テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

一覧ページ

LINE1200

第1話 - あ

2023年10月02日

#スカッと

タナカトシキ

サワコ

カヤ、今日のお弁当担当ってカヤだった？

カヤ

そうだよ！

カヤ

今日は早起きして、結構時間かけて頑張って作ったの

カヤ

彩りも意識して作ってみたし、結構いい感じじゃない？

サワコ

はぁ、すぐにそうやって調子に乗るんだから

サワコ

中身、焼きすぎですごいパサついてたわよ

カヤ

え？ウソ...？

サワコ

本当に、お弁当作り始めて何日たつの？

サワコ

もう1カ月でしょ

サワコ

もっと上達するために、こういうところを直そうとか...

サワコ

向上心持ってもっと頑張れないの？

カヤ

上手くいかないのはどうにかして直したいな、って思ってるけど...

カヤ

お母さん、なんでいつもそんなキツイ言い方するの？

カヤ

私だって、必死に頑張ってお弁当作ってるんだよ

カヤ

少しは褒めてくれてもいいじゃん

サワコ

褒めるところなんて、一切ないでしょ

カヤ

彩りはよくなってると思うでしょ！

カヤ

最初は、緑がないとか、赤がないとか...

カヤ

文句ばっかり言われてたけど、今日は上手に入れられてると思うよ？

サワコ

ママは、そうは思わないけどね

サワコ

サヲと比べたら、まだまだ全然よ

カヤ

またお姉ちゃんのことばっかり...

カヤ

そんなに、お姉ちゃんのことが好きなの？

カヤ

いつもお姉ちゃんのことばっかり褒めて、私のことは悪いところばかりしか見ないし...

カヤ

まずいわけじゃないでしょ？

サワコ

味はまあまあね

カヤ

まあまあって...

カヤ

いつも、そんなコメントばっかり

カヤ

お姉ちゃんは、小さなことにも気づいて褒めてくれるのに

カヤ

お母さんは、全然その気がないんだね

サワコ

その気がないわけじゃなくて、本当に率直な感想を言ってるだけ

サワコ

もっともっと練習して、私に「おいしいね」って言われるまで頑張ってみなさい

カヤ

お姉ちゃんは「おいしい」って言ってくれたもん

カヤ

だから、私は今日のお弁当は上手くできたと思ってるから

サワコ

サヲは優しいからよ

サワコ

カヤがそこまで上手じゃなくても、「おいしい」ってくれるのよ

カヤ

お母さんは、私に完璧を求めすぎなの

カヤ

そうじゃなくて、私がどう変化してきたのかを見てよ

サワコ

変化をみたとしても、1か月あればもう少しうまくなれるでしょ

サワコ

サヲはお弁当も、洗濯も、両立してできるようになるまで2週間くらいしかかからなかったわよ

サワコ

カヤは、今はお弁当づくりに精いっぱいで、

サワコ

洗濯ものはサヲに任せっぱなしじゃない

カヤ

任せっぱなしじゃないよ！

サワコ

私も朝時間がある時は洗濯ものとか、他の家事を手伝うけど、

サワコ

これからもっと忙しくなったら出張も増えてくるの

サワコ

そしたらカヤ、家事とお弁当、両立してできるの？

サワコ

お姉ちゃんに家のこと、全部任せちゃだめよ

カヤ

そんな風に言われてばっかりだと、やる気失くす

カヤ

私のお弁当に文句があるなら、もう自分で作るか、外で買って食べればいいじゃん

サワコ

本当に、頑固なんだから

サワコ

いつからそんなに文句言う子になったのかしら...

サワコ

ママだって仕事大変で、家に帰ってきたらできるだけリラックスしたいのに...

サワコ

帰る前にこんなにストレス溜まっちゃったら、もう気分最悪よ

カヤ

こっちだって、怒ってばっかりのお母さんと一緒にいるだけで疲れちゃう

サワコ

ああいえばこういうんだから...

サワコ

今日、帰るの遅くなるからサヲのこと手伝ってあげてね

カヤ

言われなくても、お姉ちゃんのお手伝いはするよ

カヤ

お母さんのお手伝いはあんまりやりたくないけど

サワコ

本当に...意地張ってもいいことないわよ

サワコ

じゃあね

~3日後～

サワコ

カヤ！

サワコ

ちょっと、何なの今日のお弁当の内容！

サワコ

おにぎりのみで、野菜がほとんどないじゃないの！

カヤ

冷凍食品の副菜のひじきが入れてあるじゃん

サワコ

それだけでしょ？

サワコ

それに、冷凍食品はあんまり入れないでね、って言ってるのに...

