終わらすことは絶対に許されやしないから

気持ち悪い感覚を覚えながらうっすら目を開ける。

体が重いし腹が痛む。

起き上がると赤い長い髪が見えた。

こちらの髪は黒いはずなんだけど…

ここに来るまでのことを思い出す。

神にセルミの世界に転生させてもらって、神がボタンを押したらここに…

ヒュン、と音がなったと同時に聞かれる

漫画で見たことあるような登場の仕方だな。

神は小悪魔のような微笑みを浮かべて、シュン、という音と共に消え去った。

驚愕して、思わず素っ頓狂な声をあげた

神のいた場所を睨み、大きなため息をつく。

どうしてここにいるのか？

それを考えた途端、ゴーン、と鐘が鳴ったような音が脳に響く。

記憶をつたるとこう履歴が残っていた。

とても嫌なはず。なのに不思議と笑みが浮かぶ。

見た感想がすぐに飛び出す。

さぁ、状況把握は終わった。

いや、バグった要素がまだわかっていないか。

私たちというイレギュラーな存在か？

でも、漫画の転生系の物語。それらもバグとされていないからこの可能性は著しく低い。

だとすると…

セルミ学園には三つ+αのモードがある

一つ目が逆ハーレムモード。

これはそのまま。逆ハーレムモードは一番意味がわからないが人気が高い。

人気が高いならこのモードは違うか…？

二つ目がハーレムモード。先程は説明し忘れていたが、ヒロイン(逆ハーレムモード)には容姿が選べる。

その容姿が名前をつけられて、攻略対象になると言った感じである。これは2番目になぜか人気がある。

この勢いだと3番目になるか…？

3番目はアクションモード。 逆ハーレムモード、ハーレムモードのストーリーを全て解放したのちに、遊べるモードだ。ちなみに3D(今までは2D)

ちなみにこのモードのために1日仕事有給もらった。

これは反対に絶対付き合わせないモードとなる。ヒロインを付き合わせないとハッピーエンドになる

そして最後に+α…忘れてないだろうな？

こちらはエイプリルフール限定のモード。普通に楽しかったキューピッドモード。

生徒の数で対戦するモードである。

モブを付き合わせたりしてもよし、カップルを破裂させてもよし。

破裂させてもいいが、必ず別れる噂など流されて、転校生などが一向にやってこなくなったり、転校していく子も増える。

というモードである。(ちなみに3D)

このモードの中のどれか…以外だな。これ確実に

だってもう実装されているのだから

なんでこちらは自分を説得してるんだろう

記憶を遡ると、セルミ高等学校という高校に入学する日らしい。

そのことを口に出した後、学校の裏口から出て行く。

先ほどまで気づかなかったが、空は澄ました橙色が広がっていた

なら起きてる人もいそうだなぁ。

いるとバレる前に家に帰った方が、厄介ごとになる可能性はぐーんと減るだろう

裏口から出ると、住宅街が広がっていた。

しかし、起きている人が少ないのか、賑わっていそうなところも静まり返っている。

家はどこだ？

記憶にあった自宅を探す

あっ！あった！

視線の先には白色の壁に、大きな庭と大きな緑色の屋根がついた、二階建ての家があった

ほっ、と安心感を覚えながら小声で呟く。

呟くくらいの大きさで言ったつもりが、静かすぎて、少し大きく聞こえた。

家にはだれもいないみたいだね。 一人暮らしみたいだ

足音を出来るだけ静かにして、玄関へと近づいた。

玄関には鍵がかかっていたようだったため、ポケットにはいっていた鍵を使って家を開けた。

誰も居ない空間へと1人話しかける。

打撲や捻挫をしていたため、簡易的な治療をしようと治療キットを探す。

探すまでもなかった。ここに気づかないような奴らが探すのが下手なんだろう。目星10くらいじゃないか？

濡れたタオルって言おうとしたんだけどなぁ

そこそこ怪我しない健康優良児だったからこそ慣れないかな。

絆創膏も手に取ろうとしたが、

あっこれ絆創膏も包帯と同じく目立つじゃん

と思い、絆創膏へと伸ばす手を引っ込めた。

あとすることは…

そんなことを考えていると唐突に、「グゥー」という音が鳴った

昨日から何にも食ってないみたいだ。

感覚が麻痺しているのか、あまり気づかなかった。

冷蔵庫で軽いものを食べようと思い、冷蔵庫を開けると、メロンパンや麦茶などのコンビニにありそうなものばかり並んでいた

いや、公式設定では料理上手、とあったはずだが…

引っ越してきたのかもしれない。運び終わっていない荷物などを片付けていて、料理する暇などなかったのだろうか？

冷蔵庫のメロンパンを掴み、自分の前まで持ってくる。

冷蔵庫を閉めて、すこし冷たいメロンパンを持ちながらリビングのソファに寄りかかる

疲れが取れるわ…心地いい

袋を親指と人差し指で持ち、力を入れて開ける

これたまに開けられない時あるんだよなぁ

袋を開いてるところから下げ、メロンパンが出てくるようにする

手が汚れないからこれいいんだよな

メロンパンに齧り付く

ちょっと冷たいなぁ

一口目を食べ終わり、また齧り付く

1人だとこれ寂しいな

あとなんか甘いものなのに普通くらいに感じるんだけど

私甘党なのに

1人窓の外を見ながら静かに食べる

カット

気分が乗り、軽くスキップしながら浴室へと向かう

普段ガヤガヤと騒がしそうに音を立てている街も、今はみんなとおやすみしているようだ。

呟いた言葉は静かな空間に溶け込んで消えていく。

誰にも邪魔はできない私だけの空間

口角が上がるのを感じる。すごく高揚感に、満ち溢れているのか、心なしか心拍数も上昇している気がしなくもない。

あぁ、胸の高鳴りが抑えきれない！

喉が渇いたと思っていたため、タイミングがいい

早速自動販売機へと足を進めた。目の前になるところで停止して、並べられている飲み物のサンプルらしき物をまじまじと見る

ジュース…は逆に喉が渇いてくると聞いた覚えがある。では無難に水がいいかな

110円を自販機に入れる。100円のものだとしても10円が帰ってくるため大丈夫だろう

天然水、と書かれたサンプルの下にある、冷たい、110円とあるボタンを押した

すると、ゴロゴロと音を立てて飲み物が落ちてくる

中心近くの取り出し口に落ちてきた水を手に取った

めっちゃ冷たかったんだけど！？

冷たすぎることに驚きながらも、ペットボトルのキャップを反時計回りで回す。

パチッという音を立てて開けて、水をぐいっと口に飲み込む。

一気に飲み過ぎた…いたい…

気管に水が入ったのか、多く咳をする

咳をわざとすると、違和感がなくなっていくような感覚がする

周りをきょろきょろと見渡すと、公園と一緒に時計があり、今は6時に近いところに長針を向けている

風が勢いよく吹くように、ブン、と音が鳴る

なおは手を合わせ、膝を地面に突きながら十秒間待つ

膝痛くないのかなぁ

などと思っていたら声をかけられた

指を鳴らすとファイルのようなものが神の前に出てきた。

神　が話している言葉が　聞き取れなかったようだ！