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第1話 - あ

2023年11月20日

#恋愛

結城　真矢

ヤスエ

サナエさん、ちょっと聞きたいことがあるの

サナエ

こんにちは

サナエ

何かありましたか？

ヤスエ

何かありましたか？じゃないでしょ

ヤスエ

昨日、カズキと久しぶりに電話したら、最近体調が悪い、って言っていたのよ

ヤスエ

あなた、最近家の掃除よくしているのよね？

サナエ

はい、ちゃんとしていますけど

ヤスエ

本当に？

ヤスエ

あなたの言うこと、信じられないのよ

ヤスエ

カズキがハウスダストのアレルギーがあること、知っているわよね？

サナエ

はい、よく知っていますよ

サナエ

だから、カズキが仕事に言っている時とか、外出中に掃除機とかかけたりしているんです

サナエ

埃がまうと、アレルギー症状が出ると思ったので

ヤスエ

まだ埃が舞っている状態で、カズキが返ってきたとかじゃないの？

サナエ

そこまでは...すみませんが把握できてないです

サナエ

すみません

ヤスエ

本当に、カズキのアレルギーのこと分かってるの？

ヤスエ

一歩間違えたら、ひどい喘息も起こすの

サナエ

はい、それは十分わかってます

サナエ

でも、今まで一度もそんなことにはなったことないです

ヤスエ

いつなるのか、分からないから警戒して、っていうことを言いたいの！

ヤスエ

別に、今回だけのことじゃないわよ

サナエ

すみませんでした...

サナエ

なるべく、カズキさんの体調が悪くならないようにします

ヤスエ

本当に、絶対に注意してよ

ヤスエ

あと、これから冬になるから、毎日、蜂蜜の生姜湯も飲ませてね

サナエ

はい、分かりました

ヤスエ

まあ、もう結婚して２年目だし、もう作れるわよね？

サナエ

はい、お義母さんに教えてもらったので、もう１人で作れます

ヤスエ

当たり前でしょ

ヤスエ

っていうか、蜂蜜の生姜湯なんてあんな簡単なものも作れなかったのね

ヤスエ

ビックリよ

サナエ

一度は、自分で作ったんですけど、なかなかうまく行かなかったので...

ヤスエ

そういえば、私が味見してまずいと思ったから、私がわざわざ教えたんだっけ

ヤスエ

ほんと、手のかかる人ね

サナエ

すみません...

サナエ

１人暮らしする前は、あまり凝ったものとか作らなかったので

サナエ

なかなか要領もつかめなくて、

ヤスエ

ほんと、あなたの１人暮らしの時の食生活聞いたら、ひどいと思ったもの

ヤスエ

仕事で忙しい日は、レトルト食品か外食？

ヤスエ

自炊する時も、単品料理が多いなんて...

ヤスエ

加工肉のソーセージも、ベーコンも添加物の入ったものばかり使っているし...

ヤスエ

そんな食生活をカズキにもさせたら...って想像すると...

ヤスエ

鳥肌が立ってくるわ

サナエ

この１年で、私も料理の腕も結構上がってきましたよ

ヤスエ

何言ってるの

ヤスエ

今のレベルが人並み程度でしょ

ヤスエ

っていうか、今まで和風だしは市販の顆粒のもので済ませていたなんて、

ヤスエ

聞いた時は信じられなかったわ

ヤスエ

あんな添加物が入ったものを使っているなんて...

