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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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──10年後、今みたいな 桜の咲く季節にもう一度ここで会おう

私たちは幼なじみで

お互いのことを好きでいた

ある日告白され

私たちは恋人同士になった

でも、高校生になって 彼はサッカー選手の 夢を追いかけて県外の学校へ。

お互いのいつもの 集合場所として使っていた公園。

その公園で最後に言われた言葉

──お互い幸せになって またここで会おう

そう言われた

その時はまだ彼以外を 好きになれなかった

心が、追い付かなかった。

でも今になってなんとなく分かった。

彼はお互い幼なじみとしての関係 のほうが好きだったのかも…って。

よく考えてみると私も そうだったのかな…って。

そして素敵な旦那さんが出来た。

私たちには赤ちゃんも。

すごくすごく幸せな日々が続くなか

その日がだんだん近づいてきた

はははっ!

今日も元気だなー!

二人のニコニコした笑顔を 見るのが私の何よりの幸せ

ん?オムツかえるかー?

プルルルルル…

おーい。電話鳴ってるよ

そういって 私のスマホを渡してくれる

チラッと見たけど見知らぬ 電話番号

俺が出ようか?

架純 / カスミ

あっ大丈夫大丈夫!

通話ボタンを押して スマホを耳元に近づけた

架純 / カスミ

もしもし…

架純 / カスミ

架純 / カスミ

えっ…?

架純 / カスミ

あっ…はい!

架純 / カスミ

今すぐ向かいます

なんだった?

架純 / カスミ

架純 / カスミ

お母さんが…倒れたって

架純 / カスミ

今すぐいかなきゃ

でも、ここから静岡まで…

架純 / カスミ

私が先にタクシーで向かうから二人は後から来て

お母さんは もともと体が悪かった

そして、とっても 無理をする人

お父さんは私が中学生の頃 事故で亡くなった

たとえ病気でも命がけで助けてくれた

架純 / カスミ

お母さんっ!!

まるで小さい子供が親に 助けを求めている声みたい

病室にいる他の患者さんは 一斉に私を見つめる

窓際のベッドに お母さんがいた

お母さんはこっちを見つめると

お母さん

架純…(ニコッ)

いつもの笑顔で微笑んだ

そっとベッドに近づくと

お母さん

心配しないで?いつものことでしょ?

なんて言って作り笑顔で 誤魔化す

そんなお母さんを見て ちょっとイラッときた

さっき病室に入る前 看護師さんにあった

看護師さんが言うには お母さんのガンが 悪化しているということ。

そして看護師さんに言ったんだって

──もう、治療はいりません

──私はもう十分 幸せな人生を歩めました

看護師さんから伝えられてすぐに お母さんの病室に飛び込んだ

架純 / カスミ

そんなこと言わないでよ…ッ

私が放った言葉は 雫となってこぼれ落ちる

お母さん

んふ笑

お母さん

あのね?

お母さん

ここから架純が通ってた小学校が見えるの

お母さん

気分直しにでも行ってみたらどう?

そう言うとお母さんは カーテンを閉めた

架純 / カスミ

うん

架純 / カスミ

なんかあったら連絡してね

お母さん

いってらっしゃい

お母さんのいってらっしゃいは 高校生以来

なんだか懐かしい

学校への通学路

──あっ…そういえばあの時あの子と よく折り紙してたなぁ

ふと蘇るたくさんの思い出

そして角を曲がった先に 私がピンと来たもの

それは

架純 / カスミ

桜の公園……

そしてすぐに思い出した 1人の男の子

──直輝……

引き付けられるように 公園へ向かう足

肌寒い風から 春の匂いがする

──あの桜の木…

私たちがいつもの 集合場所として使っていた木

その木が…

なかった

あったのは切り株だけ

小さい頃からずっと一緒だった直輝

いつも桜の木の隣のベンチで 直輝のサッカー練習を見守ってた

直輝をいつまでも応援してた

──10年…経ったよね

──またここで会いたいよ

架純 / カスミ

なんて…来てくれるわけないよね…笑

またあの頃のように 話がしたい

またあの頃のように あなたの笑顔をみたい

“幸せだよ”って伝えたい

1日後

息子

ママーー!!

夫に車から下ろしてもらうと 走って私に飛び付いてきた

子どもから“ママ”って 読んでもらえるのってすごく 幸せなことだなと感じる

架純 / カスミ

大丈夫だった?

夜はママがいなくて大泣きだったよ笑

俺じゃだめか~...って笑

架純 / カスミ

そっか笑

架純 / カスミ

ごめんね。じゃあ今日はみんなで、おばあちゃんに会ってこようね

息子

うんっ!

息子

わぁ...!!

息子

カッコいい!

この子にとって 初めて見るお医者さん

息子

この人たちがおばあちゃんの病気を直してくれるんだね!

ニッコニコな笑顔で こちらを見つめていて

この子のことを思うと 心が締め付けられる

トンッ

察してくれたのか 夫が背中に手を当ててくれた

そうだよ?お医者さんたちはたくさんの人たちを助けてあげてるんだよ

息子

すごいなー!

この子がすごくキラキラしてた

──私も頑張んないと

息子

おばあちゃん元気そうだったね!

きっと来てくれて嬉しかったんだと思うよ

架純 / カスミ

きっとお母さんも辛いはずなのに

お母さんは強い

お母さんみたいなお母さんに 私はなれるだろうか

今、なれているだろうか?

息子

あっ!公園がある!

この子が指を指す先の公園

桜の公園だった

ここすごいな。サッカーゴールがあるぞ。

息子

ボール落ちてたよ!

