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わたしのすきなひと

第1話 - わたしのすきなひと

2019年12月16日

#すき

#恋愛

#高校生

瑠華(Ruka)

ミカ

(わたしはのなまえはミカ)

ミカ

(みんなからはミィとかミーちゃんってよばれてる)

ミカ

(ちいさいときからびょうきで、みんなみたいにうまくはなせない)

ミカ

(ちょっとかほごなやさしいパパとママがいて、わたしはあまやかされて、ずっとおうちでひとりですごす)

キリヤ

ミィ！ただいま！

ミカ

(バタバタとせわしないおとをたててかえってきたのは、キリヤくん)

ミカ

(おうちにこもりっきりのわたしにあいに、がっこうのかえりにうちにきてくれる)

キリヤ

今日はなにしてた？
楽しいことあった？

ミカ

(てくびについているすずを、ちりんといっかいならす)

ミカ

(「うん」ならすずをいっかい、「ちがう」ならすずをにかい、うまくしゃべれないわたしは、キリヤくんとそうやってコミュニケーションをとる)

キリヤ

俺も楽しいことあったよ。
昼休みサッカーしたんだ。
転んでどろまみれだけど！！

ミカ

(ちり、ちりん、ちりん)

キリヤ

あ、ミィ笑ったな？
このやろ～！

ミカ

(キリヤくんは、わたしがこえにしなくても、いいたいことをわかってくれる)

ミカ

(キリヤくんがたのしいと、わたしもたのしい)

ミカ

(やさしいキリヤくんが、ずっとずっとだいすきだ)

ミカ

(ぶかつをやっていないキリヤくんは、はやいと16じくらい、おそいときでも18じにはおうちにかえってくる)

ミカ

(おへやのまどからキリヤくんがこっちにむかってあるいてくるのをみるのもにっかだったりする)

ミカ

(……あ、かえってきた)

ミカ

(……かえってきたけれど、いつもとちがうこうけいにしんぞうのあたりがズキッとした)

ミカ

(キリヤくんのとなりに、おんなのこがいる)

ミカ

(ふわふわなながいかみの、かわいいおんなのこだ)

ミカ

(キリヤくんとてをつないだまま、おうちのまえでなにかしゃべってる)

ミカ

(なんだかみていられなくなって、まどからはなれてしばらくすると、キリヤくんがドアをあけておへやにはいってきた)

キリヤ

ミィ、ただいま！
いい子にしてた？

ミカ

(プイッ)

ミカ

(キリヤくんはわらってはなしかけてくれるけど、なんだかもやもやして、おもわずかおをそむけた)

キリヤ

あれ、ご機嫌ななめ？
なにか嫌なことあった？

ミカ

(……ちりん)

キリヤ

そっか。
なにがあったの？
ごはんが嫌いなものだった？

ミカ

(……ちりんちりん)

キリヤ

違うか。
じゃあ、今日暑すぎるから？

ミカ

(……ちりんちりん)

キリヤ

これも違うの？
えー、なんだろう……

ミカ

(キリヤくんはわたしのことをよくわかってくれてるとおもってたのに、わたしがきげんわるいワケはわからないみたい)

ミカ

(キリヤくんのことはだいすきだけど、こういうドンカンなところはだめだなあっておもうよ)

キリヤ

ねえ、たまには外に出てみない？

ミカ

(おへやにこもりっきりのわたしに、キリヤくんがこういった)

ミカ

(ちりん！ちりん！)

キリヤ

行きたい？
よかった！

ミカ

(うれしくて、ジャンプする)

ミカ

(そとにでたくなかったわけじゃない。ただ、ひとりでそとをあるくのがちょっとこわかっただけ)

ミカ

(キリヤくんがいれば、わたしはなんでもできちゃいそうなきがする)

キリヤ

そんなうれしい？
じゃあさっそくでかけよー！

ミカ

(ちりん！)

ミカ

(せのちいさいわたしにあわせて、かがみながらわらってうながすキリヤくんがかっこよくて、わたしはこのまえのおんなのこのことなんて、すっかりわすれてしまっていた)

ミカ

(ひさしぶりにふみしめたどうろのかんしょくに、ちょっとのこわさと、うれしさがいりまじる

ミカ

(ためしにぴょんぴょんジャンプしてみたりして)

キリヤ

うれしそーだね
外でてみてよかったでしょ？

ミカ

(ちりん！)

ミカ

(キリヤくんといっしょだと、なにをしてもたのしい)

ミカ

(いつもよりニコニコしてるキリヤくんをみて、さらにたのしくなる)

ムウ

ミカだ！
久しぶりに会ったね！
元気にしてた？

ミカ

(キリヤくんとあるいてるとちゅう、とつぜんはなしかけてきたのはかおなじみ？のムウだった)

ミカ

げんきだよ
ムウはげんき？

ムウ

もちろん！
久しぶりに会えてうれしい！
……このひとは？

ミカ

キリヤくんっていうの
えっと、わたしの……

ムウ

ああ、わかった！
飼い主さんね！
こんにちは！

ミカ

(ぺこりとおじぎしたムウにきづいて、キリヤくんがにこにこしながらかるくえしゃくをした)

