『猫の旋律』
僕は自分のピアノが嫌いだ
俺は彼のピアノが好きだ
弾き続けるのは/聞き続けるのは
多分、あの子が羨ましいから/また会ってみたいと思ったから
大きな会場、たくさんの人
一つのピアノ
静かな雰囲気と共にピアノを奏で出す
俺はピアノのコンクールに来ていた
自分の出番はもう少し後、緊張して練習もできない時
音が聞こえた
舞台から聞こえる柔らかなタッチ、ピアノの音
歌っているかのような自然と踊り出してしまいそうなリズム
舞台袖から見えた奏者の後ろ姿
あらゆる方向に跳ねた茶色い髪に少し曲がった背筋
座っててもわかる背の高さと椅子の間から見える長い脚
その奏者の体は踊っているようによく動き
曲の雰囲気によって動きが変わる
楽譜に少しアレンジを加えた自由な演奏、曲想もバラバラ
だけどここにいる全員が彼の演奏に取り込まれていく
俺は自分の練習も忘れて彼に見入っていた
彼の演奏に勝てるものはいない、そう思った
引き終わった後、舞台袖に帰ってきた男の子の目は蒼く、希望に満ちていた
名前の知らないあの子の演奏
俺は
『猫の旋律』
と名付けた
自分の番が来てもまだ夢見心地でコンクールでは最初の挨拶忘れたり
大失態を犯した
曲はしっかりこなしたけど
俺はあの日からずっとピアノを弾いている
学校でも音楽室を借りて、あの奏者の真似をしていた
もちろん出来るはずもなくて、変わらず好きな曲を弾いている
音楽室があるのは4階、人もそうそう来ないので俺も自由にピアノを弾く
あのコンクール後、あの奏者の姿は一回も見ていない
噂で聞いた彼あの子の名前は
「Broooock」
元々は中国で活動していたが親の転勤でこっちに引っ越してきたとか
シャークん
今日は何を弾こうか
久しぶりに彼のことを思い出したんだ
彼と出会ったあの曲を弾こう
交響曲第9番「新世界より」
俺が聞いた彼の最初で最後の演奏曲だ
息を吸ってゆっくりと吐く
…
演奏し終わると拍手が起きた
?
声がした方を向くと1番前の窓側の席に誰か座っていた
どこかで見覚えのある容姿をしていた
?
?
シャークん
どこかでみたことあるこの人は…
シャークん
そう聞くとわかりやすく大きく目を開いた
Broooock
Broooock
正直に言ってしまおうか、あなたに憧れてましたって
シャークん
シャークん
Broooock
シャークん
Broooock
ピアノが好き、と言うわけでもない
ただ
ぶるーくにもう一度会うために弾いてきた
Broooock
シャークん
Broooock
Broooock
Broooock
それって…
シャークん
Broooock
シャークん
シャークん
途切れ途切れに発した言葉にぶるーくはびっくりしていた
Broooock
シャークん
自分の演奏を持っていることは羨ましい
楽しそうと思えたのはいきいきとした演奏からだ
Broooock
そう苦笑した彼は俺の元までやってきて言った
Broooock
Broooock
シャークん
俺のこと…知ってんのか?
Broooock
Broooock
Broooock
そう、俺はそう呼ばれていた
何もかもがうまくいった
ポップスを弾けと言われたら普通に弾けたし
クラシックも弾けた
けど
ぶるーくに会って、聞いて
俺は自分の演奏がわからなくなった
それから俺は、コンクールに"出なくなった"
シャークん
シャークん
Broooock
シャークん
Broooock
シャークん
Broooock
ぶるーくから提案されたこと、それは
『僕と一緒に自分の演奏探そう?』
俺がずっと求めてきた言葉だった
誰からも言われなかったその言葉を言ってくれる人がいた
…
それからの俺たちは毎日のように音楽室に来て一緒にピアノを弾いた
初めて知ったことがあって どうやら俺とぶるーくは結構家が近かったみたいだ
たまにぶるくの友達というNakamuときりやんってやつとも遊んだ
だから俺の友達のきんときとスマイルを紹介した
遊びつつ俺らはピアノを弾いた
他の奴らも歌ったりギター弾いたり
協力してくれた
Broooock
一緒に演奏してる中で友達じゃない感情が俺の中に芽生えていた
こいつが好きなんだって
シャークん
Broooock
Broooock
Broooock
この一緒にピアノを弾く時間、それは全部俺のためだ
俺が自分の演奏を見つければもう一緒に弾くことはない
友達なのは変わりないけどピアノはあまり弾かなくなってしまうかもしれない
シャークん
Broooock
シャークん
Broooock
シャークん
Broooock
…………
シャークん
Broooock
Broooock
結局…同じかよ
考えること
猫のように自由でよく寝ているこいつ
ピアノを弾いてる時は何よりも楽しそうな顔をするこいつ
シャークん
あの時と同じ回答をする
Broooock
シャークん
Broooock
シャークん
そう言うとぶるっく俺を抱き上げてクルクルと回った
シャークん
Broooock
俺らは目を合わせて笑い合った
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主
主