日が高くなり、少し暑くなってきた
人通りが少なくなるお昼時
そんな中、朝から忙しかったせいか
俺はまた、眠りに落ちていった_。
この夢はいつまで続くのだろう
夢の始まりは決まってため息がこぼれる
今思えば、この夢を見るようになったのはいつだったのだろう
…多分、もうずっとだ
学生時代からだったような。
最初のうちは一ヶ月に何回か見るか見ないか程度だった
段々、見る回数が増えてきて…
今ではほぼ毎日になった
…未だに理由は分からない
過去に何かあったのだろうか
…この事は医者にも相談はしていない
相談するほどの事でもないし。
どうせ相談しても何も変わらない
意味のない行動はするだけ無駄
だからあいつらにも何も言わない
今日は少し長い様に感じる
それほど深い眠りなのだろうか
意識があるとしても
眠りの深さまでは分からない
…そんな時
?
背後から声をかけられる
LAN
?
LAN
この会話に意味など無い
さっさと済ませてほしい
?
?
?
雰囲気が変わる事に気づく
声のトーンを落とし、脅すような口ぶり
LAN
LAN
?
?
LAN
?
?
?
?
LAN
LAN
こさめ
目が覚めると、俺は横たわっていて
その横にはこさめとなつが心配そうにこちらを見つめる
暇72
こさめ
LAN
暇72
LAN
LAN
そう言って笑いかけた
…つもりだった
こさめ
LAN
暇72
こさめに軽く叩かれた
こさめの手には怒りが乗せられている様だった
こさめ
LAN
こさめ
こさめ
そう言ってこさめが泣き崩れる
笑えてない、か
…勉強したはずなんだけどな
口の角度、目の細め具合、首の傾け方
ひたすら調べて…
初めて実践した時
「笑顔が凄く好き」って褒められたの、今でも覚えてる
…なのに
俺の何が駄目だった?
俺…ちゃんと笑えてなかったかな?
…あれ
俺って…なんで笑ってるんだっけ
暇72
暇72
LAN
暇72
LAN
こさめをなだめつつ俺を心配する
そんななつの負担は大きいだろう
…ごめんね、なっちゃん
LAN
暇72
そう小さく言い残し、この場を後にした
何も考えず、歩くスピードも緩めることなく行き着いた先
それは海だった
海から吹いてくる風は冷たく
俺の優しく髪を揺らす
暫くの間、ぼーっと波打つ方を見つめていた
ふと、先程の夢を思い出す
まるで俺の事を見透かしている様な
全て知っている、とでも言いたげな口ぶりの彼は
どこから来て、何故俺の事を知っているのか
見た目はまだ中学生くらいで
痣や隈が酷い、やせ細った男の子。
…彼はどんな環境で生きてきたのだろうか
痣の数々は真新しい物から古いものまであった
手当をされた形跡は無く
ただただ無惨な姿だった
別に彼に思い入れがあるわけでも
同情心もない
「苦しいです」って言われたら「そうですか」で終わる話
…でも
彼は…何処かで見覚えがある様な気がする
まるでこの世界に絶望したような目
そんな彼に少しばかりの興味が湧いた
俺には記憶が無い
正確に言うと所々飛んでしまっているのだ
医者に言われたことだ
間違いではない
俺の記憶は俺が思い出したいと強く思った時
または、そのきっかけを作る事
これが最低条件なんだって
戻る確率は半分以下らしい
…まあ、別にどっちでもいいし
戻ったとしてもそれが"周りにとって"不都合かもしれない
戻らなかったとしても同じ
なら今の状況と何の変化もない方が良いじゃん?
その方が平和的解決?だと思うし。
気がつくと、俺は波打ち際まで足を運んでいた
波がゆっくりと、時々速く打って波を押し寄せる
一匹の魚が砂浜に打ち上げられていることに気づく
助けたほうが良いのだろうか
…面倒だし、いいか
こうやってまた、一つの命を奪ってしまう
沢山藻掻いて、苦しんでしまう
…あの子みたいに。
みこと
声がした方を振り返る
すると、そこにはみことが居て
さっき俺が見放した魚を海に返してやっていた
みこと
LAN
横でみことの声を聞きながら、海に視線を戻す
「綺麗」
…そういえば、なんで俺はあの時泣いちゃったんだっけ
理由もわからず、ただただ涙が止まらなかった
涙で桜が霞んで見えなくなるまで…。
みこと
みこと
まるで…俺の全てを見透かすみたいに
優しい声でそう呟き、俺の隣に腰掛ける
みこと
みこと
みこと
LAN
別に知らなくてもいい
そんな事を知った所での話。
みこと
もういいよ、みこと
そうやって…俺を慰めてくれてるんでしょ?
俺を救おうとしてるんでしょ?
そんな事…望んでないよ
俺…お願いしたっけ…?
「助けて」なんて_
みこと
LAN
小さく声を漏らし、整った、綺麗なみことの横顔に顔を向ける
みこと
みこと
みこと
みこと
みこと
そう言って、真っ直ぐ迷いのない目で俺を見つめる
そんなみことの目を見つめ返すことは出来ず、目を逸らそうとするが…
みこと
強引に「見ろ」という感じではなく
優しく「見て?」という言動はみことの優しいところなんだろう
LAN
みこと
目を逸らし、海の上を飛ぶ鳥達を見つめる
俺は鳥じゃない
なんの迷いも無く、自由に空を飛び回れる様な人間じゃない
自分という人間に囚われ、蝕んでいく
みこと
そう静かに、そして優しく呟く彼の目は
何処か遠い、何も無い青い空を見つめ続けていた
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好き、好き、好き