TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

あれをきっかけとして、私と千切くんは会えば言葉を交わす中になった

引っ込み思案な私とは、恐らく違う世界にいる

自分に自信がある

それにいつしか、私は憧憬を覚えていた

憂鬱だった学校生活も、気がつけばこの放課後のおまけになっていた

……しかし

クロの暴走(?)は止まらなかった

時雨

(クロがいなーい!!)

時雨

(今日は雨)

時雨

(それなのに家に居ないのはどう考えてもおかしい……)

私は梅雨の雨の中、傘もささずに息を切らしていた

クロは賢い

だから雨が降る前に察知して家に戻ってくる

なのに家に居なかった

時雨

(猫は水が嫌いっていうし……)

時雨

(今度こそ本当に事故なんじゃ……)

嫌な想像が頭をよぎった

でもそんなことは無いと信じたい

時雨

(あの空き家にも居なかったし……)

時雨

(公園にも、魚やさんの近くにもいなかった)

もちろん、行き当たるところには全て行った

時雨

(どこかで千切くんと一緒にいたりするのかな)

あとはそれを願うことくらいしかすることがない

時雨

(ってことは、もしかしたら羅実の方にいるのかな)

そう思ったその時、ふと後ろから声がした

千切豹馬

時雨

時雨

千切くん!?

考えていたことが身に起こり、なんだか背筋が凍る

私はすぐさま千切くんの足元を確認した

時雨

(いないか……)

千切豹馬

お前、風邪引くぞ?

千切豹馬

なんで傘持ってねえの?

時雨

いや、ちょっといいかなって……

千切豹馬

何だよちょっとって笑

千切くんは笑いながら、私の頭の上に傘を傾けた

時雨

大丈夫だよ、私

千切豹馬

でも風邪引いたらアイツも困るだろ?

アイツというのは、きっとクロだ

千切豹馬

今日はセットじゃねえんだな

時雨

それがね、いなくなっちゃって……

時雨

探してたところなんだ

千切豹馬

こんな雨なのに、クロは何やってんだろうな

時雨

うん……

時雨

もしかしたら事故ってるかもだし……

私は不安に襲われながらも、落ち着いて話した

千切豹馬

だからこんな雨の中外にいるってわけか

千切豹馬

時雨も世話焼きだな

時雨

まあ怒られても家族だしね

千切豹馬

そんじゃ、探し行こうぜ

時雨

え?

時雨

いや、千切くんは帰りなよ

時雨

雨もそうだけど、風も強くなってきてるし

千切豹馬

それはお互い様だっつーの

千切豹馬

それに俺、帰っても暇なんだよ

時雨

部活お休みなの?

千切豹馬

休みっつーか、ミーティングだけだった

千切豹馬

フィールド濡れてるし

時雨

フィールド?

千切豹馬

俺サッカーやってんの

時雨

サッカー部だったんだ!

時雨

運動部だとは思ってたけど……

時雨

羅実って強い?

千切豹馬

おう、俺が全部ぶち抜く

時雨

ってことは、千切くんが攻める人?

千切豹馬

そう。俺がワントップのフォーメーションでやってる

そう話す千切くんは、なんだかいつもと違っていた

楽しそうというか、煌めく感じで

時雨

(サッカー、好きなんだな……)

そんな雑談を混じえながら、私達はクロを探した

時雨

いなかったね

千切豹馬

もしかしたらすれ違いで帰ったんじゃね?

数時間探したが、クロはいなかった

時雨

帰ってるといいんだけどなあ……

千切豹馬

アイツあんま死ななさそうだし、大丈夫

千切豹馬

そんな不安そうな顔すんなって

気がつけば雨は止んでいた

しかし、どこか鼻に残る雨の匂いが哀愁を漂わせる

時雨

探していますってポスター作ろうかな

千切豹馬

よく貼ってあるやつな

時雨

もしかしたら見つかるかもだよ

そう歩いているうちに、私の家の近くまで来た

その時

クロ

……

母親

あら、時雨じゃない

母親

どうしたのこんな遅くに

母親

しかもびしょびしょじゃない

時雨

お母さん……?

目の前に現れたのは、クロを抱えたお母さんだった

母親

見て!トリミングしてもらってきたのよ!

母親

ほら、フサフサでしょ?

クロ

……

時雨

……

全てを察した

千切豹馬

あれ時雨の親?

時雨

うん、お母さん

小声でそう会話する

千切豹馬

トリミングってことは……

時雨

……ごめんね、付き合わせて

千切豹馬

別に、俺が勝手に付いてきただけだし

千切くんも察してくれたらしい

時雨

ねえお母さん、なんでいるの?

母親

いるの?って、今日半日で帰ってこれたのよ〜

母親

クロのことは時雨に任せっきりだったし、お母さんも手伝おうと思って

時雨

(なら言っといて欲しい……)

私達の頑張りは何だったんだろう

母親

あら、隣の子は?

千切豹馬

初めまして

時雨

わ、私のお友達……

母親

あら、お友達なのね

母親

てっきり私時雨のか……

時雨

友達だから!!

時雨

じゃあね千切くんありがとう送ってくれて!

母親

ちょっと押さないでよ!

クロ

……

千切豹馬

おう、じゃあな

クロも困った猫だが

お母さんも随分困った人だった

この作品はいかがでしたか?

141

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