ヤスエ

すぐに体調も崩すし、大きな病気の原因になるでしょ

サナエ

私も、苦労して練習してきたんです

サナエ

別に、そこまで言わなくてもいいんじゃないでしょうか？

ヤスエ

厳しくしないと、サナエさん、あなたすぐに調子に乗るじゃない

ヤスエ

食事は人の体を作る基本的なものだし、そこで無添加のものとか、有機の野菜も使ってほしいの

ヤスエ

私がそのルールに乗って今まで育ててきたから、今のカズキがあるんでしょ

サナエ

はい、ここまで丁寧に料理をしてきたところは、本当に尊敬しています

ヤスエ

本当に、感謝しても足りないくらいよ

ヤスエ

じゃあ、また何か気になることがあったら連絡するから

サナエ

はい、それじゃあ、失礼します

~翌日の昼～

カズキ

サナエ

カズキ

今、ちょっといい？

サナエ

うん、どうしたの？

カズキ

あのさ、最近咳が出る、って言ったじゃん？

サナエ

うん、言ってたね

カズキ

あれさ、会社のヒーターが原因だったらしくて、

カズキ

中にたまってた埃が、外に出て舞ってたんだって

カズキ

今年、使う前に掃除してなかったらしい

サナエ

そっか

サナエ

原因が分かってよかったね

カズキ

うん

カズキ

っていうか、たぶん母さんからサナエの方に連絡あったよね？

カズキ

その、俺が体調悪い、って最近母さんに言っちゃったから

サナエ

うん

カズキ

ごめん、また嫌な気分にさせちゃって

サナエ

ううん、そんなことないよ

サナエ

私も、ちゃんと掃除はしてます、って自分の思ってることはっきり伝えられたから

サナエ

だから、カズキばっかり責任感じないで

カズキ

うん...

カズキ

でも、さすがに母さんもサナエに対して厳しいところはあると思うから、

カズキ

あんまり失礼なこと言わないように、言っておくよ

サナエ

本当に、気にしなくていいよ

サナエ

もし、嫌な思いした時は私からその時は言うからさ

カズキ

そう？

カズキ

分かった...

カズキ

でも、無理だけはしないでね

カズキ

俺は、いつでもサナエの味方なんだから

サナエ

うん、ありがとう

カズキ

今日のお弁当も、美味しかったよ

サナエ

本当？

サナエ

今日はね、結構朝から頑張ったんだ

カズキ

俺、サナエのつくるから揚げがめっちゃ好きだよ

カズキ

母さんのより、美味しいかも

サナエ

そうやって言われたら、夜ご飯作るのも頑張れちゃうな

カズキ

俺も、サナエと電話したら仕事頑張れる気がしてきた

サナエ

うん、頑張って

サナエ

私、今日は仕事休みだから、夜ご飯は少し手の込んだものにしようかな～

カズキ

じゃあ、楽しみにして帰ってくわ

サナエ

うん、じゃあまた後でね

～翌日～

ヤスエ

サナエさん

ヤスエ

またカズキのことで聞きたいことがあるんだけど

サナエ

はい、何でしょうか？

ヤスエ

あなた、カズキに何か変なこと言ってないわよね？

サナエ

えっと...変なことって言うのは...どういうことでしょうか？

ヤスエ

どういうことでしょうか、って...

ヤスエ

昨日、あの子から電話があったのよ

ヤスエ

「咳が出てたのはサナエのせいじゃなくて、会社のエアコンが掃除されてなかったせいだから」

ヤスエ

って

ヤスエ

あなた、カズキに私が責めたみたいな言い方したんじゃないんでしょうね？

サナエ

別に、そんなこと言ってないです

ヤスエ

本当に？

ヤスエ

信じられないわね、そんなこと

サナエ

本当です

サナエ

カズキさんから咳が出てたのは会社のエアコンが原因だった、って...

サナエ

私はその事実だけしか聞いてないですし、私からは何か言ってないです

ヤスエ

何が本当で、何が本当じゃないのか分からないわね～

ヤスエ

まあ、でもあなたの掃除の仕方にも少しは問題ある、って私は思ってるから

サナエ

え？私の掃除の仕方にですか？

ヤスエ

そうよ

ヤスエ

どこかで手を抜いてるから、カズキの体調にも支障をきたすんでしょ

ヤスエ

それに、会社だけで過ごすんじゃないんだし、空気を吸う場所は全部、

ヤスエ

ハウスダストの原因として考えるべきよ

サナエ

でも、私はちゃんと念入りに掃除をして対策をしていましたし、

サナエ

その中からは外れてもいいんじゃないかな、って思うんですが...

ヤスエ

いいえ

ヤスエ

そんなことないわ

ヤスエ

それで、あなたがちゃんと掃除してるか確認するために、

ヤスエ

今度の土曜日に、あなたたちの家に行くことにしたから

サナエ

え！？なんでそんないきなり...

ヤスエ

あなたが私のいないところで何してるのか...全然想像がつかないもの

ヤスエ

だから、それまでにしっかりと、準備しておいてよね

～1週間後の土曜日～

ヤスエ

ちょっと！サナエさん！

ヤスエ

あなた、どういうつもり！？

ヤスエ

どうしていきなり、アパートの契約辞めるなんてことしたの！？

サナエ

えっと...色々ありまして...

