テラーノベル
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#鏡音リン・レン
宵月獅翠
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初音ミク
新居に向かう電車のシートに揺られながら、ミクが私の肩に頭を預けて聞いてくる。
その純粋な瞳には、一筋の曇りもない。
亞北ネル
私はミクの緑色のツインテールを優しく撫でながら、世界で一番甘い声を向けた。
初音ミク
嬉しそうに目を細め、私の腕をぎゅっと抱きしめる。
本当に、反吐が出るほどおめでたい頭。
窓の外に流れる街並みを眺めながら、私は唇の端が吊り上がるのを必死に堪えていた。
喜ぶわけがない。
あのバウムクーヘンは、私からあの赤頭――テトへの、最高に洗練された『処刑宣告』なのだから。
ミクは何も分かっていない。
自分たちが何年もかけて重ねてきた『親友の年輪』が、どれほど強固で、どれほど美しかったかも。
そしてそれが、私という毒によって、どれほど無惨に腐り落ちたかも。
「あーあ、傑作だったな」心の中で、私は大爆笑していた。
教室でバウムクーヘンを手渡された時の、テトのあの顔。
絶望に引きつり、今にも泣き出しそうなのに、ミクの前だからと必死に作ったあの不格好な「嘘の笑顔」。
そしてミクが見ていない一瞬、私が耳元で囁いてあげた時の、呼吸の止まる音。
あの一瞬のテトの表情は、どんな高級な映画よりも、どんな美味な贅沢よりも、私を満たしてくれた。
ミクを私だけのものにしたいわけじゃない。
そんな独占欲、安っぽくてつまらない。
私が欲しかったのは、誰かが人生をかけて丁寧に、分厚く積み上げてきた『完璧な絆』を、横から気まぐれに、ナイフで綺麗に切り刻んでみせるという極上の娯楽(エンターテインメント)だ。
ミクが私に溺れれば溺れるほど、テトの築いた時間は無価値なゴミへと変わっていく。
私たちがこれから重ねる新しい年輪は、テトの流した涙という肥料で、さぞかし歪で美しく育つことだろう。
初音ミク
ミクが不思議そうに私の顔を覗き込んできた。
亞北ネル
亞北ネル
私はミクの頬にそっとキスをした。
ミクは真っ赤になって照れている。
可愛い私の操り人形。
これから一生、私の手のひらの上で、あの赤頭を絶望させ続けるための最高の道具(ヒロイン)。
亞北ネル
カーテンの閉まったエンドロールのその先で、悪魔は一人、次の退屈しのぎのシナリオを思い描きながら、冷酷に、甘く微笑んでいた。
アイコトマト
アイコトマト
亞北ネル
重音テト
亞北ネル
初音ミク
亞北ネル
初音ミク
亞北ネル
重音テト
亞北ネル
アイコトマト
アイコトマト
ばいばい〜
コメント
1件
ネルの優しい外側と、心の中で渦巻く悪意のギャップが本当にゾクゾクした…!「年輪」っていう言葉を毒に変える描写、美しくて怖かったよ。最後のメタパートでネルが照れるのも可愛くて、ダークな話なのにほっこりもした。aiko.さんのこういうキャラの二面性の描き方、毎回すごく好きだなあ…🌙