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蘭side

らん

... ぁ、月見える、、

誰もいない放課後の教室で 私は頬杖をつきぼーっと 窓の外を眺めていた。

そういえば現国の授業で先生が 「中秋の名月が素晴らしかった」とか 「秋分の日を過ぎ、昼と夜の長さが入れ替わった」などと 言っていたのを思い出す。

制服も夏服と冬服の移行期間に入り 半袖から長袖へと変わっている。

らん

(変わらないのは私くらい、とか笑えないから ... )

窓に背を向け、 机に置きっぱなしだった スマホを開く。

新着通知はなく 代わりにスマホの隅にある ミニカレンダーと目があった。

夏休み明けに出品した コンクールの結果は もう間もなく発表される ことになっている。

らん

またいつもと同じかなー ......

自分の呟きに眉を顰め 私は机に突っ伏した。

らん

(なんかもう、頭ぐちゃぐちゃだよ、、)

夏休みの一件以来、威榴真とは 気まずい空気が漂うように なってしまっていた。

奈唯心くんと何かあったから 泣いたわけじゃない、 威榴真の迫力に驚いたからだ。

きちんとそう説明して 誤解は解けたと思っていたのに また新たな問いが飛んできた。

紫龍いるま

『じゃあ、乾に抱きしめられてたのは?あれはなんで?』

聞かれて改めて記憶を辿ったけれど 私にも理由らしい理由は 分からなかった。

もう1人の当事者である 奈唯心くんに聞かなければ 本当の理由は分からないだろう。

らん

(正直に答えたんだけどなぁ。
流石に奈唯心くんの名前は出せなかったけど、、)

それでは威榴真を納得させることは 出来ず、それ以来、なんとなく 態度がよそよそしかった。

らん

(こんなんじゃ、告白どころじゃないよぉ ... )

ちらっと視線を上げると 目の前には威榴真の机がある。

教室には自分以外いないのを 確認し、私は徐に席を立った。

らん

...... 威榴真、机にメモ取ってるし、、笑

見慣れた文字を指でなぞり 苦笑を零した。

みんなと同じ机 同じ椅子のはずなのに そこかしこに威榴真の気配が 残っているようだった。

らん

ちょっとくらいなら、いいかな ...

鼓動が速くなるのに 気づかないふりをしてゆっくりと 威榴真の椅子をひく。

少しだけだから、と言い訳しながら そのまま座り込んでしまった。

らん

やばい、変態みたい、、 ...

  

らんらん?何してるの?

出し抜けに声をかけられ私は 「わぁ!?」と悲鳴をあげて 席を立つ。

開けっ放しのドアの前に いたのは不幸中の幸いにも 机の持ち主ではなかった。

らん

す、澄絺?どうしたの、忘れ物?ってクラス違うじゃん、

すち

自主ツッコミお疲れ様 ~ 、笑

澄絺はふっと笑い 小さく敬礼してみせる。

こちらの動揺ぶりに 気付いているのかいないのか 普段通りの様子だ。

らん

(大丈夫かな、威榴真の席だってバレてないかな ... 、、?)

すち

それでらんらんは、威榴真ちゃんの席になんか用あるの ~ ?

あっさりと指摘され私は カーッと顔を赤く染めた。

あわあわと手を振り回しながら 「いや、あの、これは ... 」 と捲し立てる。

澄絺は「ふーん」と 興味なさそうに呟き どんどん近づいてくる。

すち

ちなみに俺は貸しっぱなしだった物取り来ただけ

すち

ちょっとごめん、

威榴真の机の中から取り出したのは 分厚い辞書だった。

付箋だらけで表紙もくたびれており 一目見てかなり使い込んで あるのが分かる。

らん

... 英和辞書?

すち

ん、ちょっとね

すち

特別に課題出てるんだ ~

らん

あれ、須智が?珍しいね

すち

ぁ、らんらんも赤点だったんだっけ?

すち

俺は先生に聞きたいところもあったからわざと。なんかごめんね ...

