テラーノベル
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その夜、LANの広いリビングには、コントローラーを動かす音と、 メンバーたちの賑やかな声が響き渡っていた。
こさめ
みこと
普段と変わらない、みことの明るい声。 だが、その声にほんのわずかな掠れを感じ取ったのは、LANだけだったかもしれない。 ゲームも終盤に差し掛かり、皆の集中力が高まっていたその時だった。
みこと
突然、みことが激しく咳き込んだ。ゲームをしていた手が止まり、体全体が震える。
なつ
なつが心配そうに画面から顔を上げる。
みこと
次の瞬間、みことの口から小さくえずく音が漏れた。 慌てて口元を押さえるが、間に合わない。 夕食に食べたものが、少量だが床に吐き出されてしまった。
すち
すちの驚いた声が響く。リビングの活気が一瞬で凍り付いた。
みこと
顔面蒼白で、背中を丸めて咳き込むみことの体は、先ほどからずっと小刻みに震えていた。
いるま
いるまが慌てて立ち上がる。
こさめ
こさめもすぐに動いた。 すぐに戻ってきたこさめの手には、深めの洗面器があった。 LANがみことの背中を支え、すぐにその洗面器を差し出す。
LAN
みことは、洗面器に顔を近づけるが早いか、込み上げてくる吐き気をもう抑えきれない。
みこと
喉の奥から絞り出すような音と共に、盛大な嘔吐物が勢いよく洗面器に叩きつけられる。 夕食の残骸がごっそりと吐き出され、洗面器の底に溜まっていく。 何度も何度も胃が痙攣するように波打ち、みことの体はびくんと大きく跳ねた。
みこと
一度収まったかと思った吐き気が再び襲い、今度はさらに激しい波が押し寄せた。 胃の奥からこみ上げる不快感と熱さに、みことの目からは生理的な涙が溢れ出る。 全身の力が抜け、ぐったりとLANの腕にもたれかかった。その体は熱く、小刻みに震えている。
LAN
LANは、その小さな体を抱きしめ、毛布を取りに立ち上がった。 ゲームの盛り上がりは嘘のように消え去り、 リビングにはみことの辛そうな呼吸音だけが響いていた。
リビングには、嘔吐の痕跡と、先ほどまでの喧騒が嘘のような静寂が広がっていた。 LANは、震えるみことを抱きしめたまま、すぐ隣のソファに移動させた。
LAN
LANは、リビングにあったブランケットを何枚か引っ張り出し、 みことの肩を包み込むように丁寧にかけた。 みことの額に触れると、やはり尋常ではない熱さだ。
みこと
消え入りそうな声で、みことが謝る。
LAN
LANは優しく声をかけ、みことの髪をそっと撫でた。
その間にも、メンバーたちはそれぞれ動き出していた。
すち
すちが、きれいな洗面器と冷たいタオル、そして水の入ったコップを慎重に運んできた。
なつ
なつが救急箱から取り出した体温計をみことに渡す。みことは震える手でそれを受け取った。
こさめ
こさめは、みことの背中を優しくさすりながら、少し潤んだ瞳で見つめていた。
いるま
いるまは、テキパキと汚れてしまった床の処理に取り掛かる。 皆の連携は、まるで熟練のチームのようだった。
数分後、体温計の電子音が鳴り響いた。なつが覗き込む。
なつ
なつの声に、皆の表情に緊張が走る。
LAN
LANが指示を出す。こさめは言われた通りに、みことの熱い額に冷たいタオルをそっと乗せた。
みこと
ひんやりとした感触に、みことの体がわずかに強張る。
LAN
みこと
みことの掠れた声に、LANがコップを差し出す。 みことは震える手で少しだけ水を口に含み、ゆっくりと飲み込んだ。
LAN
LANは皆にそう声をかけたが、誰もがその場を離れようとはしなかった。 ただ、みことの辛そうな呼吸音だけが、静かなリビングに響いていた。
その夜、LANの家では、ゲームの熱狂に代わり、 仲間を思う温かい絆が、夜通し光を灯し続けていた。
コメント
9件
ありがとう!!好きすぎて今日死ぬかもしれない…(何言ってんねん) 最高!!!!なんで短時間でこんなにクオリティ高いん!?