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第1話 - あ

2023年05月01日

#恋愛

結城真矢

カイ

おーい、メイ

カイ

ちょっと大事なお願いがあるんだけど

メイ

またお兄ちゃんか

メイ

いっつもいきなり連絡してきて今度はなに？

メイ

貸すお金ならないわよ

カイ

ちっ、なんだよ

カイ

俺の手口はもう通用しねえってのか

メイ

そちらの要求なんてすぐに分かるわ

メイ

8割方はお金の話じゃないの

カイ

まあまあ、今日は金を貸してもらうことだけがお願いじゃないんだ

メイ

じゃあなによ？

カイ

実はなあ、女の子を紹介してほしいんだ

メイ

はあ？

メイ

お兄ちゃん、先月くらい彼女がいたでしょ？

メイ

その人とはどうなったのよ？

カイ

まだ交際してるんだけどな…

カイ

でも俺も新しい相手でも探そうかと思って

メイ

はあ？何考えてんのよ！

メイ

相手がいながら、女の子を紹介してとかあまりに常識外れじゃない？

カイ

違う！そうじゃないんだ！

カイ

今、交際中の子とはそろそろ別れようとも考えているんだ

カイ

でもまだ本命が決まってないから、今の彼女は“保険”ってことかな

メイ

ちょっとどういうこと？

メイ

今のお付き合いしている人とは何かあったの？

カイ

別に何もねーよ！

カイ

ただただ、飽きちゃったってことかなあ

メイ

なにそれ！

メイ

信じられない！！

カイ

そんなこと誰にだってあるだろ？

カイ

付き合ってたら相性が合わなくなったんだよ！

メイ

じゃあ何で交際相手に“保険”とか言うのよ

メイ

女性を弄んでるようにしか見えないんだけど

カイ

はあ？

カイ

お前だけには指図されたくないんだけど

カイ

お前は早くで結婚して恋愛経験が少ないから、適当なことが言えるんだ

カイ

俺みたいにいろんな経験をしたら、分かるようになると思うぜ

メイ

お兄ちゃんがやっていることは、ただの女遊びでしょ？

メイ

それだけ女性を大事にしない人には、いい人を紹介なんてできないわ

カイ

誰に向かってクチ聞いてんのか分かってんのか？

カイ

お前に俺の何が分かるってんだよ！

メイ

何をひがんでるの？

メイ

私が結婚してるから？

カイ

そんなわけねえだろ

カイ

俺は顔も性格も良いから、その気になれば結婚ぐらいできるんだからな

メイ

フン、呆れてモノが言えないわ

カイ

お前は人生楽しんでないから損してるんだ

カイ

俺みたいに女性経験豊富なほうが将来役に立つんだからな

メイ

それも一理あるわ

メイ

でもお兄ちゃんがしていることは女性をに対して失礼なのよ！

メイ

ただただ冒涜しているようにしか見えない

カイ

だからお前に指図される筋合いはねえんだよ！

カイ

俺は自分が気に言った女しかモノにしねえんだ

カイ

だから俺のお気に召さなければ使い捨て！

メイ

そんな人には女の子は紹介できません！

メイ

それだけモテる自信があるなら、ご自分で探してください！

カイ

まったく、お前は厳しいんだから

カイ

そんな性格じゃすぐ旦那に飽きられるぞ！

メイ

余計なお世話ね！

メイ

あんまり私に関わらないでちょうだい

カイ

はいはい、分かりましたよ

カイ

ま、お前なんか頼らなくても、すぐにいい子が見つかるからね

メイ

じゃあこれ以上、私に連絡してこないでね

メイ

女の子も紹介しなければお金も貸さないからね

その夜～

サツ

メイ、ちょっと聞いてよ～

メイ

どうしたの、サツ？

サツ

私、どうやら二股掛けられているみたいなのよ

メイ

ちょっと待って！

メイ

いったい何があったか説明してくれない？

サツ

ちょっと前に彼氏ができたって言ってたじゃん！

サツ

その男、急に音信不通になっちゃったんだよ

メイ

それと二股かけられてるのはどういう繋がりなの？

サツ

実はね、知人のママ友が同じ人と付き合っているみたいなのよ

メイ

え？

サツ

そのママ友も私と同じシングルマザーでさ

サツ

意を決して私の彼氏のこと聞いてみたのよ

メイ

浮気しているってこと？

