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rara🎼
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 殺し屋パロ
rara🎼
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#19 静かなる分岐、観察者の苦悩
その日も、瑞は同じ椅子に座っていた。
無機質な部屋、均一な蛍光灯の光、冷たく整った空気。
時計の音さえ聞こえないほどの静けさが、彼の集中を邪魔することはなかった。
目の前には三台のモニターが並ぶ。
一つは赫、一つは桃、もう一つは――自分と共に育った男、茈。
その三人のデータを、瑞は無感情に、正確に整理し続けてきた。
しかし、先日の“離反”以降、瑞の中に沈んでいた感情の湖面に、小さな波紋が生まれ始めていた。
# 瑞
モニターには、桃の任務失敗の報告が表示されている。
理由は「対象不在」。
だが、瑞の記録ではその時間、標的は部屋にいた。
嘘だ。
桃は、あえて引き金を引かなかった。
事実だけを見れば、ただの任務未遂。
だが、茈が去った直後に、もう一人が命令から逸れたという“結果”は、瑞の冷静な頭脳にとって、あまりに異常だった。
# 瑞
瑞は椅子を離れ、棚から一冊の黒いファイルを取り出した。
それは、「旧六色時代の記録」――まだ6人が共に行動していた頃のレポート群だ。
ページをめくるたび、名前のないモブの標的、分析された任務、記録された成果。
そしてそこに記されていたのは、こうだった。
【茈:精神操作・説得型。観察対象:感情に揺れる対象者への最終判断者として機能】
【桃:精密射撃による即時処分要員。合理性に基づくが、情に流れやすい傾向あり】
【翠:観察記録者。対象者の死後記録と検証。戦闘には不向き】
【黈:情報封鎖および“裏処理”要員。組織の整合性を守る役割】
【赫:対人親和型処理要員。距離を詰めてからの処分を得意とする】
【瑞:状況全体の管理および記録。全体調整と再編成に適応】
そして、自身のページに赤い付箋がついていた。
“瑞は動かないことに価値がある” “動けば、均衡が壊れる”
# 瑞
ページを閉じ、ふと机の上の写真立てに目を向ける。
そこには若き日の自分と、もう一人の少年。
まだ“コードネーム”など持っていなかった頃の、普通の二人の笑顔。
# 瑞
声は静かだった。
けれど、そこに含まれるものは、紛れもない迷いと、苦しみ。
# 瑞
夜、こさめは人目を避けるように街へ出た。
行き先は、とある古書店の屋上。
廃業して久しい店の看板はすでに外され、誰も通らない階段の先に、赫は立っていた。
その姿を見つけたとき、瑞は無意識に言葉を落とす。
# 瑞
# 赫
返ってきた言葉は、柔らかいが芯があった。
赫の目は、瑞を試すような色で光っていた。
# 赫
# 瑞
# 赫
# 赫
しばらくの沈黙。
風が強く吹き、ふたりのフードを揺らす。
やがて、瑞は口を開いた。
# 瑞
# 瑞
# 瑞
# 赫
# 瑞
# 瑞
# 瑞
赫は静かに見つめ返す。
# 赫
# 瑞
# 瑞
それは、観察者からの離反ではなかった。
ただの“疑問”でもない。
変化を認めること。
それ自体が、瑞の革命だった。
赫は、言った。
# 赫
# 瑞
# 赫
少しだけ笑うように言って、赫は背を向けた。
# 赫
# 赫
返す言葉が、瑞にはなかった。
ただ、小さく頷いた。
夜の終わり、こさめは部屋に戻り、一つのファイルを作成した。
【分類:非公式行動記録】 【記録者:瑞】 【内容:赫と接触。思想の共有と、対組織行動への予備的関心】 【備考:観察者としての立場、保留。再検討中】
“自分自身”の再定義。
それは、どんな報告よりも、瑞にとって大きな一歩だった。
そしてそのログを、黈は別回線から解析していた。
# 黈
# 黈
翻訳ソフトの隅で、黈が記した言葉が静かに流れる。
“Even the silent ones start to tremble when truth is too loud.” 「沈黙する者さえ、真実が響けば震え出す」
その夜、六色のうち三つが、明確に命令から逸れた。
だが、まだ“戦い”は始まってもいない。
変化は、ゆっくりと、確かに広がっていく――。
#19・了
rara🎼
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡200
rara🎼
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