サワコ

また買い物で買ってきたのね...

サワコ

もう、カヤに買い物任せるのは、今度からやめるわ

カヤ

私だって副菜を手作りできるときは、手作りしてるじゃん

カヤ

今日は、部活の朝練があったからおにぎりを作るので精一杯だったの！

サワコ

サヲは自分が部活の大会が近くて忙しくても、テスト期間で忙しくても...

サワコ

しっかりバランス考えて作ってくれるじゃない

サワコ

カヤが困らないように、ほうれん草の副菜とか、冷凍庫に保存してくれてるでしょ？

サワコ

昨日で使い切っちゃったみたいだけど、朝の10分もあればそれくらいは作れるはずよ

カヤ

なんで、そこまでしてお姉ちゃんと比べたがるの？

カヤ

私はお姉ちゃんじゃないんだし、すぐに上達はできないんだよ

サワコ

上達できないんだったら、努力がまだまだ足りない、ってことでしょ

サワコ

自分の置かれている立場、しっかりわきまえなさい

サワコ

分かった！？

カヤ

なんでそこまで指図されないといけないの！？イヤだよ！

サワコ

カヤ！

カヤ

そんなに私のお弁当に不満なら、もうこれから私がお弁当当番の日は白飯かおにぎりにするから

カヤ

サラダとか、副菜がほしいなら自分で仕事前にコンビニで買えばいいでしょ

カヤ

だいたい、人に完璧を求めてたら、誰もついてきてもらえなくなるよ？

カヤ

そんなんで、本当に後輩社員のこと育てられてるの？

カヤ

どうせ、鬼上司とかって陰で言われてるんじゃない？

サワコ

上司なんだから、心を鬼にして接しないといけない時もあるでしょ

カヤ

私は、そうは思わないけど...

カヤ

そう思ってるのは、多分お母さんだけだよ

カヤ

そのうち、部下に何も信頼してもらえなくなる

サワコ

カヤがママの仕事に口出しするほど、偉くないでしょ

サワコ

第一、こっちの大変さも知らないで、そんなこと言わないでくれる？

サワコ

じゃあ、仕事戻るわね

～1週間後～

サヲ

お母さん、今週の金曜日だけど、

サヲ

仕事遅くなりそう？

サワコ

いつもよりは、早く帰れそうよ

サワコ

たぶん、7時30分くらいになるんじゃないかな...

サヲ

そっか！そしたら、ちょうどいいね

サヲ

お母さん、今週の金曜日誕生日でしょ

サヲ

カヤと料理用意して待ってるから、早く帰ってきてね

サヲ

2人で一緒に何つくるか相談して、お母さんのこと待ってるから

サワコ

カヤは「お誕生日おめでとう」なんてきっと言ってくれないわよ

サヲ

なに？まだケンカしてるの？

サヲ

早く仲直り、しちゃいなよ

サワコ

ケンカしたくて、こんな状況になってるんじゃないの

サワコ

どうせ、カヤは「また1つおばあさんに近づいたね」とか嫌味っぽく言うんでしょ

サワコ

想像ついちゃうわ

サヲ

そんなこと、カヤは言わないと思うけどな...

サワコ

一度ケンカしたら、なかなか態度は直らないもの

サワコ

悪い空気になるとしか思えないけど...サヲも誘ってくれてることだし...

サワコ

金曜日、空けておくね

サヲ

うん、今日もお仕事頑張って

～金曜日の6時30分～

サワコ

サヲ？

サワコ

仕事が早めに終わって、今家に帰ってきたんだけど、

サワコ

今どこに行ってるの？

サヲ

早かったね

サヲ

お母さんが帰ってくるまでに完成したから、

サヲ

時間があるうちに来週の食税の買い出しに2人で来てるの

サヲ

机の上見た？

サワコ

うん、見たわよ

サワコ

すごいわね～！

サワコ

ママの好きなミネストローネと、あと丸鳥のオーブンで焼いたものまで...

サワコ

すごい豪華だし、沢山作ってくれたのね

サワコ

サヲが中心になって進めてくれたの？

サヲ

ううん、違うよ

サヲ

全部ね、カヤが作ったの

サワコ

え？カヤがつくったの？

サヲ

そうだよ

サヲ

丸鳥も、サラダも、スープも...全部カヤが作ってくれた

サヲ

あの子、やっぱり頑固なところあってさ～

サヲ

「私が全部つくって、後片付けもするからお姉ちゃんは何もしないで！」って言ってきて...

