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ね、協力してくれる?
高知
鹿児島
出発前
後ろから急に話しかけてきた、“高知”
警戒的な目で見ていた
鹿児島
正直に答えた
高知
警戒的な目は変わらない
鹿児島
鹿児島
高知
誰か聞かれた
……
…………
答えられない
答えたらいけない気がする
少しの沈黙
隙間風が肩を通る
少し痛い
鹿児島
少し、目を逸らした
高知
無理矢理顔を覗き込まれる
強い目が、俺を刺す
鹿児島
なにも、言えなかった
何故言えなかったのかはわからない
俺はきっとどうかしてる
こいつもどうかしてる
きっと、あいつもどうかしてるんだ
高知
高知
心配そうな顔だ
深く刺した目が
少し、抜かれた
穴は深かった
まだ答えられなかった
鹿児島
鹿児島
………
そういや
こいつの言うことを無視したのは
いつぶりだっけ
全部、僕のせいだけど
これが正解だって
これが正しいんだって
そう思わせてきたのは
君"たち"だよね
因果応報
…、なんだろうな
奈良
奈良
なんだか、別の空気を吸っているような感覚がした
さて、東京のところに行かないと
奈良
奈良
奈良
そういえば、場所なんて伝えられていなかった
自力で探せって言うんか……
奈良
奈良
もう既に半分諦めた
こんな幾つもある建物からたった一人の人物を探せなど
少なくとも一日では無理な話しだ
足元に転がる石を蹴る
からころと音を鳴らしながら走った小石は
近くの排水口に吸い込まれていった
コンクリートまみれの床でも石くらいはある
土は見当たらない
近くに人工的に植えられた木の下にはある
この木もそのうち消されてしまうのだろうか
なんて、当たり前のようなことばかりが頭に浮かぶ
なんとも言えない気持ちだ
もう、帰ろうかなと思った
よく考えれば、友人から言われたよくわからないお願いを
なにをすればいいのかすらわからないお願いを
なぜ飲み込んだのだろう……
帰ろう、なにもやることはない
……いや、折角来たのなら少し観光でもしてみようか
財布を見ながらつくづく思う
諦めのこもったため息をし、辺りを見回した
「で、東京はどこにいるの?」
「こっから少し歩いた先の家だ」
……あれ、東京の話…?
近くを歩く二人組が、東京の話題を出していた
いや、本当に東京だった…?
再確認しようとしたところ
その二人組はもう既に歩き始めていた
奈良
話しかける勇気はなかった
かと言ってあの二人を逃してしまえば
うちが東京のところへ辿り着けるのには相当な時間が必要だろう
判断する時間もなく、うちは勢いで二人組の後ろを歩いた
つまり、尾行だ
なんて汚いやり方
でも、それ以外なにも思いつかなかった
奈良
狭い、細道ばかりを通る
東京といったら都会のイメージしかなかったので、 なんだか不自然に思った
周りに人はいない
バレないよう、なるべく呼吸を止めて歩いていたせいだろう
息切れが近くなっていた
前を歩く二人組はどんどん遠のいてゆく
少しペースを上げた
何故だろうか
東京に来たのは初めてだ
けど
目の前に見えたのは、どこか見覚えのある
懐かしみを感じるような場所だった
確かに、古いけど、大きな家だった
つい見上げてしまうような
あれ、
今、目が合って__
奈良
あ、れ…どうしよう……
バレてた
バレてた……どうしよう……
奈良
頭のなかで、必死に言い訳を考える
なんとか言葉を繋ぎ合わせても、上手く言葉にできない
何度言葉を考えても
「どうしよう」でいっぱいだ
手を伸ばされる
どうしよう、掴まれる?殴られる?
嫌なことばかりが頭のなかを埋め尽くす
思い切り目を瞑った
どうしよう、少しも動けなかった
どうしよう
どうしよう
どうしよう……
…………
ガシッ
うっすらと、目を開く
もう一人が、伸ばされた手を掴んでいた
お互い顔を見るなり、手を下ろした
正直怖かったが、これは勝手に尾行したうちが悪い
奈良
奈良
ガチャッ
扉が開いた
前にはぽつんと立っている者
何故だろうか、見た瞬間に、それがなんなのかがよくわかった
東京
探していた人が、目の前に現れた
鹿児島
高知
変わらぬ表情のまま、名乗っていた
鹿児島、高知
頭のメモにそう書き入れた
東京
奈良
奈良
こっちをちらりと見てきた
名乗れというのか
そうか……これでも会いに来た身だ
奈良
東京
東京
少し、表情が固くなる
なにかよくないことでもあるのだろうか
東京
鹿児島や高知に続き
うちも中に足を運んだ
当然、中は広かった
一つの小さな部屋に案内され、なるべく端のほうに座る
準備がある、と言って、少しの間東京は席を外した
もう一つの角に、鹿児島と高知が座っていた
高知は隠れるように鹿児島の後ろにいた
なんだかそわそわしていて
微かに震えていた
緊張してるのかな
それとも、怖いのかな
不安そうな顔にも見えて
少し……心配になって……
いいのか…?ついてきてもらって
大丈夫だよ、
怖がってるくせに
高知
高知
鹿児島
鹿児島
必死に腕を掴んで訴える高知
わかってる、わかってるよ……
わかってるけど……
高知
鹿児島
鹿児島
高知
脅されてるわけでも、圧をかけられているわけでもなかった
けど、なんだか怖くて
あの人には逆らえなかった
鹿児島
鹿児島
鹿児島
鹿児島
高知
お願いだ
やめてくれよ
そんな顔しないでくれよ……
最近は本当にお前が心配なんだ
ずっと俺の家に留まっていて
あんなに仲良しだった美々津とも会っていない
でも、さ
あの人だって辛いんだ
やらないと結局終わってしまう
だからやらないといけない
でも一人じゃできない
いいんだ
人間らしくて
俺、あの人のあんな顔見ちゃったんだ
そうしたらさ、なんだか引くにも引けなくて
その顔が、演技だとしても
俺はそれでも助けたい
高知の頬に手をかけ、そっと撫でた
そのまま頭に手をやって、涙目になる高知の目を拭う
余計に泣きそうになった高知を、きつく、強く抱きしめた
それ以外に、俺ができることはない
ごめん、ごめんな
コメント
2件
なんか心がキュッってなった…
逆らえない…何も出来ないってぐちゃぐちゃな気持ちになるんよなぁ…