缶肉

ピンポーーーン

（5分後）

自転車を漕ぐこと1時間

（岩鳴山） 岩鳴山の名前の通り 岩山にあいた数多の穴に風が通り 不気味な音が鳴り響いている

約50年前 新型のウイルスが世界に蔓延し 人間はもとより 動物も多大な被害が出た そのウイルスの抗体をつくることができなかったのが豚である 豚はその7年後絶滅し さらにその8年後、約35年前 日本では豚肉に変わる肉が作られた 報道では人工肉と紹介され 豚肉よりビタミンが多く 癖になる味が人気を呼び 今では缶肉として世界各国で普及されている 涼真と陸が侵入しようとしているのは 人工肉の缶詰工場だ

（塀の中）

服についた土をはらいながら 周りを見渡す

二人の立っている所からは 工場の端が見えない

涼真は豚の写真を思い出し顔を顰めた

魔物は食えねーわ と鼻を鳴らす涼真に 陸は苦笑いを返した

壁に沿って歩いてみるが 見渡す限り壁が続いていて 入口らしきものは見あたらない

40分ほど歩いたところで 建物の端が見えてきた

建物の端はゲートのようになっていて その先にある建物と繋がっている

声が大きくなってきた涼真の口を 焦って手で塞ぎ 周りを警戒して見渡す

門を見上げた陸を 言い様のない不安が襲う

縋るように涼真の袖を掴むと それに気づいた涼真は 陸の頭に手を置いた

翌日

二人の間に 女子生徒が割り込む

周りに聞かれないよう 顔を近づけ

涼真にだけ聞こえるよう 囁くように告げる