サヲ

おかげで私、全然やることなくて暇だったんだよ

サワコ

でも、少しはサヲが手伝ったんでしょ？

サワコ

だって、こんなに上手にカヤが作れるはずないでしょ

サワコ

サヲも、そう思うでしょ？

サヲ

だから、私は見てただけなんだってば

サワコ

少し味見もしてみたけど...完全に、サヲがつくるミネストローネの味じゃない？

サワコ

野菜もちゃんと柔らかいし、到底カヤが作ったとは思えないんだけど...

サヲ

私がいつもお弁当を野菜も入れてバランスを考えて作れるのは、

サヲ

炊飯器調理をしてるからだよ

サワコ

え？炊飯器？

サヲ

そう！知らない？最近流行ってるやつ

サヲ

炊飯器に調味料とか、具材を入れて、炊飯ボタンを押せばできるレシピ

サワコ

え？今そんなものがあるの？

サヲ

お母さん、本当に流行に疎いよね～

サヲ

まあ、カヤも知らなったみたいだけど

サヲ

今日の料理、私がカヤに炊飯器で作れる料理を教えて、

サヲ

最短で全部準備できたんだよ

サワコ

え？これ全部炊飯器を使ったの？

サヲ

全部ではないけど、ほぼ全部かな…

サヲ

ケーキのスポンジと、スープの野菜を蒸すのと同時に、下にご飯を入れて炊飯して...

サヲ

工夫すれば、同時に2個、3個の料理を調理できるんだよ

サワコ

へえ～そんな便利な使い方があるのね

サヲ

私、お弁当作り始めた時からずっとこの方法で作ってきたんだよ

サワコ

そうだったの？

サヲ

そうだよ！もう、すごく便利で時間短縮できて最高だよ

サヲ

お米の上に、クッキングシートを敷いて、

サヲ

その上に蒸したい野菜とか乗せれば、カボチャとかじゃかいものとかすぐ柔らかくなるよ

サヲ

その間に、フライパンで卵焼きとかやけるし、

サヲ

何か茹でながら心配する必要ないから、卵焼きも焦げなかったし

サワコ

ママも早くその使い方知っていればよかったな～

サヲ

今からでも、遅くないでしょ

サヲ

カヤと一緒にご飯作って手伝ってあげられるじゃん

サヲ

カヤに何かアドバイスしてあげようかな、と思ってたけどあの子自分のやり方でやりたがるから、

サヲ

私から教えてなかったの

サヲ

でも、カヤから「どうしてそんなに効率よく作れるの？」って聞いてきたんだよ

サワコ

カヤが？信じられないけど...そんなの

サヲ

カヤのこと、もう少し信じてあげて

サヲ

あと、ミネストローネ余ったからお隣さんに分けてあげたの

サヲ

5歳の男の子、お母さんが前におすそ分けしてくれたのも飲んでくれたじゃん？

サヲ

「前のよりおいしいね！」って正直な感想言ってくれたよ

サワコ

え...私のより、カヤの作ったやつの方がおいしかったの？

サヲ

うん、みたいだね...

サヲ

お母さんさ、もう少しカヤの努力、認めてあげて

サヲ

私より家事は頑張ってると思うし、どうしたら美味しくできるか、学習してきてるからさ

サワコ

そうね...もう少し、信じてあげないとね...

サヲ

そしたら、カヤと今から帰るからもう少しだけ待っててね

サワコ

気を付けて帰ってくるのよ

～後日談～

カヤ

私とお姉ちゃんが家に帰ると、お母さんはお皿を出して待っていてくれました

カヤ

私が作ったチキンも、スープもケーキも、「全部美味しいね」と言いながら食べてくれて、

カヤ

すごく嬉しかったです

カヤ

また、私の作るお弁当にも、必ずいいとことを1つ挙げてくれるようになりました

カヤ

今は、お母さんのためにお弁当をつくるのが毎日、とても楽しみで仕方かないです

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

タナカトシキ

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

LINE1200

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説
一覧

関連するタグ

LINE1200

第1話 - あ

作者の他の作品すべて見る

#スカッとの新着小説一覧

関連するタグ

#スカッとの新着小説
一覧