僕は宅配ロボット。
会社が請け負った荷物をお客様に運ぶことが僕の仕事。
…よし、次は…
…ああ、またあそこのお婆ちゃんの家か
一月に一度、他県に住んでる子供からの仕送りだな
ピンポーン…
…
反応無し…
いつもの通り不在通知を書き、チラシや新聞で溢れているポストにねじ込む。
…そういえばここ数日、この部屋から異臭がする気がするが…
…それは僕の仕事じゃない
これでも昔は僕、いや俺なりに
俺の仕事が誰かの助けになれば良い、という矜恃はあった。
おい!ズカズカ敷地内に入ってくるな!
ウイルスを持ち込む気か!!
え?宅配便?
ちょっと待っててくださいね…
ブシュブシュブシュ!!
…アルコール消毒完了!
はいサインね!お疲れ様!!
どいつもこいつも俺を人間扱いしようとしない。
…そうかよ、お前らがそんな態度を取るって言うのなら…
…俺、いや僕は人間を辞める
配達途中、孤独死しているかも知れないお婆さんの家を見つけたとしても
小さい子供のいる家庭から、叫び声やものが派手に倒れる音を聞いても
こんな都会で、およそアウトドア趣味の無さそうな色白もやしの独身男の家に、大振りの斧を届けることになっても
通報は僕の仕事じゃない
僕はもう何も見ない
何も感じない
僕はただの…
宅配ロボットなんだから