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主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作
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第102話『影が影である理由』
朝が来る前の、いちばん静かな時間。
カーテンの向こうで空が白み始めるより先に、部屋の隅に落ちた影が、ゆっくりと輪郭を持った。
床に映る自分の姿を、影はしばらく黙って見下ろしていた。
右腕は、相変わらずだ。
指先は輪郭が曖昧で、力を入れれば崩れてしまいそうなほど薄い。
らんの影
時間の感覚は、影にも分かる。
主が目を覚ます少し前。
意識と無意識の境目。
この時間帯だけが、唯一、長く姿を保てる。
影は、そっと右手を左腕で押さえた。
昨日より、また少し――薄くなっている。
らんの影
事実を確認するように、淡々と呟く。
原因は分かっている。
主が、思い出そうとしたから。
写真を見て、桜という言葉に触れて、胸の奥を揺らしたから。
それだけで、削られる。
らんの影
自嘲するように息を吐く。
生まれたときから、そうだ。
自分は、強固なものじゃない。
形を持っているようで、いつでも失われる。
――なぜ、自分は存在しているのか。
影は、初めてその問いを、はっきりと言葉にした。
答えなら、知っている。
ずっと前から。
らんの影
声にすると、胸の奥が、ひり、と痛んだ。
主が忘れてしまった時間。
名前を呼べなかった日々。
笑った理由も、泣いた理由も、置き去りにされたままの感情。
それらが、形を持たずに溜まり続け、ある日、耐えきれなくなって――
影として、生まれた。
らんの影
だから、消えるのは当然だ。
思い出された瞬間に、役目は終わる。
それが、正しい。
――正しい、はずだった。
影は、眠るらんへと視線を向ける。
布団の中で、主は静かに息をしている。
眉間には、わずかな皺。
夢の中でも、何かを探しているのだろうか。
らんの影
呼びかけても、返事はない。
分かっている。
この時間の主は、影の声を認識しない。
それでも、言葉は零れた。
らんの影
それは、確認だ。
誰かに言われなくても、知っている事実。
らんの影
影は、そう言い切ろうとした。
けれど。
喉の奥で、言葉が引っかかった。
――本当に?
問いが、浮かぶ。
影は、思い返す。
こさめの影と話したこと。
すちが料理をする姿を、遠くから眺めた朝。
いるまが、らんを気遣って声を低くする瞬間。
みことの、無邪気な笑顔。
自分は、覚えている。
主が忘れているそれらを。
そして――
らんの影
影は、気づいてしまった。
最初は、ただの観測者だった。
記憶の残骸。
再生されるべきデータの集合体。
感情なんて、持つはずがなかった。
なのに。
主が笑えば、胸が緩んだ。
主が苦しめば、痛んだ。
主が泣けば、理由も分からないまま、何かが締めつけられた。
らんの影
そうでなければ、困るから。
自分は、感情を持つべきじゃない。
持ってしまえば、消えることが怖くなる。
でも――
もう、遅かった。
影は、ゆっくりと己の胸に手を当てる。
そこに心臓はない。
鼓動もない。
それでも、確かに“ここ”に、何かがある。
らんの影
ぽつりと、呟く。
言った瞬間、右腕が、ずき、と疼いた。
輪郭が、さらに曖昧になる。
らんの影
小さく、笑う。
らんの影
当然だ。
自分は、本来“主の中”に戻るべきもの。
独立した存在として在ろうとすること自体が、矛盾なのだから。
それでも。
影は、膝をつき、眠る主のすぐ傍に座った。
顔を近づける。
息遣いを感じるほどに。
らんの影
誰に向けるでもない、告白。
らんの影
らんの影
主は、苦しんでいる。
影の存在そのものが、歪みの証だ。
らんの影
影は、そっと目を伏せた。
らんの影
初めて、はっきりと認めた。
消えるのが怖い。
この場所が、失われるのが怖い。
主の傍にいられなくなるのが、怖い。
それは、記憶の感情じゃない。
役割の反応でもない。
らんの影
影は、苦しそうに息を吐く。
らんの影
人じゃない。
生きていない。
未来もない。
なのに。
らんの影
問いは、誰にも届かない。
答えも、返らない。
部屋には、静寂だけが満ちている。
それでも。
影は、立ち上がった。
消えかけた右手を、胸元に押さえながら。
らんの影
小さな、けれど確かな声。
らんの影
主の記憶として。
主が取り戻すべきものとして。
でも同時に――
らんの影
それが、どれほど歪んだ選択か。
どれほど身勝手な覚悟か。
影自身が、一番よく分かっていた。
主がすべてを思い出す、その瞬間。
自分は、完全に消える。
それでも。
らんの影
影は、眠るらんを見下ろす。
らんの影
それは、願いだった。
そして、決して許されない、自己定義だった。
朝の光が、少しずつ部屋に差し込み始める。
影の輪郭が、淡く揺らいだ。
主が、目を覚ます時間だ。
らんの影
その声は、らんにも届かない。
影は、いつものように、静かに溶ける。
けれど――
その存在は、もう“役割”だけではなかった。
確かにそこにあった、ひとつの意志として。
第102話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡300
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コメント
2件
解説ありがとうございます! もし影が独立したら🌸くんの記憶はどうなるんだろう... 投稿ありがとうございます!!続き楽しみにしてます!!!