私は、彼の待つ公園へと向かった
恵那
お待たせ
爽
え…
爽
恵那
恵那
名前、呼んでくれたね
爽
…ああ
爽
聞いてくれ
恵那
聞くよ
恵那
そのつもりで来たんだもん
爽
爽
俺、恵那のこと好きだ
偽りのない真っ直ぐな目を向けられる
志穂さんの事を断ち切って私の元へ来てくれた
でもね…
恵那
恵那
私さ、爽さん爽さんって追いかけてたでしょ
爽
うるさいくらいな
恵那
反対に、恵那恵那って追いかけて
恵那
辛い時、側にいてくれた人が居るの
爽
将人、か?
恵那
うん…
恵那
私ね、まさやんが好き
彼が女性と歩いているのを見た時
嫉妬して気がついたの
私は、彼のことが好きだったんだって
恵那
8年間、爽さんの事を
恵那
好きでいられて良かった
爽
っ…
恵那
でも、もう終わりにするね
爽さんと目が合う
前は…ドキドキしたその瞳
今は違う人にドキドキする
爽
…行けよ
爽
アイツ忘れ物取りに会社行ってるから
恵那
ううん行かない
恵那
まさやん、彼女いるし
想いに気付いたときには遅かった
彼にはもう彼女がいた
爽
爽
は?
恵那
昨日、女の人と歩いてるの…見ちゃった
爽
昨日…
爽
お前…それ
爽
本気で言ってるのか?
恵那
う、うん…
爽
それは姉だよ
恵那
え?
爽
アイツは…
爽
お前に夢中だぞ
恵那
…っ!
爽
これ以上、振った男の側にいようとするな
爽
襲うぞ
恵那
え!?
爽
…行け
爽
頑張って来い
恵那
っ!
恵那
ありがとう!
走って会社の前に立つ
するとタイミング良く、彼が現れた
恵那
まさやん
将人
将人
おま…!センパイは?
目を見開いてこっちを見てる
今はこの瞳にドキドキするんだ
恵那
まさやん…まさやん!
将人
…どうしたんだよ?
恵那
まさやんが…好き
将人
っ…
これでもかというくらい驚いている
けれどもすぐに
将人
遅えよ
と笑った
余裕そうだが少し顔が赤い
恵那
まさやん…
涙が止まらない
まさやんへの罪悪感や色々な想いがこみ上げる
将人
やっと俺を想って泣いてくれた
将人
将人
彼女、だからこれくらい許せよ
とポツリと呟いた後、腰に手が回ってきた
ぎこちない動き
けれども安心感に包み込まれる
恵那
まさやん、彼女いた事ないでしょ
将人
アホ
将人
遊び相手は…いた
恵那
…サイテー
将人
…お前が初彼女だよ
将人
最初で最後のな
秘書
社長
秘書
会社の前で川平が女性と…
窓にチラリと視線をやると
見覚えのある姿が2つあった
秘書
秘書
迷惑ですし引き離して来ますね
社長
待て
秘書
え?
社長
5分だけ目を瞑ってやれ
秘書
…社長、変わりましたね…
無意識に出た言葉なのだろう
秘書は口を覆っていた
秘書
すみませ…
社長
女だ
社長
じゃじゃ馬に変えられたんだよ
視線を窓にやるともうそこに姿は無かった
あの二人がくっついたということは
我が息子は失恋したのだろう
俺は手にスマホを取り、電話をかけた
社長
社長
もしもし飲みに行くぞ
「失恋祝」と軽口を言って電話を切った
初の息子との酒だ
今までならありえなかったな
何時もより早めの退社をし
居酒屋へと歩いた
恵那
まさやん、まさやん
将人
なんだよ
恵那
大好き
将人
…っ
将人
もう絶対に離してやんねえ
将人
後悔すんなよ
恵那
後悔なんかしないよ!
出会ったあの季節
また、夏がやってくる