隆
…そろそろ母の日だね、母さん
座ったまま傍の母に話しかける。
隆
今までずっと迷惑かけ通しだったよね…
隆
親不孝者の息子でごめんね
母は目を閉じたまま俺の話に耳を傾ける。
隆
…でも
隆
これからはこうやって一緒にいれるから
隆
これが俺なりの親孝行であり、俺の願いでもある。
隆
ああ、早くこうしておけばよかった…
隆
…いやあ、でも世間って俺に冷たいね
隆
学校の連中も会社の連中も俺を貶す事でストレスを解消する
隆
家でも出来損ないの俺を父さんは見向きもしない
隆
俺にとって唯一安心できるところは母さんのところだったんだ
隆
ずっと母さんと一緒にいたい
隆
できることなら赤ん坊の頃に…
隆
…いや、胎児の頃に戻りたかった
隆
そこなら俺を傷つけるだけの世間から隔離されて、ずっと母さんに守ってもらえるんだからな
椅子から立ち上がり、母さんと向き合う。
隆
…部屋に引きこもったままの俺に我慢できなくなったのか
隆
突然怒りながら部屋に入ってきた母さんを殺した時はどうなるかと思ったけれど
隆
…こうやって母さんのお腹を開いて内臓を取り出し
隆
剥製にして椅子に取り付けたら
ギィ、とお手製の椅子に改めて座る。
隆
…この間は母さんのお腹の中に戻れる
隆
…
隆
ああ、こうして座って目をつぶっているだけで
隆
未だ俺の頭の中でバカ笑いするクラスメートも
隆
ギャーギャー文句垂れる職場の連中の事も
隆
このゴミ溜めの部屋の悪臭すら全て忘れられる気がする
隆
母さんを見つけて大騒ぎした父さんはもう殺した
隆
安心して、母さんとは別だよ
隆
バラバラにして生ゴミと一緒に捨ててやった
隆
これからはこの家で
隆
俺と母さんと
隆
ずっと一緒に暮らそうね…