ヤスエ

色々って...！？

カズキ

母さん、俺が自分で話を進めて、契約をやめたんだよ

ヤスエ

カズキ...？

ヤスエ

あなたが？どうしてそんなことするの？

カズキ

俺、母さんがずっと俺のこと手間かけて面倒見てくれたこと、

カズキ

本当に感謝してるよ

カズキ

でもね、サナエと結婚してからやりすぎじゃないかな、って思うようになった

カズキ

だから、母さんがサナエと俺のことを認めてくれるまで、少し距離を取った方がいいと思ったんだ

ヤスエ

そんな、母さんに何も教えないで勝手なことするなんて...

ヤスエ

カズキらしくないじゃない

ヤスエ

ねえ、本当はあなたの意志でやったんじゃないんでしょ？

カズキ

いや、全部俺が手続きも進めたし、引っ越しの手配もしたよ

カズキ

もう、母さんの過保護にもうんざりしてた

ヤスエ

私がカズキのことを心配するのは、体調のことが心配だったからよ

ヤスエ

昔からハウスダストのアレルギーがあって、すごく体調壊すときが多かったじゃない

ヤスエ

愛する息子のことなんだし、心配するのは当然のことでしょ？

カズキ

心配してくれるのは嬉しいよ

カズキ

でも、それが過剰すぎで、もう嫌になった

ヤスエ

そんな、嫌になったなんて...

ヤスエ

母さん、ショックよ？

カズキ

あのさ、俺がハウスダストのアレルギーがひどくなった時、何が原因だったか知ってる？

ヤスエ

え？なんで？

カズキ

母さんが引き取って飼ってた猫が原因だったんだよ

ヤスエ

え！？

ヤスエ

母さん、そんなこと初めて聞いたけど...

カズキ

そこまでひどい感じじゃなかったけど、

カズキ

咳がひどくなった時に病院に行ったら、軽度の猫アレルギーに反応したんだよね

カズキ

そのあと、すぐに引き取る人が見つならなかった飼うことにはならなかったから、

カズキ

俺からは特に話さなかった

ヤスエ

そんなに辛かったなら、言ってくれたらよかったのよ？

ヤスエ

どうしてそんな、我慢なんかしてたの？

カズキ

別に、我慢してたわけじゃないよ

カズキ

ただ、母さんいつも仕事で忙しくて、機嫌よくなかったし

カズキ

なんか、邪魔しちゃいけないかな、って

ヤスエ

母さん、そんなに機嫌悪かったかしら...？

カズキ

自分であんまり意識してなかったんだね

カズキ

俺、すごい母さんが帰ってくるたびにイライラした態度取られて、

カズキ

子供ながらすげー遠慮する癖がついちゃったんだ

カズキ

でも、サナエと暮らすようになってから変わった

ヤスエ

え？サナエさんと？

カズキ

確かに、母さんも俺のために精いっぱい家事してくれたのは分かるし、

カズキ

料理も頑張ってくれて、すごい感謝してるよ

カズキ

でも、サナエが仕事も頑張って、慣れない料理も上達させようと努力してくれたのが、

カズキ

すげー嬉しかった

カズキ

それで、サナエと一緒にもっと自由に暮らしていきたい、って思った

ヤスエ

なんか、その言い方されると、母さんが束縛してたみたいな言い方じゃない

カズキ

だって、そうでしょ？

カズキ

俺、母さんの言うこと聞いて真面目に生きてきたけど、

カズキ

今は俺にとって大事な人を傷つけたくないから

ヤスエ

それで、家も新しいところに移ったの？

カズキ

うん、そうだよ

カズキ

サナエがプレッシャーの下で窮屈に生きるのは、辛そうだったから

カズキ

それに、母さんが俺の小さい頃にアレルギーのこと知らなかったんだ、って聞いて、

カズキ

本当は俺のこと、よく見てないんだって分かった

カズキ

だから、俺のこと本当に心から大事にしてなかったんでしょ

ヤスエ

そんなことないわよ！

カズキ

別に、全く愛されてなかったとは思わないけど、なんか監視されてる感じがしたんだよね

カズキ

だから、少し距離を取ろう

カズキ

じゃあね

～後日談～

サナエ

カズキのおかげで、私はお義母さんのプレッシャーから解放され、

サナエ

のびのびと暮らすことができています

サナエ

お義父さんからの話によると、カズキが連絡を一切取ってくれなくなり、

サナエ

寂しがっていて、仕事も手につかないようです

サナエ

ただ、もう少しお義母さんには反省してほしい、と思うのでもうしばらく距離を取ろうと思います

サナエ

お義母さんの幸せを少しだけ独り占めできた気がして、今は少し嬉しいです

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結城　真矢

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