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屋上の戸がゆっくりと開く
夜は静かだった
音があるとすれば、風と
白衣の擦れる音だけだった
白衣がやけに白い
まるで光を集めてるみたいに
囚恋ナース
囚恋ナースの声は小さい
それでも届く
背中越しに軽い声
医院長
ゆっくりの振り向く
月明かりが横顔を照らす
影が深い
医院長
笑っている
けどその目は月よりも冷たい
囚恋ナースは一歩づつ近づく
月明かりが二人の影を重ねる
囚恋ナース
医院長は空を見る
丸い月
医院長
囚恋ナースは強く首を横に振る
囚恋ナース
…
月の光が医院長の瞳を淡く光らせる
医院長
低い声
囚恋ナースの胸が締め付けられる
囚恋ナース
即答
でもその声少し揺れている
医院長は目を伏せる
月の光が、睫毛の影を落とす
医院長
…
医院長
夜が静まりかえる
風が止む
囚恋ナースの視界が滲む
それでも、逃げない
囚恋ナース
囚恋ナース
月の下で真っ直ぐに
医院長が一歩近づく
囚恋ナースの手がほんの少し上に上がる
触れて欲しくて
でも止まる
医院長は自分の手を強く握る
医院長
低い声
医院長
囚恋ナースの手が宙で止まる
医院長
その言葉が1番優しくて1番残酷
医院長はまた背を向ける
月明かりに照らされた背中は
さっきより少し小さく見えた
医院長
医院長
屋上に影が二つ
でも距離はある
扉へ向かう足音
止まる
医院長は振り向かないまま言う
医院長
医院長
囚恋ナースは立ち尽くす
触れられなかった手をそっと胸に当てる
痛くない
こんなに苦しい
初めて知った
''殴られない愛''は
こんなにも切ない