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翠嵐
彗嵐
後ろから呼ばれ、蓮がゆっくり振り返る。
病室の入口に立っていたのは、翠嵐だった。
その隣には、無言のまま壁にもたれている彗嵐。
二人とも、いつもの余裕が消えていた。
翠嵐
翠嵐の声は静かだった。
蓮は何も答えない。
ただ一度だけ蒼真を見て、小さく笑った。
蓮
今にも壊れそうな声だった。
そのまま病室を出ていこうとする背中を見た瞬間、胸の奥が強くざわつく。
行くな。
そう言いそうになって、自分で驚いた。
なんで。
知らない相手だろ。
なのに、離れていくのが怖い。
無意識に腕をのばしかけた時だった。
翠嵐
低い声。
振り向くと翠嵐が真っ直ぐこっちを向いていた。
翠嵐
蒼真
その瞬間、病室の空気が凍る。
眞が気まずそうに視線を逸らした。
彗嵐は黙ったまま、ぎり、と拳を握っている。
翠嵐だけが静かだった。
翠嵐
蒼真
知らない。
そう言おうとして。
さっきの
"はーちゃん"
が頭をよぎった。
知らないはずなのに、口が覚えていた名前。
頭の奥がまだ痛む。
蒼真
翠嵐
翠嵐
翠嵐
彗嵐
蓮
翠嵐が、静かに問いかける。
蒼真は少しだけ眉を寄せたあと、 病室にいる面々を見回した。
眞
阿夜
翠嵐
彗嵐
顔を見るだけで思い浮かぶ
どんな性格で、どんな戦い方をするかまで分かる。
蒼真
当たり前みたいに返した蒼真に、 翠嵐は一瞬だけ目を伏せた。
翠嵐
彗嵐
小さな声だった。
その意味が分からず、蒼真は首を傾げる。
けれど次の瞬間。
病室の外から、何かが落ちる音がした。
ガシャンッ――
ガシャンッ――
全員の視線が扉へ向く。
眞
眞が慌てて飛び出していく
廊下には、床へ散らばった缶コーヒーと、 壁に背を預けたまま座り込む蓮がいた。
顔色は真っ白だった。
震える手で口元を押さえながら、 必死に呼吸を整えている。
蒼真
その名前が、また自然に口から零れる。
蓮の肩がびくりと揺れた。
けれど。
蒼真は気づいていなかった。
自分が“忘れている相手”にだけ、無意識で特別な呼び方をしていることに。
蓮
蓮は俯いたまま、苦しそうに息を吐く。
視界が滲む。
頭が真っ白だった。
覚えてない。
俺だけ。
俺との記憶だけ、 全部なくなってる。
それが現実だと理解した瞬間、 息の仕方まで分からなくなった。
眞
眞はしゃがみ込む。
けれど蓮は返事をしない。
眞
ただ震える手で、自分の口元を押さえていた。
吐きそうだ。
泣きそうだ。
壊れそうだ。
蒼真
また、その呼び方。
優しい声。
ずっと好きだった声。
なのに。
記憶のない瞳で見つめられるたび、 胸がぐちゃぐちゃになる。
蓮
掠れた声が廊下に落ちた。
蒼真が目を見開く。
蓮は顔を上げないまま、続けた。
蓮
震えていた。
怒ってるわけじゃない。
責めたいわけでもない。
ただ、苦しかった。
蒼真は何も言えず立ち尽くす。
読んでは行けない気がした。
けれど、その名前を口にしない方がもっと苦しい。
どうしてだ。
なんでこんなに胸が痛む。
蒼真
無意識に謝っていた。
その瞬間、蓮の呼吸が止まる。
違う。
謝って欲しいわけじゃない。
忘れないで欲しかっただけ。
蓮
限界だった。
蓮は立ち上がると、 そのまま逃げるように廊下を駆け出した。
眞
眞の声も聞かず、ただ走る。
後ろを振り返れなかった。
もし振り返ったら。
あの
“知らない人を見る目”を
もう一度 見てしまう気がしたから。
咲詠
翠嵐
翠嵐
翠嵐
翠嵐
翠嵐
彗嵐
翠嵐
翠嵐
翠嵐
咲詠
翠嵐
咲詠
咲詠
翠嵐
咲詠
咲詠
咲詠
咲詠
咲詠
蒼真
蒼真
咲詠
蓮
蒼真
蓮
蓮
眞
眞
阿夜
眞
翠嵐
翠嵐
彗嵐
翠嵐
彗嵐
咲詠
咲詠
咲詠
#レトキヨ
魑魅魍魎
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コメント
3件
うわ……第3話、めちゃくちゃ胸に来ました。蓮が「覚えてないなら、その呼び方やめて」って泣きそうな声で言うとこ、ほんと切ない。蒼真が“はーちゃん”って無意識に呼んじゃうのに、記憶だけすっぽり抜けてるっていう構造がもう……設定上手いなあ。翠嵐の「俺らのことは分かるの?」って問いも全部伏線にしか見えない。彗嵐が拳握りしめて黙ってる描写、ああいう無言の表現がすごく好きです。続きすごく気になります!