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第1話 - あ

2023年11月21日

#恋愛

結城　真矢

サヤカ

今日の同窓会、ミナモもくるよね？

ミナモ

ごめん私ちょっと用事というか、やらなくちゃいけないことがあっていけないんです

サヤカ

えーそうなの？

サヤカ

今日、担任のニシコバが高校の時にみんなから預かった未来への手紙を配るらしいよ〜

サヤカ

未来への手紙

ミナモ

ああ、ありましたね、すごく懐かしい

サヤカ

だからきたほうがいいって！

サヤカ

それにアキヒロくんもくるよ

ミナモ

アキヒロさんですか、久しく見てないですね

サヤカ

でしょでしょ！アキヒロくんも会いたがってると思うよ〜！

ミナモ

うーん

ミナモ

ちょっと考えてみます

サヤカ

おっけー！

〜次の日〜

アキヒロ

今日ミナモのやつほんとにきたよw

サヤカ

私が声かけたおかげだかんね！w

サヤカ

それでどう？告白すんの？

アキヒロ

いやー正直高校の時通りめちゃくちゃ可愛かったら考えたけどさ

アキヒロ

今のミナモ、当時より幸がさらに薄くなってて流石にビビったわw

アキヒロ

顔は可愛いんだけどなんかこう、

アキヒロ

そそられないんだよな

アキヒロ

まだサヤカの方がいいわw胸あるし

サヤカ

ちょっと何その言い方w

サヤカ

私とアキヒロくんは絶対付き合わない約束でしょ〜

アキヒロ

そうでしたそうでしたw

サヤカ

お互いめんどくさい関係なしで男女の関係楽しみたいからっていいだしたのは

サヤカ

アキヒロくんだからね？

アキヒロ

でもそりゃそうだろ

アキヒロ

体を重ねたいだけなのに、やれ束縛だ思いやれだなんていいだしたらうんざりするだろ

サヤカ

それに私も納得してるから今の形になってるわけだけど？

アキヒロ

つまりセフレってやつだな

サヤカ

男女の関係っていってくれる？セフレなんてあまりにも下品じゃない

アキヒロ

一緒だろwどんなこだわりだよw

アキヒロ

てかそもそも

アキヒロ

ミナモ働いてないとかびっくりしたわ

サヤカ

働いてるって

サヤカ

コンビニのアルバイトだけどww

アキヒロ

俺たちもう24歳だぜ？もうそろそろ社会人３年目を迎えようとしてて、

アキヒロ

本格的に世界の大人の仲間入りって時期によ、

アキヒロ

高校生じゃあるまいし、コンビニのアルバイトってもうほぼ無職みたいなもんだろw

サヤカ

ちょっと言ってあげないでよ〜wあの子も頑張ってるんだから

サヤカ

それにそんなこと言ったら私は社会人経験もうすぐ７年目だから君なんてひよっこなんだけど？

アキヒロ

キャバクラはちょっと違うだろw

アキヒロ

お前大学１年からキャバクラで働いてるもんなwよく続いてるよw

サヤカ

いまじゃ系列店の中では一番クラス高いお店のナンバーですから

サヤカ

あなたの月収の数倍稼いでるのよ？

サヤカ

キャバ嬢をばかにしないでくださーい

アキヒロ

ごめんごめんwいや馬鹿にはしてないよ

アキヒロ

キャバ嬢はセンスとかが必要だし、それなりにどりょくもひつようじゃん

アキヒロ

誰でもできるような仕事じゃないと思ってるぜ

アキヒロ

でもコンビニバイトはもはやロボットでもできるじゃんなwwww

アキヒロ

なんであいつ働いてないんだよw

サヤカ

小説家目指してるらしいよなんか

アキヒロ

なにそれうけるw

アキヒロ

確かにあいつ昔付き合ってたときめちゃくちゃ本読んでたな

アキヒロ

まさか本が好きだから自分も小説家になりたーい、みたいな感じか？

アキヒロ

痛すぎw

サヤカ

ほんと24歳にもなってなにしてるんだろうねwいつまでこども気分なんだろうww

アキヒロ

付き合ってる時もあいつ小説書いてたんかな？

アキヒロ

もし高校の時から書いてたとしたらもう相当結果出てないことになるだろ？

アキヒロ

諦めきれないもんなのかねw

サヤカ

私昨日こっそりミナモの未来への手紙読んだんだけど、

サヤカ

必ず小説家になって人々を感動させる作品を世界に届けてください

サヤカ

みたいなこと書いてあったよwww

サヤカ

高校の頃から目指してるみたいw

アキヒロ

マジかよwwほんとに高校の時から書いてたんかい

アキヒロ

現実見せてやらないとまずいよな〜そろそろ

サヤカ

てかアキヒロくん出版社で働いてるんでしょ？

