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事件が起こった。
きっと、私がシュウ君の家に居候することになってからの 最大の事件だろう。
あの時は、本気で驚いたし恐怖した。
あの日は雨が降っていた。
主(ヤナ)
主(ヤナ)
雨が制服を少し濡らしていて、 気持ちが悪くて早く着替えたかった。
電気が点いていなかったから、 誰もいないだろうと思って私はリビングに行った。
ツン、と嫌な臭いがした。
鉄っぽい、変な臭い。
主(ヤナ)
嫌な予感がした。
リビングに行くと、私は目を見開いた。
床が、赤くなっていたのだ。
誰かの、血液で。
幸い、血の量はそんなに大量ではない。
激しく動く心臓を落ち着かせながら、 私は恐る恐る血の跡を辿った。
「ルイ君!!」
血の先は洗面所。
そこには、 ぐったりとした様子で壁に寄りかかって座り込む ルイ君がいた。
こめかみから血を流していて、そこが一番重症のようだった。
他にも、顔には所々に殴られた痣や 首に変な跡がついていた。
主(ヤナ)
ルイ
ルイ君は何も答えなかった。
小さな呼吸音から、生きていることが分かる。
主(ヤナ)
私はダッシュで救急箱を取りに戻り、 ルイ君の止血に取り掛かった。
怪我は命に関わるものではなく、 救急車は必要なかった。
止血の間、ルイ君に 「誰にやられたのか」や「何があったのか」を 尋ねたがルイ君は何も答えなかった。
私の中で、最悪な予想が思いついてしまった。
主(ヤナ)
これを読んでいる人は、もう分かったかも知れない。
主(ヤナ)
主(ヤナ)
主(ヤナ)
静かな沈黙が流れた。
私は知っている。
ルイ君が噓を吐いたり、誤魔化したりするときは、
いつも黙って下を向くことを。
そのとき。
シュウ
驚いて振り向くと、いつの間にか背後にシュウ君がいた。
主(ヤナ)
シュウ
シュウ君はさも当たり前のことかのように 頷いた。
主(ヤナ)
主(ヤナ)
主(ヤナ)
ふと、顔を上げた。
私はゾッとした。
シュウ君は、ルイ君をじっと見つめていた。
何を考えているのか分からない、黒くて暗い目だった。
主(ヤナ)
私が声を掛けると、 パッと視線を私に向けて笑った。
シュウ
シュウ
シュウ
ルイ君の方を見れば、 彼は縮こまるようにして膝を抱えていた。
主(ヤナ)
確信した。
こいつらは、本当に狂っている。
どう考えてもおかしいルイ君の傷を、 喧嘩でできた傷だと言い張るシュウ君も。
それを「違う」と言い返さないルイ君も。
狂っている。
主(ヤナ)
その時、私は見て見ぬふりをした。
彼らのどう考えてもおかしい関係に、 私は恐怖したのだ。
その日は、私の意見でシュウ君とルイ君は 別々で寝ることにした。
そして、数日後。
ルイ
主(ヤナ)
ルイ
主(ヤナ)
私はあの時、どんな表情をしていたのだろう?
主(ヤナ)
私は頷いてルイ君を見た。
主(ヤナ)
ルイ
主(ヤナ)
ルイ
ルイ君の顔は、 いつもと変わらないルイ君のままだった。
主(ヤナ)
あの時、私は何といえば良かった?