よみきり。

真冬の冷たい風が自分の頬に打ちつけた

瞳から零れた涙が乾いていく

彼は私が苦い珈琲が苦手ってことを知ってるから

わざと甘めにしてくれた珈琲を冷えきった大きな手で差し出した

ズズ、っと珈琲を一口啜る。

温かい珈琲を手の中でぎゅっと握る

自分の涙がほろりと珈琲を握る手に零れ落ちた

…まだ泣いてた。

心が崩れ落ちた私に彼が静かに問いかけた

彼が私の心を見透かすように言った

彼に隠し事をしてもどうせバレてしまうと思った

彼は最近忙しそうだし

それにこれは自分自身の問題

だから頼る訳にもいかない…

珈琲のフタに零れた涙は乾いていた

これは、真冬限定の

彼からの珈琲と

恋の オクリモノ だ。