サヤカ

元彼氏のよしみで声かけてあげなよw

アキヒロ

やだよ、ただでさえ不景気な本業界で、

アキヒロ

駄作を印刷する無駄な金も紙も時間もないんだよw

サヤカ

なにそれめちゃくちゃひどいじゃんw

アキヒロ

いいかげん諦めて働いたほうが絶対いいよなw

サヤカ

それね、24歳でゆめをみ続けるのはちょっと痛いかな〜ww

〜タツジロウとのチャットルーム〜

タツジロウ

今日夜時間空いてる？ミナモちゃん

ミナモ

はい、私も実はタツジロウさんに話したいことがあったんです

タツジロウ

それじゃあ、９時にいつものところでいいかな？

ミナモ

はいよろしくお願いします

ミナモ

あ、そういえばタツジロウさん今日会計した時にチロルチョコ一つ持って行き忘れてましたよ

ミナモ

私預かってますので、あとでお渡ししますね

タツジロウ

ああそれは、ミナモちゃんへの差し入れだから食べていいよ

ミナモ

え？

タツジロウ

今日、いつもよりレジで暗い顔してたからさ

タツジロウ

何か疲れてるのかなとおもってね

タツジロウ

最近連勤も続いてるでしょ

ミナモ

まあ体力の方は全然大丈夫なんですけど、昨日の高校の同窓会のことで

タツジロウ

なんかいやなことでもあった？

ミナモ

実は元彼氏も出版社で働いてるんですよ

ミナモ

すぐそこの

ミナモ

タツジロウさんと同じ会社ですね

タツジロウ

ええ！それは初耳だな

ミナモ

同じ部署かどうかはわからないんですけど

ミナモ

それで、私今も性懲りなく小説家志望なので私のかいた原稿を渡そうと思ったんです

ミナモ

でも、小説を見せる前にいま何してるのって聞かれたので

ミナモ

コンビニでアルバイトをしてると伝えたら

ミナモ

その、すごく馬鹿にされまして

タツジロウ

それはひどい話だね

ミナモ

それからちょっと自信がなくなっちゃって

ミナモ

私って本当にこのまま小説を描き続けていてもいいのかなって心配になってしまって

タツジロウ

そんな人の言葉に動かされる必要はないよ

タツジロウ

実際今君は出版社の僕とこうしてやりとりしているじゃないか

タツジロウ

これは君がTwitterにあげた短編集を読んだ僕が感銘を受けて、僕から君に声をかけさせてもらったろ

タツジロウ

君の作品がこうして少しずつ君の夢を手繰り寄せているんだよ

タツジロウ

大丈夫、君の作品を全国の人がお金を払って読んでくれる時は来る

タツジロウ

絶対にね

ミナモ

ありがとうございます

ミナモ

そう言っていただけると励みになりますね

タツジロウ

僕びっくりしたんだから

タツジロウ

まさか声をかけさせてもらった作家さんが、いつも僕がお昼ご飯を買いに来る

タツジロウ

会社近くのコンビニの店員さんだったなんて

ミナモ

なんとなく出版社の近くでアルバイトしたらなにかしらチャンスがあるかもしれないなと思って、

ミナモ

下心満載であそこを選んだんですけどね笑

タツジロウ

全然下心とか感じたことないよ

タツジロウ

それどころか少しでもチャンスを拾おうとする謙虚な姿勢がもっと好印象に感じたよ

ミナモ

それはよかったです

タツジロウ

ちなみにその君を馬鹿にしているうちの出版社のやつの名前をおしえてもらってもいいかな？

ミナモ

えっと

ミナモ

コガネイ　アキヒロっていうんですけど

〜ミナモとアキヒロのチャットルーム〜

アキヒロ

やっほー

アキヒロ

昨日ぶりだね

ミナモ

どうもアキヒロくん

アキヒロ

昨日は言いすぎちゃってごめんね！w

アキヒロ

俺もお酒入ってちょっと熱くなっちゃってさw

アキヒロ

ちょっと色々いらないことも言いすぎちゃったかもしれん！

ミナモ

別に全然大丈夫ですよ

ミナモ

みなさん立派に会社に勤めてらっしゃるのに私はコンビニバイトなんてしてますからしょうがないです

アキヒロ

直接謝りたいからさ、今度二人でご飯行かない？

ミナモ

ご飯ですか？

アキヒロ

もちろんお金は出すしさ、こっちで予約とかもするから！

ミナモ

申し訳ございません

ミナモ

私、夜は家ですることがあるので厳しいです

ミナモ

謝罪とか本当必要ないですし、もう気にしていませんのでほんとアキヒロくんも気にしないでください

アキヒロ

そっかー

アキヒロ

ミナモ小説家になりたいんでしょ？

ミナモ

え？

アキヒロ

ヤラせてくれたら俺から上に話通してあげてもいいよ

