テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
33
芙月みひろ
248
#ソフトバンクホークス
さくら
90
kty(ちけっと!、nrkr)
1,923
ローゼ博士
ローゼが返す
学者
生理学者の言葉に、会場がざわついた。 生放送を見守る民衆の声も、さらに熱を増していく。 『あれは冷たい』 『少しは同意すべきだ』 ローゼを責める言葉が、次々と飛び交う。
ローゼ博士
ローゼは苛立ったように言い返すと、席を立った。 段を降りる。 ヴァローナの周囲には、心配した学者たちが集まっていた。
司会者
近付いてくるローゼを見て、司会が咄嗟に釘を刺す。
ローゼ博士
ローゼは不機嫌に吐き捨てる。 ずかずかと歩き、そのままヴァローナの前に立った。
ローゼ博士
ヴァローナ
ヴァローナは、涙に濡れた目で首を傾げる。
ローゼ博士
ボロ人形。 英雄ヴァローナを、何度もそう呼ぶ者はローゼだけだった。 世界が英雄と讃える者。 人造人間として恐れる者。
学者
天文学者が声をあげる
学者
工学者も顔をしかめた。 今の発言だけを切り取れば、炎上は免れない。 けれど、ローゼの頭からはそんなことなど完全に抜け落ちていた。
ヴァローナ
ヴァローナは、また謝った。 ローゼの言葉に怒ることもなく。 ただ、自分が気付かなかったことを申し訳なさそうに。
ローゼ博士
ローゼが舞台袖へ視線を向ける。
スタッフ
ディレクターたちが慌てて動き出した。 出演者へ。 客席へ。 次々と水が配られていく。 熱を持ちすぎた空気を、一度冷ますように。 その間も。 カメラは、ずっと回り続けていた。 ***
学者
心理学者の穏やかな声に、ヴァローナは小さく頷いた。 それを確認すると、心理学者はローゼへ視線を向ける。 目が合う。 静かに頷いた。
ローゼ博士
ローゼが、泣いた理由を尋ねようと口を開く。
ヴァローナ
ほとんど同時だった。 ヴァローナの言葉が、ローゼの声を遮った。
ローゼ博士
何度も答えたはずだ。 ローゼだけではない。 その場にいる誰もが、そう思った。
ヴァローナ
学者
天文学者が困ったように口を挟む。 SNSでも。 視聴者の間でも。 既にヴァローナの言動は『度が過ぎる煽り』として広まり始めていた。 それでも、ローゼは引かなかった。
ローゼ博士
ヴァローナ
涙の混じった大きな声が響く。 ざわめきが、止まった。 ヴァローナの人化が僅かに溶けている。 髪の間から、隠れていた耳羽が覗いていた。 感情が制御できていない。 その姿を見れば、誰にでも分かった。
ローゼ博士
ローゼの言葉が止まる。 その時。 ようやく、理解した。 初めて、はっきりとヴァローナの目を見る。
ローゼ博士
声が裏返った。 瞬く間に、顔へ熱が集まっていく。 理解した。 理解してしまった。 こんな公衆の面前で。 こいつは。 何を言わせようとしているのか。 ヴァローナは真剣だった。 真っ直ぐに、ローゼだけを見ている。 もう、誰の声も届いていない。 いや。 客席も。 会場も。 いつの間にか全員が息を呑み、ローゼの答えを待っていた。
ローゼ博士
言いかけて、止まる。 違う。 それはきっと、ヴァローナが求めている答えではない。 けれど。 正解が分からない。
ヴァローナ
ローゼ博士
ローゼは必死に宥める。 ヴァローナは、むぅっと頬を膨らませた。 身体に熱が籠もる。 人化がさらに溶け、鳥人としての姿が露わになっていく。 理性よりも本能が前へ出る。 人で言うならば、酒に酔った状態に近かった。
学者
学者
学者たちが次々と疑問を口にする。 全く話が見えない。 けれど、何かがあることだけは分かる。
ローゼ博士
ローゼは察した。 ヴァローナが次に何を言うのか。 咄嗟に手を伸ばす。 口を塞ごうとした。 しかし。
学者
学者
暴力を振るうと錯覚した学者たちが、ローゼの腕を掴んだ。
ヴァローナ
ローゼ博士
予想通り。 最悪の言葉が、全国へ放たれた。 ローゼは膝から崩れ落ちる。 そのまま地面を叩いた。
ヴァローナ
ローゼ博士
勢いよく立ち上がる。 ローゼが叫ぶ。 ヴァローナも負けじと言葉を返す。 ふたりだけが、会話を続けていた。 その場にいる全員は。 突然与えられた情報を処理できず、完全にフリーズしていた。
コメント
1件
あおいです🌷 第34話、めちゃくちゃ熱かったです…!ヴァローナがあそこまで感情を剥き出しにして、しかも「童貞捨てた」発言が全国放送で流れるとは思わなくて、読みながら声出ました(笑) ローゼが顔真っ赤にして崩れ落ちるシーン、気持ちは痛いほど分かるのに笑ってしまいました。真剣な討論の空気を一瞬でぶち壊すふたりの掛け合いが本当に好きです。次が気になりすぎます…!