アイスが溶けた。
バニラが液体になって服に落ちる。
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
you
仕方なく真一郎君の隣に置いてあるティッシュを自分で取って
少し染み込んだアイスを綺麗に拭き取りながらそう言った。
もう夏も終わんな。と思いながら、その溶けたアイスにさよならする。
シンイチロウ
you
目を細めながら、携帯の画面に熱心な真一郎君を見た。
相変わらずだ。
いい女見つけりゃ、息をする様に好きになって
好きだわ可愛いわ胸がデケェだわ、よく意味が分からない話をされる。
恋は一途だから成り立つんだよ。
you
今日のお目当ては今牛若狭。
はっきり言うと、私は絶賛片想いとやらを彼にしている。
ワカは私の事をどんな目で見ているのかは分からない。
分からないからこそ知りたいけど
知りたくない気持ちもあった。
シンイチロウ
you
シンイチロウ
やっと視線をこっちに向けて、そう真一郎君は言う。
けど直ぐにまた携帯の画面に視線が移った。
今日はやけに私に視線を合わせない。
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
真一郎君は私にとって、何ともない存在だった。
いつも隣に居てくれるから、もうそれが当たり前だって感じちゃって
特別でも友達でも無い、良い意味で何ともない存在。
だから一緒に居て飽きないし、つまんなくならないんだ。
__ ピロンッ
するとスクールバッグに入っていた携帯が、弾む音と共に振動した。
you
メール1件の通知。
それは今牛若狭、ワカからだった。
「あともうちょいで着く アイス残しとけ」
短い文で送られて来たそのメールを見て、思わず胸が高鳴る。
好きな人から来るメールは、何とも言えない幸福感があった。
アイス。そうだ、残しとかないと。
you
シンイチロウ
シンイチロウ
you
マンジロウ
すると、背後から高い声がした。
振り向くと、真一郎君の弟、万次郎君が立っていた。
光の見えない目からは、何を考えているのか全く分からない。
you
マンジロウ
少し首を傾げてそう聞いてきた万次郎君の目が、私を捉える。
you
流石に小学生にアイス如きで叱りたくない。
優しいお姉さんを演じる為に、ニコニコ笑顔で万次郎君の頭を撫でる。
you
マンジロウ
you
そう言うと、万次郎君は急に冷や汗をかき出した。
マンジロウ
you
私は人の言動から心を読むのが得意だった。
電車の中で人の動きをずっと観察していたら、何となくだが分かるようになっていったのだ。
シンイチロウ
間に入って、変な所に興味を持ち出した真一郎君が目を輝かせる。
you
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
今度こそ私の目を見て笑う。
真一郎君は、笑顔が綺麗な人だと思った。
...いや、何思ってんの自分。
意味分かんね。急に気持ち悪ぃ事思って。
こんな事、私の家族にも使わねぇ言葉だぞ。笑顔が綺麗だなんて。
そんな事を考えると、恥ずかしくなって耳が赤くなる。
何真一郎君相手に顔赤くしてんだ。
you
シンイチロウ
you
シンイチロウ
you
赤くなった顔を隠すように、それを口実に佐野家から出て行った。
シンイチロウ
you
そう言って○○は部屋から出て行った。
ワカの分のアイスを″わざわざ″買いに、外に出て行ったんだ。
あー、イイなぁ。
どう接したら、ワカみてぇにモテるようになんのかな。
俺も女からアイス買って貰いてぇ。
人1人居なくなった空間に溜息をついて、携帯画面に視線を移す。
その画面はタダのカレンダー。
他の女に告ってるフリをしたんだ。
いや、フリをするしか無かったのかもしれない。
アイツはワカの事が好きで、俺はアイツのことが好き。
○○は俺の事、どう思ってんのかな。
何とも思ってなさそうだなと感じ、1人で苦笑する。
今まで片想いは何回も経験した事がある。
だからそんなに辛くない筈なのに
何故かアイツの事になると、無性に暗い気持ちになった。
1人財布だけを持ってコンビニへと向かう。
外に出ると、珍しく吹いた冷たい風が、赤くなった顔を冷ましてくれた。
あー、さっきの思考回路はどうかしてた。
そう思い、頬をバシッと強めに叩く。
you
自分でやっといて少し涙目になった。
you
涙を拭き取ると、前から恋しい人影がこっちに近付いているのが見えた。
あのフワフワな白髪、小柄なシルエット。
you
ワカサ
その人影はやはりワカだった。
重そうなバイクを引いて此方に向かって来ていたのだ。
you
ワカサ
you
ワカサ
you
ワカサ
you
ワカと会って、もうすっかりさっきの変な気持ちは無くなっていた。
この片想いがいつまで続くのかは分からないけど
私はこのままでいいと思っていた。
結ばれなくても、ただ喋れたら、会えてたらいいやって思えてる。
いや、思いたいだけなのかもしれない。
you
you
ワカサ
さらりと嬉しい事を言われる。
それに対して、少し間が空いてから返事をしてしまった。
you
ワカサ
you
ワカサ
無気力な表情筋を少し動かして出たワカの笑みは、破壊力がえげつなかった。
you
思わず声が出ない。
好きが溢れそうになった。
ワカサ
you
こんなワカに他の女が出来たらと考えると、背筋が痺れる。
こんなに片想いが辛い物だとは知らなかった。
【前編】ℯ𝓃𝒹
コメント
112件
続き楽しみです!! 頑張ってください💪
うわぁぁぁとうりべなんも知らないけど すごい楽しみ!!
最高だねぇ .. 真一郎 くん が何故こんなにもモテないのかわたしにはわからなすぎるぜ .. ( (