ミカ

そんないいかたしないで！キリヤくんは、わたしのすきなひとなの

ムウ

……すきなひと、ね

キリヤ

ミィの知り合いなのかな？
仲良しみたいでいいね！

ミカ

(ちりん、とすずをいっかいならす。)

ムウ

……人間をすきになるなんて、ミカはばかだよ。

ムウ

わたしたち、"ねこ"なんだよ

ムウ

……それじゃあ、またね

ミカ

(……そんなこと、わかってる)

ミカ

(キリヤくんがやさしいから、わたしがただ、わすれちゃってただけなんだ)

ミカ

(わたしはねこで、キリヤくんはにんげん)

ミカ

(キリヤくんとしゃべれないのは、わたしがねこだから)

ミカ

(キリヤくんにおにあいなのは、あのひにみた、ふわふわのながいかみのけがにあう、かわいいにんげんのおんなのこなんだ)

ミカ

(にんげんになりたいなあ)

ミカ

(キリヤくんががっこうにいっているあいだ、かんがえているのはこのことばかり)

ミカ

(でも、かんがえてもかんがえても、にんげんになるほうほうはわからない)

ミカ

(ねごがにんげんをすきになっちゃいけないのかな？)

ミカ

(でも、キリヤくんをすきじゃなくなるなんて、かんがえるのもむりだ)

ミカ

(あのおんなのこみたいに、ふわふわのながいかみのけで、ほそくていろじろで、キリヤくんのとなりにたつのがふさわしい、そんなおんなのこになりたい)

ミカ

(わたしのこえは、キリヤくんにはどんなふうにきこえているのかな？)

ミカ

(このすずのおとみたいに、かわいいこえできこえてたら、いいのにな)

ミカ

(キリヤくんとそとにでたあのひから、わたしはひとりでもそとにでれるようになった)

ミカ

(祖とにでていたほうが、まどからみてるよりはやく、かえってくるキリヤくんにはやくあえるから)

ミカ

(キリヤくんのかえりをまどべでまつゆうがたのじかんが、いまはキリヤくんをむかえにいくどうろをあるくじかんにかわった)

ミカ

(おおどおりにでて、どうろがばってんになってるむこうがわから、いつもキリヤくんはあるいてくる)

ミカ

(きっと、そっちががっこうなんだ)

ミカ

(……ほら、キリヤくんがみえてきた！)

ミカ

(おーい！)

ミカ

(なんて、よんでみても、キリヤくんにはきこえないんだろうなあ)

ミカ

(キリヤくん、キリヤくん、ってよんでも、キリヤくんには、わからないんだろうなあ)

キリヤ

ミィ！？

ミカ

(おうだんほどうのむこうがわ、キリヤくんがやっとこっちにきがついた)

ミカ

(あかしんごうがかわるのをまちながら、てをふりえがおでキリヤくんがこっちにむかってさけぶ)

キリヤ

ミィ！
信号変わったら走っていくから待ってろよー！

ミカ

(……うん、うん！)

ミカ

(うれしくて、てくびについているすずをなんどもなんどもならした)

ミカ

(しんごうがかわる。みどりになって、キリヤくんはえがおではしってくる)

ミカ

(なんだかへんだな、ってきづいたのは、あかしんごうにきづかないですごいはやさでこっちにむかってくるくるまがみえたから)

ミカ

(……キリヤくん！)

ミカ

(まってろっていわれたけど、おうだんほどう、こっちに走ってくるキリヤくんにむかってわたしははしった)

ミカ

(つっこんでくるくるまにきづいたキリヤくんは、あおざめたかおでたちどまってしまう)

ミカ

(……おねがい、まにあって！！)

ミカ

(からだのちいさいわたしは、あしもみじかいし、はしるのもおそい)

ミカ

(いまだけ、いまだけでいいから、おねがい、にんげんになりたい)

ミカ

(キリヤくんをたすけたい……！)

キリヤ

……ミィ！？

ドンッ！

ミカ

からだがほうりだされたように、そらたかくまった

ミカ

わたしは、あおいそらをみていた

みか

キリヤ、元気出して

キリヤ

ミィ、オレのせいで死んだんだよ……

キリヤ

そういえば、ミィのなまえ、ほんとはミカっていうんだ。
お前とおなじなんだ

キリヤ

(……車が俺に向かって突っ込んできたあの日、俺を押して助けたのはたしかに女の子だった)

キリヤ

(みかに似たふわふわの長い髪、細くて白い手足、制服を来てて、小柄で、くりくりした目が印象的なかわいい女の子)

キリヤ

(だけど、俺がしりもちをついて目を向けた先、次の瞬間には血まみれになったミィ……ミカがいて。)

キリヤ

(きっとミカは、俺を助けるために人間になったんだ)

キリヤ

(人間になって、助けてくれたんだ……)

キリヤくん、ぶじだったかな

わたしのからだはもううごかないけど、キリヤくんがげんきだったらいいな

うまれかわったら、わたし、こんどはねこじゃなくて

キリヤくんとおなじ、にんげんになりたい

おなじふくをきてがっこうにいって、かわいいおんなのこになって、キリヤくんとこいをするをするんだ

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瑠華(Ruka)

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