サツ

まあ、そうみたいなんだけど

サツ

なんか話がややこしいみたいで

メイ

どういうことなの？

サツ

そのママ友もその彼から言い寄られたみたいで

サツ

他に交際相手がいるなんて知る由もなかったようだし

メイ

じゃあママ友もその彼に騙されていたのね

サツ

どうやらそうらしい

サツ

かなり好感を思ってたみたいだからショックを受けているみたいだけど

メイ

私だったらそんな男はすぐに訴えるかも

サツ

私だってそのつもりよ！

サツ

でもその前に確かめたいことがあるの

メイ

なんだか私にも関係あることかもしれない

メイ

一緒に調べてみようよ！

サツ

分かった

サツ

また連絡するね！

～3日後～

カイ

ご報告！！

カイ

俺もついに結婚するんだぜえ

メイ

は？何言ってんの！？

カイ

おいおい、お前はおめでとうの一言も言えねえのか

カイ

そんなヤツが妹だなんて恥ずかしいぜ！

メイ

悪かったわね！

メイ

別にあなたに言うことはないわ！

カイ

俺は言うことがあるんだ！

メイ

何よ？

カイ

何でこんなことまで自分の口から言わなきゃいけねえんだよ

カイ

まったく察しの悪い妹だぜ！

メイ

ネチネチ言わないで早く言いなさいよ！

カイ

結婚の祝い金をよこせ！

メイ

は？

メイ

バカ言わないでよ！

カイ

お前は身内の祝い事に金を出さねえってのか？

カイ

ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ！

メイ

何が結婚よ！

メイ

ついこないだ女の子を紹介してくれって言ってたじゃないい！

メイ

何で数日の間に結婚まで話が行きつくのよ

カイ

そんなのどうだっていいだろ！

カイ

それぐらい俺は女の子を口説くのが上手いってことよ

メイ

でも“保険扱い”の交際相手もいるんでしょ？

メイ

そんな状態で結婚なんてますます信じられないんだけど！

カイ

その女とはとっくに別れているんだ！

カイ

婚約者も知らねえことなんだから、丸く収まるんだよ

カイ

身内の祝い事に黙って金を出せばいいんだ！

メイ

浮かれてないで相手のことをちゃんと調べたほうがいいわよ

カイ

お前は俺の結婚相手のことなんて知らねえだろ！

カイ

俺と彼女は相性もピッタリなんだ！

カイ

俺はお前と違って、幸せな結婚生活を送ってやるぜ！

メイ

いずれ痛い目見るわよ

カイ

今の俺には何言ったって響かねえんだよ！

カイ

じゃあな、金は早めに渡すんだぞ

～1週間後～

カイ

おい！何がどうなってんだよ！？

カイ

彼女に振られちまったじゃねえか！

メイ

あ～あ、そうなの

メイ

ま、どうせ振られると思ってたもんね

カイ

おまけに婚約はきってなったから慰謝料請求されてんだよ

カイ

お前何か知ってんのか！？

メイ

知ってるに決まってるじゃない！

メイ

女性10人と同時期に交際してたんでしょ？

カイ

へ？

メイ

まったく…何度聞いても最低な話ね

メイ

身内ながら気持ち悪い

カイ

ちょっとどういうことなんだ！

カイ

意味分かんねえよ！

メイ

同時期に複数の女性と付き合ってたってこと

メイ

その中には婚約までした人もいたって話だけど

カイ

デタラメ言ってんじゃねえぞ！

カイ

どこにそんな証拠があるんだよ！

メイ

サツって子とも付き合ってたんでしょ？

カイ

何で知ってんだよ…

メイ

あの子は私とママ友同士なのよ

カイ

ウソだろ…

メイ

実はね、サツから相談を受けてたんだ

メイ

彼氏に突然フラれたうえに、彼氏が別のママ友と浮気している疑いが

メイ

まさかそのクズ彼氏が自分の兄だったとはね

カイ

別に浮気じゃねえよ！

カイ

サツとは別れてからその子と婚約したんだ

カイ

二股だって誰が言おうが俺はセーフなんだぜ

メイ

でも二人と同時期に交際していたことは事実なのよ

メイ

サツと話して、そのことを婚約者にはお伝えしておいたわ

カイ

証拠もないのに何デタラメ吹き込んでんだよ！

カイ

実の妹と言えど、お前のことを名誉棄損で訴えるからな！

メイ

そんなことできるもんならしてみなさいよ！