アキヒロ

もう何年も書いて売れてないんだからさ、

アキヒロ

そろそろ身を売ってでも夢を叶えるぐらいしないとダメなんじゃないの？

アキヒロ

そういう努力も必要だと思うよ？

ミナモ

本当に結構ですので

ミナモ

失礼いたします

アキヒロ

なんだよお前！

アキヒロ

幸薄いくせに気高く気取ってんじゃねーよブス！

アキヒロ

一生こどもみたいに夢追いかけとけや！

〜次の日〜

タツジロウ

コガネイくん

タツジロウ

ちょっといいかな

アキヒロ

お疲れ様ですタツジロウさん

タツジロウ

最近仕事の調子はどうかね

アキヒロ

なんとかようやく仕事も板についてきて、これから何か新しいことをしてみようかなって感じですね

アキヒロ

タツジロウさんが親身になって教育してくれたおかげです

アキヒロ

いつもお世話になっております

タツジロウ

そうかそうか

タツジロウ

君はつい最近から作家採用枠を設けていたよね

タツジロウ

編集者が作家さんに対してどう接していくべきなのかは教えたよね

アキヒロ

はい、作家さんがいての我々ですので

アキヒロ

作家のケアからサポートまで、自分を捨ててでも支えてあげることが重要と教わりました

タツジロウ

そうだよね

タツジロウ

それじゃあこのメッセージはどういうことか説明してくれるかな？

ー写真を送信いたしましたー

アキヒロ

これは

アキヒロ

いったいどうしてタツジロウさんがこの写真を持っているんですか

タツジロウ

ミナモちゃんは私が担当している作家さんなんだよ

タツジロウ

君は知らなかったみたいだね

タツジロウ

まだ単行本の出版や賞の受賞はないものの、いい文を書くんだ

タツジロウ

Twitterでは既にフォロワー数が３０万人を超えていてね

タツジロウ

若い世代にはバカウケしてる子なんだよ

タツジロウ

書籍が出るのも時間の問題だと僕は思っている

アキヒロ

そうだったんですか

タツジロウ

ミナモちゃんが君の高校の同級生だと聞いた時はとても驚いたよ

タツジロウ

同窓会のことも全て彼女から聞かせてもらった

タツジロウ

君、自分で作家の人生を潰してなにがしたいんだい？

アキヒロ

申し訳ございませんでした

アキヒロ

お酒の席で少し余計なことを話してしまいました

タツジロウ

本当にお酒の席だからあんな発言をしてしまったのかな？

タツジロウ

僕にはそうは見えないな

タツジロウ

それにこの写真のトーク内容についてまだ君の口から説明を聞いていなかったね

タツジロウ

これはどういうことだい？

アキヒロ

これに関しては私も正直よくわからないと言いますか

タツジロウ

よくわからない？これは君が送ったんじゃないのか？

アキヒロ

いやそれが

タツジロウ

これは君が送ったの？送ってないの？

タツジロウ

はっきりしろよその辺

アキヒロ

申し訳ございません、送りました

タツジロウ

やらせてくれたら上に話を通してあげてもいいよ

タツジロウ

そろそろ身を売ってでも売れる努力をしたら？

タツジロウ

これが編集者から作家へかける言葉なのかい？

タツジロウ

どうなんだよ

アキヒロ

私のプロ意識が欠けていたかと思います

タツジロウ

悪いけど上に話がいくのは君だから

アキヒロ

へ？

タツジロウ

残念だけど、君には処分がくだることになるよ

アキヒロ

それだけはどうか

タツジロウ

無理だね、うちの一番大切な商品を貶したんだ

タツジロウ

編集者として、出版社に生きるものとして

タツジロウ

君はここにいる資格がない

アキヒロ

大変申し訳ございませんでした

〜後日談〜

ミナモ

私のTwitterに載せていた短編集をまとめたものが出版されることが決定しました

ミナモ

売上の見込みも立つということで、最初から大量に刷っていただき、

ミナモ

発売開始と同時に売り切れする店舗が続出

ミナモ

無事重版が決定いたしました

ミナモ

アキヒロさんはその後会社を辞めてしまったらしく、次に開かれた同窓会にも顔を見せませんでした

ミナモ

今では同級生に「いい歳して無職と言われてしまっているらしいです」

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結城　真矢

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