らん

うるさ、今にペラッペラになってやるから

すち

頑張れ ~ 笑

いつもの軽口の応酬に 私はほっと息をつく。

だが直後再び澄絺の口から 攻撃が飛んでくる。

すち

... で、らんらんは?

すち

告白予行練習、まだ本番いってないの?

らん

... そ、れは ... その ... 、

最初に告白のセッティングして くれたのは他でもない澄絺だ。

本番ではなく予行練習に 終わってしまってからも 「俺は話聞くだけだからね?」と 言いながら何かと相談に 乗ってくれている。

男子目線からアドバイスをくれる 貴重な相手でもあった。

らん

(公園の一件があってから、 威榴真と気まずくなっちゃってることは言えてないんだけど ... )

澄絺には 「コンクールの追い込みがあるから 告白予行練習が中断している」 としか伝えていなかった。

私が答えられずにいると澄絺は やれやれというように肩を竦めた。

らん

... 不甲斐なくて、ごめん、、

すち

別に?らんらんにはらんらんのタイミングがあるってことでしょ

すち

俺が応援してるんだから 早く玉砕してきて!とは流石に言えないしね 笑

らん

澄絺、それ笑えない ...

真面目に言っているのに 澄絺は遠慮なく笑ってみせる。

すち

... まぁ、俺も他人のこと 言えないんだけどね

威榴真の席に腰を下ろし澄絺が じっとこちらを見上げてくる。

珍しく自嘲気味な笑みを浮かべる 幼馴染に私は目を見開く。

らん

初耳っ!澄絺も好きな人、いるの!?

すち

... いたら悪い ~ ?

照れ隠しのようにぶっきらぼうに言う 澄絺に私は力の限り首を振る。

らん

そんなことない、応援するっ!

すち

即答だね、笑

そう言って笑う澄絺の顔は たった一瞬でもう吹っ切れた ものになっていた。

らん

(そっか、澄絺にも好きな人が ... )

美琴だったらいいのにとは思うけど それを自分が聞くのは躊躇われた。

だから相手が誰かを聞く代わりに もうひとつ気になってることを 問いかける。

らん

澄絺の方はなんで告白できないの?

すち

... ん ~ 、今撮ってるのが完成しないと、落ち着かないなって思って

幼馴染の直感で澄絺が 嘘をついているのは分かった。

嘘というより本当のことを 全て言っていないという感じだ。

らん

(言いたくないなら、仕方ないよね、)

私は先程の澄絺のように 「ふーん」とだけ相槌を打つ。

らん

それなら、澄絺も告白予行練習 やってみれば?

すち

...... え?

信じられないことを聞いたとでも 言いたげに澄絺の目が見開かれた。

その反応に言葉が足りなかったなと 思い、私は慌てて付け加える。

らん

ぁ、私が言ったのは、相手に告白してきたらってことじゃなくて ...

すち

あぁ、らんらんに?

相変わらず察しの良い 澄絺に助けられ、私は勢い良く頷く。

らん

そうっ!私も実際にやってみて思ったんだけど、練習とは言えすっごい緊張するの

らん

それで、相手に好きだって言ったあとは ...

あの時のことを思い出したのか 鼓動が騒がしくなった。

私はカーディガンの上から心臓に そっと触れじっとこちらを見ている 澄絺に笑いかける。

らん

今度は本当に告白しようって、 そう思うようになるよ( ニコッ

すち

... へぇ、いいじゃん

澄絺が蕩けるような笑顔を見せる。

誰かのことを想っての 優しい表情だった。

らん

(澄絺も、こんな表情するんだ ... 上手くいってほしいなぁ、)

たとえ相手が誰でも私は 応援しようと心に誓う。

もちろん美琴のことも応援しているが それとは別に純粋に澄絺の 想いが叶ってほしい。

恋愛感情はままならないものなのだと 改めて思い知る瞬間だった。

きみ宛ての2文字 __ 。

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コメント

3

ユーザー

はやくこくちゃえばいいのにって思うけど、そう言えないもんね いつまでもおうえんしです

ユーザー

桃桃…それまたちゃんと説明しないと勘違いされない…?((特にピンクと茈と黄色の人達

ユーザー
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