メイ

あなたの交際していた女性全員に聞き込んでいるんだから

カイ

へ？

メイ

やっぱりママ友の繋がりで一気に洗い出せたわね

メイ

あなたが交際してた相手は全員シングルマザーだったなんて

カイ

相手がいないシングルマザーなら問題ないだろ？

メイ

そうね、問題は同時期に交際してたってこと

メイ

あなたと交際していた時期を聞くと、全員が時期が被るんですもの

メイ

短くて1か月、長い人で１年も交際していた人もいるけどね

カイ

しょうがないだろ

カイ

相手との相性や家庭環境だって俺に品定めする権利があるんだ

カイ

同時に何人も交際したほうが、時間も失わずに効率がいいんだよ

メイ

でも相手のほうは貴重な時間を奪われているのよ

メイ

シングルマザーはただでさえ大変なのに

メイ

あなたみたいな人の相手までしないといけないなんて、胸が痛むわ

カイ

だから何なんだよ！

カイ

別にお互いの同意があったんだから別にいいだろ

メイ

選ぶ相手が全員シングルマザーってところが姑息ね

メイ

シングルマザーは子育てしながら頼る相手がいない

メイ

そういうところに漬け込んで、騙すような人とは付き合いたくないわ

カイ

相手がその事実を知らないんだから幸せだろ？

カイ

お前たちが変な詮索をするから、ややこしくなるんだ

メイ

たしかに事実を知らなくて幸せな人もいたかもしれないね

メイ

でも実際、サツのようにあなたに不信感を抱いていた人もいるのよ

メイ

婚約していたママ友だって、あなたに裏切られてショックを受けているし

カイ

お前らがこんなことをしなければ、俺も婚約者も幸せだったんだ

カイ

婚約者と一緒にお前とサツに慰謝料を請求するからな！

メイ

いい加減目を覚ましたらどう？

メイ

サツいわく、ママ友はあなたとは婚約破棄、

メイ

あなたに対して慰謝料を請求するそうよ

カイ

冗談だろ…

メイ

普通に考えてそうなるでしょ！

メイ

信用していた相手に裏切られたんだから

メイ

何股もかけるような男と結婚したって、すぐに浮気するのが目に見えているわ

カイ

いやいや、結婚を機に足を洗うつもりだったんだ

カイ

彼女にだってそう説明する

メイ

ウソをついていたこと自体がダメなのよ！

メイ

隠し事をしてるようなヤツと結婚したって幸せになれない

メイ

ママ友もそう言っているそうよ

カイ

じゃあ俺は訴えられるのか？

メイ

そうね、婚約までしてしまったら法的責任が発生するからね

カイ

もちろん、メイが慰謝料を払ってくれるよな？

メイ

何バカなこと言ってんの？

メイ

それぐらい自分でしなさいよ

カイ

だって俺、何人もの女性と付き合ってきたんだぜ

カイ

金なんか持っているように見えるか？

メイ

そんなこと知らないわよ

メイ

自分で蒔いた種でしょ？

メイ

働くなりして自分でどうにかしなさいよ

カイ

働いたって無理だよ！

カイ

慰謝料なんて払える気がしねえよ…

メイ

ま、最後に自分でやったことを認めたのは褒めてあげるわ

メイ

やった内容は最低だけどね

カイ

そんなこと言わないでくれよ

カイ

家族だろ？

メイ

女性を冒涜するような兄なんか、家族と呼びたくない

メイ

金輪際、関わらないでほしいわ！

カイ

ちょっと待ってくれよ！

カイ

メイってば！

メイ

さようなら、クズ兄貴

～後日談～

メイ

カイは婚約者のもとに駆け込み、事情を説明

メイ

まったく取り合ってもらえず、その場で婚約破棄が告げられてしまいました。

メイ

その後、元婚約者から正式に慰謝料を請求され、

メイ

泣く泣く借金をして自分で支払ったようです。

メイ

当然、ウチの両親は激怒し、カイを勘当、

メイ

カイと交際してきたママ友たちの手により、

メイ

ママ友界隈でカイは要注意人物と共有されているようです。

メイ

私としては、こんな人間が兄を持って恥ずかしいのが正直なところです。

メイ

私はサツを通じて、ママ友たちの中で有名人になり、

メイ

今でも仲良く交流しています。

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