俺
なんで…
俺
なんで俺の家族が…
俺
殺されなきゃいけなかったんだ
目の前の遺体に突き刺さる 刃物
それを見て 呟いた
俺
俺の家族じゃなくてもいいじゃないか…
俺
なんでよりにもよって俺の…俺の!
もう動かないそれに向かって
何度も何度も何度も繰り返すんだ
なんで殺されなきゃいけなかったのかとばかり
そして思い出す
妻と子供と笑いあって
幸せだった あの頃を…
でも、あの笑顔も あの声も全て
もう戻ってはこない
ただただそれを
呪うばかり
すると遠くの方で
音がした
でもそれは妻の声でも、 子供の声でもない
パトカーのサイレン…
俺
今更来たって…
俺
もう俺の家族はいない
俺
いないんだよ!!
手に力をいれて
もう一度思いっきり
刃を刺した
知りもしないこの場所に
血しぶきが飛び交う
復讐に来たはずなのに
なんでだろうな
スッキリしないんだ
俺
誰か もう一度会わせてくれ…
俺
いつだったかな…俺を驚かせようとして…持ってたお茶こぼしたよな…
あいつは…
あいつは…
俺
あの時は怒ってしまったけど…
本当は愛らしくて…
本当は愛らしくて…
あんな事とっくに許しているから… 早く帰って来いよ…
俺
妻は俺が職を失った時でも優しくて…温かくて…
一緒に頑張ろうって…言ってくれたのに…
一緒に頑張ろうって…言ってくれたのに…
ちゃんと…礼言えたっけな… 本当に感謝してる…
俺を愛してくれた君に…
俺を見捨てなかった君に…
次からは恥ずかしがらずに
ちゃんと伝えるから…! 帰ってきてくれ!
みんな…頼むよ… 頼むから!!
警察が来た
俺は涙を流し続けていた
また会えるのなら
殺して欲しかった
せめてもう一度
『愛している』と伝えたかった
けどもう伝えられない
分かっているんだ
それでも…………
俺は出し尽くしてしまった涙を
無理やり絞り出し
手錠に垂らした
俺
これから俺は
俺
どうなるんだろうな。
ただ伝えたいんだ
もう届かない
この愛情を…
この悲しみを…
もうここにはいない
愛する人へ