冬のはなし

＿開演１時間前_ 梶さんが心配そうに話した.

結局歌詞が出来上がるのに、時間がかかってしまいほとんど完璧な演奏は合わせてない.

春樹さんが微笑む.

　"アカペラで"

梶さんはきっと不安なんだろう. 俺がちゃんと歌うことも初めてだし、 アカペラが初めてなんて難易度が高すぎる.

＿怖いよ._ 人前で俺の声だけが響く. めっちゃくちゃ怖い.

＿だけど,

＿何処かで胸が熱くなっている自分がいる.

突然控え室にsyhのメンバーが入ってきた.

　真冬がその場にいづらそうに、扉の近くで止まっている.

＿表面上では_ 会話している.

真冬は一言も発さなかった.

＿伝えたい. 必ずあんたの気持ちを伝えるよ.

舞台裏で人の多さを確認する.

syhのラバーバンドやTシャツが多く見える.

＿完全アウェイ.少し胃がキリキリする.

春樹さんが手招きをする.

"今日は俺が歌うんじゃないんです."

＿＿＿＿＿＿＿

＿ですが、今回はお互いのバンド向かい合っての開催です！_

わっと歓声があがった.

柊が得意のトークで場を盛り上げる. 俺がいないみたいに. 自分たちの世界を作っていく.

"誰かのバンドに大切な人がいる" それも俺じゃない誰か.

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