を前に出すと、長い木の杖があらわれた。
5年前、朦朧として薄れゆく視界の中でみたシルエット。
あの時もこうして、本性を解放した黒い犬を止めたんだ。
黒い犬が雄叫びを上げながら牙をむく。
パースク
杖を向けて魔法を放った。
黒い犬に直撃したが、無傷。
パースク
闊歩
おばあさんが土で作った10個近い球体を、全部一度に黒い犬に向けて放った。
1つ目は黒い犬の横っ腹に直撃。
それで驚異ととったのか、2つ目以降は紙一重でかわされ、地面や木々にぶつかって砕け、土に戻った。
闊歩
パースク
闊歩
軽口を叩いているけど、2人の表情に余裕はない。
黒い犬は、2人の熟練の魔法使いでも、手におえないくらいの強敵になってしまったのか。
ユウゴ
力になれないかと、動く右腕を前に出す。
いつの間にか、右手に魔法具《マギアツール》のピストルがあらわれていた。
これが当たれば、黒い犬を止められるかもしれない。
黒い犬がぼくの闘志に気づいて、体をこちらに向けた。
視界が黒い犬の巨体で埋められる。
もう他に何も見えず、パークスさんの声も、おばあさんの声も聞こえない。
ぼくは何をすればよかったんだっけ?
ぼくは何を知りたかったんだっけ?
ぼくは何をしたくてここに来たんだっけ?
ユウゴ
今はただ左肩の激痛から解放されたい。
向かってくる黒い犬に対して、引き金を引いた。
弾が当たった黒い犬は、巨大な熊のような魔物から、元の大型犬くらいのサイズに戻って倒れた。
ピストルを撃ち終えたぼくも全身から力が抜けて、その場で崩れ落ちた。
横たわるぼくの元へ、おばあさんが近づいてくる。
ユウゴ
闊歩
ユウゴ
立ち上がろうにも、指先にすら力が入らない。
闊歩
おばあさんはぼくを放置して、黒い犬を介抱しているパークスさんの方に歩いていった。
ちょっとひどいと思う。
けど、アルクの血縁者だしな。
ユウゴ
闊歩
闊歩
パースク
パースク
闊歩
おばあさんが疑問の声を投げかける。
パースク
ユウゴ
気がつけば左肩の痛みは完全に消えている。
黒い煙もなくなり、左腕のしびれも引いていた。
パースク
パークスさんが黒い犬の頭を撫でると、
と気持ち良さげな寝息を立てた。
ユウゴ
それどころか自分が何をしたのかも、よく覚えていない。
パースク
闊歩
おばあさんは相変わらず厳しい。
全身から力が抜けて動けないのに、さらに力が抜けた気がした。