おっ!じゃあやってみるか!

息子

うん!

架純 / カスミ

初めてのサッカーだね

息子

がんばる!

風景は、変わる

一秒一秒の風の向き、 光の強さ、天気、表情、感情

全て、一緒なものなんてない

いつも眺めていたあの景色が 今、蘇ってくる

どこまでも何があろうとも サッカーが大好きだった直輝

毎日この公園で練習していたのを 私は今は切り株となって残っている 桜の木の下のベンチで見てた

応援してた

──10年後、桜の桜の咲く季節に

──お互い幸せになって

──またここで会おう

ちょっと車に忘れ物したから戻るね!

架純 / カスミ

あ、はーい!

架純 / カスミ

じゃあ、お母さんと練習しよっか!

息子

うん!

架純 / カスミ

サッカーはね、気持ちだよ?

架純 / カスミ

強くなりたい!って思うほど、上手になれる

息子

僕も強くなりたい!

架純 / カスミ

うん。そうだね(ニコッ

──“強くなりたい”と思うほど 上手くなる

直輝が何度も、何度も 私に言ってくれた言葉

その言葉に私は何度も救われてきたよ

???

サッカー、好きなの??

息子に誰かが話しかけている

息子

今、初めて練習してるの!

???

そっか~!

???

俺もずっとここで練習してたよ

架純 / カスミ

この景色

あの人…

架純 / カスミ

な、直輝……?

ベンチから立ち上がって 思わず声をあげた

その人は一瞬振り向くと、 サッカーボールを地面に置いた

そしてゴールを目掛けて 脚を振り上げた

景色は変わる

人だって変わる

だけど、分かりあえるものがある

直輝 / ナオキ

直輝 / ナオキ

元気だった??

架純 / カスミ

感情も変わる

少しずつの場合もあれば 大きく変わるときも。

架純 / カスミ

うん。元気。

架純 / カスミ

幸せだよ

直輝 / ナオキ

ははっ!笑

直輝 / ナオキ

覚えてくれてたんだ

架純 / カスミ

そっちこそ

直輝 / ナオキ

歩いてたらここにたどり着いただけ

架純 / カスミ

私もだし

息子

お母さんーこの人誰ー?

直輝 / ナオキ

お母さんのお友達だよ

息子

お友達??

直輝 / ナオキ

うん。サッカー選手のね

息子

え!?お兄ちゃんサッカー選手なのー??

架純 / カスミ

思わず直輝を見つめた

すると直輝はどや顔になって

直輝 / ナオキ

夢が叶ったよ

なんて顔を赤らめた

ごめん。待たせて

息子

あっ!パパ~!

ん?架純、この人は?

架純 / カスミ

あっ、私の幼なじみ

直輝 / ナオキ

はじめまして、渡辺直輝です

え、渡辺直輝って、サッカー選手の…

直輝 / ナオキ

はい、そうです

架純 / カスミ

あなた知ってるの?

もちろん

直輝 / ナオキ

直輝 / ナオキ

久々なんで、二人で話してもいいですか?

どうぞ、どうぞ!

じゃあ二人で先にもどってるね

架純 / カスミ

あ、ありがとう

直輝 / ナオキ

今は何してるの?

架純 / カスミ

専業主婦

直輝 / ナオキ

めっちゃいい奥さんじゃん

架純 / カスミ

私だって頑張ってるんだよ?

架純 / カスミ

架純 / カスミ

直輝は…?

直輝 / ナオキ

俺はサッカー選手になってサッカーを続けてる

直輝 / ナオキ

ここまでやってこれたのも色んな人のおかげ

直輝 / ナオキ

架純、お前も

架純 / カスミ

直輝 / ナオキ

俺はまだ結婚もしてないし、サッカー界でも全然有名じゃない

直輝 / ナオキ

だけど、サッカーを続けられていること

直輝 / ナオキ

それが俺にとっての幸せ

直輝 / ナオキ

直輝 / ナオキ

俺、正直いうと、架純と一緒にいたかった

直輝 / ナオキ

でもその感情は、

直輝 / ナオキ

“好きな人”から、“かけがえのない幼なじみ”に変わった

直輝 / ナオキ

俺らは恋人より、幼なじみの関係のほうが合ってるなって思う

架純 / カスミ

私も、

架純 / カスミ

今、家族といる時間がなによりの幸せ

架純 / カスミ

直輝みたいに強くないけど

架純 / カスミ

ずーっと強くなりたいって願ってる

架純 / カスミ

直輝 / ナオキ

桜の木、なくなっちゃったね

架純 / カスミ

切り株があるじゃん

直輝 / ナオキ

直輝 / ナオキ

そうだね笑

直輝 / ナオキ

本当はこの桜が咲いてるのを見たかったんだけどなぁ...

架純 / カスミ

私も

直輝 / ナオキ

うん

直輝 / ナオキ

いつか有名なサッカー選手になってやるからな!

架純 / カスミ

うん。いつまでも応援してる

あの時のように 手を振って帰る

その景色もまた お互いが変わっている

──もう一度、今度は孫ができたら 会えたらいいね

2度目の約束

景色はもっともっと 変わっているはずだ

でもきっと

私たちは分かりあえる

お互い

強くなろうね

この作品はいかがでしたか?

100

コメント

2

ユーザー

つくしさん ありがとうございます😆そういってもらえるととても嬉しいです!

ユーザー

ものすんごく感動しました!!!!!!!!!とっても面白かったです!!!!!!

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